昔からブログの執筆用、もしくはただの興味として詐欺や悪徳商法、それにブラック企業などの実例やそれを行っているらしいという感じの企業を調べたりすることがあります。
ただ、ここ近年、昔よりもそれらの情報が見つけにくくなっている気がします。それはネットが昔より普及したのにもかかわらず。いいえ、実は昔よりもネットが普及したからこそ。
- インターネット黎明期の悪徳商法情報
- ネットのネガティブ情報は対策される
- 告発にだってデマや風評被害といった嘘情報が混じり得る
- 悪徳企業の名前を出すことと信憑性のジレンマ
- 最後に頼るのは自分の情報判断能力と対策力
インターネット黎明期の悪徳商法情報
ネットの黎明期、まだブログが影も形もなかった時代、ジオシティーズなどのホームページなどではたくさんのコンテンツがありましたが、その中には悪徳商法やマルチ商法に対する警戒、告発をするホームページや掲示板はそれなりにありました。ちなみに当時はそういったサイトも、アンダーグラウンド的な扱いをされていましたね。その中で有名だったのが、『悪徳商法?マニアックス』など。
それらの掲示板には根拠が乏しいものやよくわからないものもありましたが、確実に被害が生じているケースも存在し(たいていどうだったかはあとでわかるのですが)、それの予防的な役割を果たしていた面もあるでしょう。
しかしその手のサイトは減り、今、なんとなく悪徳商法かな? もしくはブラックかな? と思う企業があり、それを検索しても、それがどうなのかというのがわかりにくくなっている印象を受けます。
これはここ近年話題になっているブラック企業でも同じで、一部(たいてい掲示板のスレ)ではブラックと言われているけど、検索してもスレのコメント程度しか出てこないで、本当のところがどうかわかりにくい、という感じ。
ただ、少し考えればそうなってしまうのは当然なのですよね。
ネットのネガティブ情報は対策される
それこそテキストサイト時代なんていうのは、ネットがまだ黎明期~発展期の段階で、且つケータイ(ガラケー)でさえ普及しきってはいなかった時代です。そしてネットも誰もが見る当たり前の存在ではありませんでした。
しかし、それ以降、そしてここ近年においてはスマホの普及もあり、ネットはもう誰でも触れられる存在になりました。それはもちろん悪徳商法の業者やブラック企業でさえも。
当然、自社の名前に都合の悪い情報を放置しておくわけはありません。故にそれに対するクレームを入れたり、はたまたSEO対策などでそれらが目立たないようにするために、いろいろ手を尽くすのは当然となります。
そういえば悪マニも2003年頃、裁判が起きて「Google八分」が話題になっていましたね。
■参考:悪マニvs株式会社ウェディング問題(google八分問題)はそれからどうなったのか : Timesteps
今、悪徳商法やブラック企業とされている会社の情報を社名検索すると、それらのマイナス情報よりも、まずその会社のホームページ、それに続いて支店や紹介記事、あと転職系サイトの会社評判クチコミなどが上に来るようになっています(でもってそのクチコミが工作されているのでは、と思うくらい不自然な賛美で溢れていたり)。
つまり、自社のネガティブ情報をある程度対策で隠すことが可能になってしまった結果、昔のように単にその企業名で検索してもそういったものが出にくくなっている面があると思われます(ただし、完全にネット炎上してしまって知れ渡った場合などは止めようがないですけど)。
告発にだってデマや風評被害といった嘘情報が混じり得る
とはいえ、この傾向が悪いか、というと、そうとばかりはいえないのです。
ネガティブな情報というものは、何も悪徳商法業者やブラック企業だけに限定して走るものではありません。全く根拠のないことが書かれ、風評被害になるケースもありえるからです。
よくあるのが、最近問題になっているデマ。そしてその震源はただの逆恨みや悪戯で根拠がないということだってあり得ます。
例えば、その企業に対して対抗する企業が「あそこは悪徳商法」「あそこはブラック企業」というのを流してしまうこともできるわけです。そうなると、何もしていないところでもデマにより被害を被ってしまうことになります。それを防止することから言えば、根拠もないのに書かれた情報については目立たなくするというのは正しいでしょう。
悪徳企業の名前を出すことと信憑性のジレンマ
しかし、悪徳商法やブラック企業の告発というのは、多くの場合匿名です。何故なら実名で書くと、それこそ何をされるか(SLAPP訴訟や恫喝など)わからないわけですから、それを恐れてそうなります。
それでも悪徳商法企業やブラック企業が話題になることがあるのは最近のネットを見てもおわかりの通りですが、たいていの場合起爆剤となる、ある程度根拠が保証されているものが発端です。すなわちマスコミの報道をはじめとして、行政指導、警察沙汰、団体の告発、もしくはリスクをふまえての実名告発等。
ただ、それまでは知られていないということもよくあり、その隙間で引っかかってしまった人も多いでしょう。問題はそこ、すなわち被害が発生する前ではなく、あとにしか広まらず、結果として被害者が増えてしまうということにあると思われます。時にはそのまま発覚もせず逃げられてしまうということも。
しかしそこである種のジレンマが生じてしまいます。つまり匿名の場合信憑性に欠け、それが風評被害やデマかもしれないので隠れてしまう。しかし実名で告発した場合はその性質上何かのマイナスを被る可能性がある。そして証拠を積み立てて発表した場合は、既に被害者が発生したり逃げられてしまっている、という感じ。
そのジレンマを抱えつつも、罪もないところを風評被害で傷つける訳にもいかず、悪徳業者やブラック企業が存在しても真実と受け取ってもらって広めるのは難しい、というのが今の状況と思われます。
しかし困ったことに、本当の悪徳企業はそういうものはふまえていて、本当のことでも風評被害のように偽る、そして被害が広まった頃には逃げる、というパターンが常套です。そしてほとぼりが冷めたらまた新しく悪徳行為をするという感じ。もうこれはネット普及前からの黄金パターンではないかと。
逆にそういうことが流れている事も知らないようなネットに疎いところの風評被害が放置され、正確な情報が失われている可能性もあります(むしろ悪徳業者が自分の存在を隠すために、そういった風評被害を匿名で流す可能性も考慮)。
最後に頼るのは自分の情報判断能力と対策力
そんなわけで、今単に社名で検索をかけたとしても、すぐにはその会社がどうなのか、というのはわからなくなってきている感じがあります。
悪徳商法やブラック企業の情報に限らず、検索ページの1ページ目で軽く調べたところで、本当のことが書いてあるとは限らないということです。まあネットに真実が書いてあるかということ自体、疑ってかからなくてはいけないと思いますが。
では、そういったものを防止するのはどうすればいいか。
過去事例などからパターンを学び、「これは怪しいのでは?」という感じの悪徳商法やブラック企業に対するリテラシー(もしくはカン)を養うしかないのかなと。
またそれに詳しい法律関係(たとえば弁護士)の人など、万が一それらに引っかかった時の対策もいろいろ調べておくのもよいでしょう。悪徳商法なら、少しでも疑問に思った時点で消費者センターに相談するということを頭に入れておいたほうがよいと思われます(長引かせると解決が難しくなる場合が多い)。
あと、ネットで調べるのもよいでしょう。ですけど前述のように1ページ目の軽く見た情報だけで信じようとせず、もっと深いところまで、自分の力で探すことが必要ではないでしょうか。時にはネット以外も含め。もちろんそれらを見る度、そのソースがどのくらい信用出来るのか、自分で考えることは必須でしょう。
重要なのは、一つ見ただけでそれを判断せず、じっくり調べて考え、本当かどうかを見極めるということを放棄しないことだと思われます。
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