空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

ネット上でニュース記事がすぐ消えてしまうことの真の弊害

前回、ネットにあるニュースサイトの記事でも、すぐに消えてしまうものと消えにくいものがあると書きました。

nakamorikzs.net

一週間以内にニュース記事が消えてしまうサイトもあれば、かなり長い間残っているサイトもあります。しかし、多くのサイトでは一定期間が経つとその記事が消えてしまいます。これは特に時事の一般ニュース、すなわち事件や政治、経済系のものがかなり多いように思われます(ただIT系は専門のサイトの記事保存性がなかなか高いので)。

しかし、これらの記事の消失することは、非常に大きな問題を生む危険性があるとも思っています。それはユーザーが記事を見られなくなるという不利益だけではなく、その記事の発信元、ひいては読者でも配信者でもないネット全体に与える影響として。

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元記事が消えると代わりに検索上位に来るサイト 

ご存じの方も多いと思いますが、私はここと平行していくつかのブログをやっており、その中に「Timesteps」というものがあります。ちなみに今年で10周年だった。

timesteps.net

ここでは「インターネットの歴史」や「ニュースのそれから」をテーマにして、それで記事を書くことが多いです。そのために、ネットでその事件の当時のこと、そして今について調べるために検索することが多いのですが、ここで問題が生じます。それはその当時の記事が消滅していて、記事が参照出来ないこと。

過去のその出来事を調べるためには、色々な方法がありますが、手始めにその出来事や関連する単語を検索してみます。そこでもし記事が残っていればそのニュースが表示されますが、時間が経過して消えていた場合はどうなるか。
現在の検索において、自分の経験上では、もしそれがWikipediaに表示されるほど大きなニュースの場合、だいたいそれが上位に表示されます。
そしてその次に来るのは何か、というと、その元記事を引用、もしくは転載したサイトが上位に来ることが非常に多いのです(引用と転載は別物なのでこう表記していますが、事実上はほぼ転載丸写しのものが多いです)。
具体的に言うと、その記事を引用したスレがまとめられた2ch(5ch)系まとめサイトや、キュレーションサイト、バイラルサイトなど。

 

元記事消失により転載記事が元記事と同一と見做される危険性

それらの引用、もしくはほとんど転載と言えるほどの全文を載せたサイトが上位に表示されるのは元サイトの記事がなくなり、その転載が残っているからでしょう。ここでも転載が上位表示してアクセスが集まるのははたしていいのかという問題がありますが、それ以上に問題なのは、その内容がオリジナルと同じとは限らないこと。

そもそも2chでもそのスレの>>1自体から内容がオリジナルと部分的に変えている場合がかなりあります。そして、それをまとめたものでも、事実上はその内容を改変しているものがけっこう見られます。とりわけSEO的に悪条件になりやすい単語は伏せ字となっていたりするなど。悪質な場合は、意図的にその筆者の都合が良いような表現に帰られているようなケースもあります。
実際、昨年話題になったように、これらのサイトは注目を集めるために、事実と異なることでも大げさに書くケースがかなり多いので。

それらはもちろんオリジナルの文章とは言えません。しかし、ネット上から元記事が消えている限り、その引用、転載したものが目に入る機会が多いわけで、そちらが改変されていようとわからず、結果としてその引用・転載先に書いてあったことがオリジナル(もしくはその一部)と認識されてしまう危険性があるのです。

さらに、その記事をもとにして、関係ないことを付け足して、それがデマとなるケースも存在します。去年はデマといえば東名高速事故で、加害者の父親とデマを流されたことが話題になりました。

www.bengo4.com

しかしこれももし参照元がなかったなら、元記事にそう書いてあったと誤解される可能性でさえあります。

 

内容の印象を操作出来てしまう危険性

さらに、2chまとめサイト型の場合さらに問題があります。それは、その記事の反応の形で、記事の印象が操作出来てしまうということ。
2ch系のまとめサイトは、>>1以下のレスを全部引っ張ってくるわけではなく、読みやすさのためとして途中のスレが抽出されていますが、それを意図的に読ませるために選別してしまうことが出来るのです。さらにこちらも悪質なものは、レス自体の文章を変更しているものがあります。

参考

d.hatena.ne.jp

しかしこちらも元記事が存在しないため、比較も出来ません。故に、やろうと思えば元記事とはかけ離れた印象を与える記事が、さも元記事に書いてあったような印象を与えることが出来てしまうのです。

ニュースの情報源が報道機関に依存されているが故の弊害

このように、元記事が消失してしまうと読み手が過去記事を参照出来なくなるというだけではなく、その記事を引用・転載したサイトが代わりに出てきてしまうことで、ことによっては誤読されてしまう可能性があるのです。
一応、ウェブ魚拓などWebアーカイブというサービスはありますが、必ずしも魚拓が残されているわけでもなく、且つ調べるのにはその元記事のURLも必要になることが多いので、そこまで手間をかけて調べる人のほうが少ないのが現実でしょう。

このことは、その元記事を作成した報道機関にとっても大きなマイナスでしょう。しかし、現在の検索ではそのようなものが上位に出てきてしまうのです。

またこれは、ニュースの一次ソースが報道機関からのニュースが大半ということも大きいでしょう。それでも政治、経済系のことなら読みにくさや速度はあるにせよ、また元ソースが公的発表なり企業発表なるで存在するケースもまだあります。しかしながら事件、とりわけ刑事事件においてはその多くが報道機関を通しての発表となっているわけで、そのニュースが消えてしまうと参照するところがほとんどなくなってしまうというのが現状です(一部警察などの公式発表や、裁判録がありますが、それも全体の情報量のごく一部)。そこにも問題があるでしょう。

 

過去記事を参照出来るシステムが欲しい、というか必須

ですので、報道機関はその自分が出した記事を後で誤解されるのを防ぐという意味でも、出来るだけ元記事は残しておくのが望ましいと思います。しかしサーバや営利上の都合などで出来ない場合もあるでしょう。しかしその場合もせめてどのような記事を書いたのかや、概要を参照出来るインデックスくらいはつけておく必要があると思います。そうしないと本当なのかデマなのかの検証もしにくいので(本気になれば図書館へ縮刷版を見にゆくことは出来るけど、かなりめんどいし、さらにネット記事と同一とは限らない)。

個人的には、月額数百円とかで過去記事をまとめてあるアーカイブとかあれば、是非使いたいと思います(法人向けで高額なサービスは日経あたりであった気がするけど、そこまではとて手が届かない)。

 

あと、いくら元記事がないからといって、そのような転載記事が検索上位に来てしまうという検索エンジンの問題も大きいでしょう。これは近年言われている偽ニュースサイトなどのデマサイトや信憑性の低いサイトと同じく、検索においてその順位は考慮されないといけないでしょう。
そしてもし、検索サイトでそういった問題の是正がされないのであれば、信用性を重視した新たな検索システムの需要が高まってくるのかもしれません。