空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

クレーム対応窓口を減らすことによって回り回って与えられる企業へのダメージ

このようなニュースが。

電話も通じぬIT企業、増える「窓口はメールのみ」 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

さて、何故こうしているのか。企業側からの理由を考えてみると、以下のものが思い浮かびます。

  • 人員不足
  • 担当能力不足
  • クレーマー対策
  • サポート費用軽減

つまり、サポート窓口を広げれば、それだけ金がかかる上に、クレーマーの攻撃の対象にもなる。しかしそれを対策しようとすれば金もかかるし、東芝クレーマー事件みたいにつけこまれる対応をしようものなら炎上しかねない。なら門を狭くして、それを受け付けないようにしたほうがいろいろよさそうだというところだと思われます(もちろん受ける気はあっても人員的、費用的都合でやむなくカットしている場合もあるでしょうが)。

ただ、これが本当に結果として良い方向に向かうのでしょうか。もちろんこのクレームを受け付けてもらえなかったユーザーが、そこの製品、もしくはサービスを利用しなくなるのは予想がつきますし、企業もその覚悟をしているでしょう。ただ、こういった窓口を狭くすることは、それ以上のリスクがあるような気がするのですよね。

私の経験なのですが、ある量販店で呼び出しブザーを量販店で買ってきました。しかしそれを購入し、電池を入れると鳴らない上になんだか変。そして発熱をしていたのです。見て見ると、電池の挿入口の金具が曲がっていて、おそらく電流がそこだけで回っていて発熱したのでしょう。下手をすると発火の恐れさえあります。ですのでメーカーにメールか電話でクレームを入れようとしましたが、電話は平日の短い時間しかやっていない。ホームページを見てもサポート対応のフォームもメアドもない。ならどうしたか。仕方ないのでそれを買った量販店まで持ってゆき説明しました。しかしこの行為、かなり企業としては損をしているのではないでしょうか。というのは、会社に直接かけてそちらだけで対応すれば、その製品にエラーがあるということはバレずにすんだはずです。しかし今回、量販店を間に挟んでしまったために、それが伝わってしまいました。となると、量販店の店員に手間をかけさせた上に危機を知らせてしまったということで、今後の仕入れにも影響するのではないかと。

つまり、クレームというものは窓口を狭くすれば霧散するもではなく、ほかのベクトルにその力が進んでしまうものだと思うのですよ。そしてそのベクトルは小売店舗だったと。さらに小売りから見た場合、「本来企業が受けるべきクレームを押しつけられている」と感じることもあるのではないでしょうか。もちろん小売りから企業への連絡は経路が出来ていると思われますが、それでもその手間はかかるのですから。

さて、一番最初のニュースではIT企業となっていますが、これらが扱うのは主にサービスであり、小売りも多くの場合存在せず、ユーザーとの直接的やりとりになります。なら大丈夫だろ、というとそうでもありません。ベクトルは他の方向に向けられています。

まだその会社にメールが来ているうちはよいでしょう。しかしそれがあきらめになった瞬間、ほかのところに向きます。たとえばニュースでは消費者センターやNPO法人が出てきますが、こちらに連絡が行っていることは容易に想像できるでしょう。さらに今、消費者庁の創設が検討されています。もしこちらがそれなりの行政的権限を持つと、連絡が取れないような苦情はそちらに直接かけてしまう人が増える可能性もあるのではないでしょうか。さらに、対応出来ていれば事前解決した事例を訴訟に持ち込まれ、評判を失う可能性もあるでしょう。

さらに、ネット上でその不満が書き込まれることもあります。たしかに一人だけではたいしたことはありませんが、それが積もり積もって大勢の評判となれば、明らかにマイナスとなるのではないかと。最近、ブログなどを使ってのマーケティング(クチコミとか)をする企業がありますが、そのマーケティングがプラスの効果を与えるということが言えるのならば、逆にマイナスのクチコミマーケティングというのも存在するのではないでしょうか。

こう考えると、クレームの窓口を広くして自社で受け止めるというのは、サービスであると同時に、そういったクレームが行き着いてはいけないところに対しての防護壁でもあると思うのですよね。つまり問題が起きても自社対応でガス抜きをさせておいて、それ以上広まらないようにすると。もちろんクレーマーは混じるでしょうが、それに対してもちゃんと筋が通っていれば悪評とはならないはずです(ネット上ではクレーマーのほうが非難される傾向にあると思いますし)。

というわけで、サービスではなく自社のために、こういったクレームの窓口、せめてフォームかメアドくらいは表示して、優先度の高いもの(たとえばヤフオクの詐欺とか)はすぐに対応するようにしてほしいなと。つか、サポートはその順番をつけられる人がやるといいのではないかと思われます。


ちなみにサポート係の経験がある&昔はヤフオクで何十件もメールの取引をしたことのある経験から、個人的にクレームについて心得ておくと結果的に良い方向に向かうと思ったことを書いておきます。

返信はできるだけ丁寧に(特に1回目)

最初のクレームの際は、こちらが開いてから見て自分にマイナスを与えた悪人に見えるので、メールでもかなり怒っている文章で来ることがあります。ここで大事なのは「こっちは(そのユーザーにとって)悪人じゃないよ」と示すこと。そのためには出来るだけ丁寧に対応すること。すると多くの場合、1回目の怒りが2回目からは和らいでくることが多いです。
さて、会社が対応すべき欠陥がある場合は誠実に対応すればいいですが、中にはよくわからないもの、それに明らかにそっちが原因じゃないの? というものもあります。その時もあまり高圧的にならないように気をつけたほうがいいです。つまり「〜ですが、そちらの○○が原因と思われますので、こちらでは対処致しかねます」ではなく、「〜ですが、こちらでも調査しますが、そちらでも○○が××になっていないでしょうか。お手数をおかけして申し訳ないのですが(←ここ重要)ご確認願えますでしょうか」とやると、次のメールは「こっちが間違えてた、サーセン」となるか、それ以上の連絡がなくなるということが多いです。また、もしこちらの予想が外れていた場合も、余計な怒りを買わずにすみますし、たいしたものではない場合「丁寧に対応してくれたので、別にいいです」と折れてくれることもあります(操作とかに問題のない場合。たとえばちょっとしたキズとか)。つまり、丁寧に対応しておく分に損はしないと。ただし、決定するまで断言してはいけない、謝ってはいけない場合も存在しますが(「ご連絡ありがとうございます」「お手数をおかけして申し訳ない」など、その手間に関して謝意を言うのは別にOKかと)、それはまた後述。

なるべく早めに返事を出す・たらい回しをしない

……うああ、ごめんなさい。レスなどが遅れている人間が言うのもどうかとは思いますが、まあその通り。というのは、クレームの場合その製品の欠陥と同時に「余計な手間をかけさせやがって」という怒りもあるのです。それが時間をかけることで積み重なると。なら早めの方がいいです。

理不尽な要求と確信したら断固とした対処を

しかし、何度もやっていて理不尽なことを言うクレーマーも存在することは確かです。一度や二度の連絡ではこちらに非が有るかもしれないのでわかりませんが、もし、明らかに妨害行為や金銭の要求をしてきた場合、断固として対処することが必要。前に「断言してはいけない」と書いたのは、クレーマーはここを言質としてくるので。ネットで悪評を流されるという心配はあるでしょうが、思ったほどネットはクレーマーの味方にはならないでしょう。嘘を書けば営業妨害ですしね。


まあ簡単に書いてはいるものの、これらは全部違うのでバランスが難しいのですけどね。私は専門ではないですが、こういうクレーム対応を専門で的確にやっている人というのは尊敬します。


怒っている人は、正確に言えばその企業から与えられたもの(商品やサービスの欠陥)に怒っているのではなく、それによりマイナスを与えられたということに怒っているので、そこをプラスに転じることが出来ればいいわけです。つまりサポートをしたけど、対応がとてつもなくよくて気持ちが良かったということがあれば、うまくいけばクレーム前よりイメージが良くなることもなくはないわけですし、もうちょっとこのあたりの対応を強化するのも企業イメージを上げるためにはいいのではないかと思われます。