空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

YouTubeはこのままだと粗製濫造で衰退しかねない

今やネットを使う人で、知らない人はいないと言ってもいいくらいの動画サイト、YouTube。いまや世界的に動画サイトのトップとして、その存在は欠かせないものとなっています。
しかし、現状のYouTubeを見ていると、少なくとも日本においては、もしこのままであった場合、今が最盛期で徐々に衰退してゆくのではないかと推測しています。

その要因は、「粗製濫造」。

f:id:nakakzs:20180114234852j:plain

 

 

多くの投稿を集めることに成功したYouTube

YouTubeが出来たのは2005年、それから急激に発展し、2006年10月にはGoogleに買収され、そこから更なる発展を遂げ、それ以降多数の動画配信サイトが生まれても最もメジャーな動画サイトの地位を譲ることはなく、10年が経過しようとしています。
その要因としては様々なものがありますが、他のサイトと比較しても、投稿量が圧倒的に多く、様々な動画が集まってきていることが大きいでしょう。
それを代表する単語としては、やはり「YouTuber」(ユーチューバー)。彼らが投稿する独自コンテンツは、大きな吸引力となりました。

これだけ人を集めるのに成功したのは、YouTubeがそれだけ注目度が高いことにより、投稿した動画をより多くの人に見てもらえる期待値が高いこともあります。しかし、なんといっても動画閲覧時に与えられるインセンティブの存在が大きいでしょう。今では、前述のYouTuberの中でもそれだけで生活出来たり、はては高額の利益を手に入れられていることが有名になったため、そちら目的で動画を投稿する人が非常に数多くなりました。

このインセンティブの存在はたしかに動画の投稿数を増やし、様々な動画を産み出し、それを目的とする閲覧者も増加しました。しかし、今後はそれが足枷となってゆく可能性が強いのです。

 

質以前の問題がある作品

このような投稿サイトにおいては、作品の数が増えてくれば、その分良質なものも増えますが、反面作りがよろしくないものも増えます。それ自体は投稿サイトの性質であり否定されることではありません。その自由度も魅力のひとつであり、さらにあまり受け入れられなかった投稿を行った人もそのうちよいものを出すということもよくありますし。また、個人の好き嫌いの範疇であれば、「見ない」という選択肢をとることもできます。
しかし現在のYouTubeを見てみると、残念ながらそういった過程での出来不出来ではなく、ほかの要因での質の低いもの、ことによっては邪魔なもの、有害なものが多数見られるようになってしまっているのです。

 

手段を問わず注目を集めるための動画

最近、海外のYouTuberが日本の樹海で遺体を撮影したり、数々の悪戯行為を行なっていたなどして世界中から非難が集まり炎上したというニュースがありました。

www.cinematoday.jp

しかし、このような事例は度々起きています。日本でも昨年、覚醒剤と見せかけた白い粉末を警察官の前でわざと落とし逃走したとして、福井県の夫婦が今月、偽計業務妨害容疑で逮捕されたニュースがありました。

nlab.itmedia.co.jp

むしろ、一千万人単位のチャンネル登録者数を誇る人でさえこのようになっているのが現状です。
これはこのような行為が、肯定的であれ否定的(いわゆる炎上商法)であれ、注目を集めやすいことが大きいでしょう。

このことは、すでにあらゆるところで言われ、警告がなされています。

mainichi.jp

これらは社会的な問題もありますが、同時に瞬発的なものであり、面白さの質としてかなり低いものも多いというのもあります。しかしこういう方向でのPVが増え、そしてインセンティブが得られるようになっている場合、似たようなものが今後も増加してゆく可能性は十分にあります。
しかも飽きられる可能性も高いわけで、いつかはその天井に到達して飽きられるか、もしくは社会的許容の限度を超すインフレが起きるかという状態になることも予想されます。

 

安易な字幕動画の増加

前述の問題は記事になっているように度々言われることですが、それ以外にも現在のYouTubeを見ていると、そもそも内容のないものが上がっているケースが多数あります。
有名なのは、字幕動画。何かについて検索すると、いかにもそれに関連した動画を掲載していそうなサムネイルのついたものが出てきますが、ここ数年、この中にただそれについての概要を説明した字幕を音楽と共に流すだけ、というものが増えています。
これらは内容も薄く(ほとんどがネットで検索すれば出てくる文字列)、期待から大きく外れることが多くあります。

自分はブログの運営上、過去の事件などを調べることが多いのですが、これに引っかかることが非常に多くてイライラとさせれました。
また、これらで使われる素材は余所から無断で拝借したと思われるものがかなりあるのですが、とりわけ文字列はWikipediaや他のサイトからそのままコピペしたのでは?と思わせるようなものも多いです。

検索する言葉によってはこのようなもので埋まっているものもあり(たとえば芸能人系のものなど)、YouTubeの投稿品質を下げていると言えます。もし、この累計の字幕が流れる動画でも、ちゃんとオリジナルな文章や構成であり、有用であればその限りではありませんが、残念ながら私は見たことがありません。

 

情報商材らしきものの宣伝混じりな動画

しかし最近、この字幕動画以上に問題になっているものがあります。それは投稿した動画の最初や最後、もしくは上下字幕に勧誘を入れてくるもの。
昔からかなり多くの動画で、マイリストへのお願いや誘導を入れてくるものや動画のシェアをお願いしてくるもがありますが、それではありません。ここで言うのは、「YouTubeで儲かる方法」など、儲け話的な広告を入れてくるもの。それが非常に増えてきています。
それらを見てみると、どうも情報商材への勧誘っぽいのですね。すなわち注目度の高い動画を引込口にして、そこで儲け話を提示し、動画説明欄にあるリンクから情報商材の販売ページに誘導するという感じ。

それらが多いのは、どこかのテレビ番組や音楽VTRからとったと思われるような、YouTubeではすぐに削除される可能性の高いもの。それらは消される可能性も高いですが、閲覧数も多く見込めるものも多く、利用されていると言えます。
ちなみにこれは邪魔なだけではなく、その販売でそのあたりの知識がない人に対して被害が及ぶ可能性があります。とりわけYouTubeは子どもでさえ見るものですし。さらには問題が起こった場合、その無断使用された動画自体にイメージ的な被害が及ぶ可能性もあります。

 

質が低いものが下がっていない現状

これらが質の低いものとして表示されなければいいのですが、現在のところこれらの動画は結構残ってしまっています。Google検索での文字検索と異なり動画の絶対数が少ない場合も多いので、それらの動画も後ろに追いやられることがなく結構表示されてしまうのです。実際数十アクセスの動画でも、評価がかなり低い動画でも、検索1ページ目に出ることはわりとありますし(もしかしたらそれらの評価で下がってない……?と思うこともちらほら)。

軽く調べるとGoogle検索でのSEO対策、すなわち検索上位にするテクニックと同じように、YouTubeでもそのSEO対策的なものが為されているようなのです。これらに本当に効果があるのかはわかりませんが、ただ、対策をされるのはSEO対策同様当然の流れでしょう。

■参考:検索単語 YouTube 順位 - Google 検索

 

故にこういったものがデフリとなり、全体の質を押し下げてしまうことになっているのではないでしょうか。
 

インセンティブが呼ぶevil

やはりそこに金銭的な利があると認識されたものには、本来そこに携わらなかったような人であっても集まり、倫理や秩序はどうでもいいからそれを得るために全力を出してくるという現象は、今までネットではブログのアフィリエイトなどでも見られたものですが、必然的にそれがこちらにも来てしまったのでしょうね。最近だと、はてなブックマークにおける互助会も似たようなものかと。
しかしそれは、質を二の次としたものの量産、そして全体的にそれで染まってしまうようになります。今、YouTubeはその浸食が激しくなっている段階ではないでしょうか。

 

これからYouTubeに対策は取られるのか

しかしこうなると、そのうちYouTubeでは信用出来るチャンネルしか見なくなるようになってもおかしくありません。実際、自分はニコニコ動画では似たようなことになってますし(特定のジャンルを見ないために、見るジャンルを絞るようになったなど)。

そして、ユーザーの失望が高まっている時に、その時点でのYouTube以上の質がある動画配信が生まれた場合、一気にそちらに視聴者が集まり、そして投稿者もそちらに移動する可能性もあります(もちろんそこ自体も同じように粗製濫造になる危険性もあるのですが)。
まさか一強のYouTubeが、と思う人も多いでしょうが、ITの世界では10年経つとがらっと変わることはよくあります。15年前には、IEがブラウザシェア9割超だったわけですし。

 

ただ、天下のGoogleがそのことを予測していないとも思えません。その自分に降りかかる対策はおそらく練ってくると考えます。
つまり、そのうちこういった質の低いものは、インセンティブ的に厳しくなってゆき、淘汰されたり、検索順位が工夫されるようになってゆくのではないでしょうか。たぶん。
また、他の検索エンジンへの需要が高まったり、別にWebサービスや拡張機能などでフィルタやブラックリストがが実装されるなど、それを回避する仕組みも生まれるでしょう。実際、そのような動きはあるわけですし。

 

最後に、YouTubeというかGoogleのインセンティブやアドセンスの支払い方針というのは、ほとんどGoogleの胸先三寸なわけで、YouTuberにせよブロガーにせよ、それに生活を委ねるのは、かなりリスクが高いと思っています。ひょっとしたら明日、いきなりインセンティブの急激な低下、もしくは一般ユーザーへの廃止と言っても全くおかしくないので。そのことは心に留めておくべきでしょう。