さて、今日書くことは以前『テレビがアニメに対して優しくなる日は近いか』でちょっと触れましたが、視点を変えてもうちょっと掘り下げて書いてみます。
こんなニュースがありました。
■【ヒットで振り返る2008年〜テレビ編〜】 ドラマもバラエティも転換期を迎える - エンタ - 日経トレンディネット
さて、ここではスポットCMが前年比1割減と大きく落ち込んことが書かれています。そしてそれを補うため、この秋からテレビ局はこれまで不文律で禁止してきた業種パチンコホール(パチンコ機種は以前からありますよね)、宗教法人関連、金融商品のFXなどを開始したと。たしかに落ちてはいるものの、一応これで広告収入は入っていることでしょう。しかしこれは非常にハイリスクな行為だと思われます。
そもそも、何故今まで上のような業種のCMをテレビ局は行ってこなかったのか。たしかにモラルの問題もあるでしょう。しかしそれだけではなく、「CM」という媒体の価値を守るためだったのではないかと。CMはおそらく10年前まで、トップクラスの宣伝方法とみなされていたと思われます。それは多くの人に伝わるというだけではなく、質としても。つまり宣伝力がある→出稿料金が高くなる→財力のある大企業が主に出稿するということで、CMを出す企業はある意味社会的信用があったという感じ。さらにテレビ局もその質を下げないために、CMジャンルの選別をしていたと思われます。
しかし現在、大企業がCMの出稿から手を引き始めたことから、これらを入れることとなります。たしかにこれらのCMに対して、何も思わない人はいるでしょう(そもそもそういう人たちを対象にしているはず)。しかし、この手のギャンブル、宗教、リスク商品系というものは、ちょっと知識のある人ならそれぞれを嫌悪している人がそれなりにいるというのはわかるはずです。それはネットでこれらについてよく言われているものだけではなく、ネットをやらない人にとっても。たとえばパチンコはファンがいる反面、その依存症や破綻過程、もっと言えば夏場に赤ちゃんを放置する事件はよく報じられ、そこから嫌う人はそれなりにいますし(そもそもギャンブルが全くダメという年輩の人はわりといるはず)、FXはちょっと金融を囓っている人ならそのリスクがわかっているでしょう。また宗教系(特に新興宗教系)は1995年の地下鉄サリン事件における衝撃からのマイナスイメージをオウムのみならず新興宗教団体全体に持っている人がいるのではないかと。
そして、今までCMを出稿していた企業の広報担当者も思う可能性はあるでしょう。うちのCMがこれらマイナス印象を与える可能性のあるものと一緒に出していいのだろうかと。つまり、同じ時間帯でこれらに当たってしまったら、その嫌っている人のマイナスイメージを、自社の商品にも連鎖させてしまうのではないかと。効果がないならまだしも、マイナスになってはたまったものではありません。その費用対効果を考えて、今、既存の企業がCMから手を引くのに拍車をかけているのではないかと。さらには同時間帯にそれらのCMが流れなくても、すでにCMというのは良いイメージを植え付けるのには力不足とみなしている担当者もいる可能性もありますね。
例えれば、駅売りスポーツ新聞の風俗欄にエロ雑誌の広告と並んで宝石の広告があったら、効果がないばかりではなく、「え? この商品ってこのレベルなの?」って思われることもありますよね。*1だからそういうところに経済雑誌なり高級品の広告は出稿しないと。ここまで極端ではないにせよ、CMでも似たようなことが起こっているのではないかと。
ただ、この状況をさすがにテレビ局はわかっていないはずはないでしょう。しかし、背に腹は代えられないというかそれしか手段がないのでは。そしてスパイラルに陥っていると。ただ、こうなるとそのうち車や食品とかも撤退する可能性がありますし、さらにスパイラルに陥る可能性はあります。とはいえ、今の状況よりさらに規制がかからなくなるとなると、先物取引くらい? 直接的ではないにせよ、DMMやソフトオンデマンドはすでに非アダルト広告打ってましたしね。
上の推測が正しかったとしたら、景気が良くなったから広告が戻って解決、となりそうもないのがテレビにとっては辛いところではないでしょうか。どこかで収益に関して革新的な手を打つ人が出てこなければ、テレビ局形態の数年後の様相はだいぶ変わっている可能性はありますね。
◆おまけ
■テレビ通販のトラブル相談増加、国民生活センターが注意呼びかけ - ライフ - 日経トレンディネット
*1:まあこの場合貢ぐ用とか思われたりして。