空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

テレビが衰退すれば一発屋な歌手も激減するかもという話

このようなスレが。

「一発屋」と聞いて思い出す歌手

ここで思ったのが、「一発屋の定義って何?」ということ。というのは、スレを見ていると意外と私の知る限りでは消えてない人もいるわけですよね。たとえば「ちょっと早すぎるかもよBダッシュ!!」の人達(トンガリキッズ)はもともと業界の人が企画としてユニットを組んでいたという感じらしいですし、『おどるポンポコリン』で大ヒットをとばしたB.B.クイーンズも、もともとその方面(ブルース)では有名なソロアーティストを中心に集めた企画バンドだったのですよね。ちなみに音楽で大事マンブラザースバンド*1と並んで一発屋の代名詞みたいに言われる『愛は勝つ』のKANですが、ネットを調べてみると固定ファン(それこそ『愛は勝つ』前から、もしくは後のファン)はわりと多く、近年でもライブチケットがすぐ売り切れて取れないこともあるそうです。あと、楽曲提供もわりと多い。余談ですが氏の曲では『愛は勝つ』よりも、マンガ『ツルモク独身寮』の運動会のシーンでも全部の歌詞が引用された『東京ライフ』という曲の方が、東京生活の心境を歌っているいい曲で、個人的に好きです。それと、1990年にCMソングに使われた『虹の都へ』が目立ったアーティスト、高野寛ですが、この人はYMOの系統として、熱心な日本ポップスファンでは評価が高いと聞いています。個人的にも、この人の曲はわりと好き。*2

でも、音楽の世界で言われている「一発屋」というのは、このように音楽だけで大ヒットし、そして落ち着いた人というのは少数派だと思います。特に九〇年代以降は。というのは、たいてい「一発屋」と呼ばれる人は、音楽以外に「何か」が原因となってブレイクし、そしてそれがなくなったので続かなかったという場合が多い気がするのですよね。例えば前述の大事マンブラザースバンドですが、あの『それが大事』がブレイクしたのは当時人気番組だった『やまだかつてないテレビ』で使われたことからだったのですよね(『愛は勝つ』も同じ)。他にもCM、ドラマ主題歌などで火がついたパターンもかなり多そうです。(前述のトンガリキッズや牛若丸三郎太(時任三郎)のCMソングなどの企画ものは、最初から1発狙いなのでちょっと違うでしょうが。))

こんな感じで、90年代のオリコントップは、ほぼ必ずドラマ主題歌(フジ月9など)かCMソングという時代もあったくらい、タイアップの力が強かったのですよね。ですので、それなりの曲はまずこういったタイアップで盛り上げて売る、みたいな感じが多かったように感じます。しかし、2回も3回も同じようなタイアップが得られるわけではないので、必然的に注目する人の数は減ってくると。


さて、ここからが本論。ではこのようなタイアップするもの、すなわちテレビドラマやCMの力が弱くなった場合、どうなるのでしょうかということ。いや、実際昔ほどドラマやCMのタイアップ効果ってありませんよね。少なくともドラマの主題歌だから売れた、ということは聞きません。それがかなり良い曲でない限り。そしてCMも同じく。そもそもCMは出稿数も減ってきているようですし、最近流れるのは昔のヒットソング(ブルーハーツとかユニコーンとか)ってことも多い感じがします。となると、(もう一発屋になりようがない)有名アーティストではない歌い手の大きなブームというのは昔と違って滅多に出ないような気がします。つまりは、「一発」でさえ生まれにくい、ということで「一発屋」がほとんど生まれないというようになるのではないでしょうか。

そもそも、一発屋と呼ばれる人だって、何かヒットを出したから呼ばれるわけで、それ以前にヒットを生み出していない人は何十倍、何百倍もいるのですよね。そしてこれからは一発屋ではなく、後者のような一発もあててない人が増えるのかも、と思ってしまいました。まあ、もともと歌は歌で勝負するのが筋ですから、仕方ないことなのかもしれません。ちなみに他のタイアップ先として、アニソンやゲーソンがこれから盛り上がるか?という仮説も考えましたが、それはまたの機会に。


でも、「一発屋」というものの視点は多くの場合、「そのアーティストを知らない一般の人(主にテレビ視聴者)」からの視点なのですよね。それこそ最初に語ったKANや、他にもナゴムレコード出身の『たま』では、初期からのファンにとってみると、代表曲が盛り上がった頃がニワカが増えて嫌だった。その前や落ち着いてからの方が好き、という人もいるみたいです。そういう人にとってみれば、「一発屋」などとそのアーティストが呼ばれるのは不本意でしょう。おそらく数年後には『千の風になって』の歌い手、秋川雅史氏をそういう人も出てくるかもしれませんが、言うまでもなく本職はテノール歌手なので、筋違いもいいとこでしょうね。このへんのことについては「一発屋 - Wikipedia」がなかなかまとまっていたので参考になると思います。


ま、好きなアーティストならそのまま好きでいればいいじゃないと。逆にあまり一発屋言い過ぎると、その分野に関しても無知を晒すこともあるかもよとそれなりに綺麗にまとめて今日はここまで。

*1:ボーカルの人は今でも活動中らしいです

*2:ついでに『孫』の人(大泉逸郎)を調べてみたら、もともとアマチュア演歌歌手だったのにいきなり大ブレイク、別に落ち着いた今でもさくらんぼ農家を営みながら普通にCDを出しつつやっているという感じみたいで。まあたしかに「一発屋」の定義にあてはめればそれまでですが、それでも地方のアマチュア演歌歌手と一回でも爆発的ヒットを飛ばした人なら、続くCDの売り上げでも天と地の差が出ると思います。