空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

銀行のATMにローンの広告が出ることについてのマイナス分析

今日、とある銀行のATMで金を下ろした時、金額確定の操作の後、本来なら出てこない「はい」「いいえ」の選択が出てきました。それはその銀行がやっているカードローンのこと。そして詳しい説明を見たいかどうかで「はい」と「いいえ」の選択があったのです(ちなみに右側が「はい」で、左側が「いいえ」でした)。私だけが気が短いというのでなければ、これ、かなりウザイのではないでしょうか。しかし、ここでその余計なカードローンの選択肢を非難するだけではつまらないので、何故このような表示が出るようになったのか、そしてこれは効果があるのかを考えてゆきたいと思います。

いちいち書くまでもありませんが、ここ10年くらいで銀行は消費者金融と提携(一部は吸収と言ってもいいかも)して、カードローンを始めました。利率はだいたい18〜25%くらいでしょうか。さて、この銀行のローン、収益としては非常に美味しいと言われています。何せすでに身元がしっかりしている人に金を貸し付けてるのですから、回収が比較的容易で(消費者金融に比べれば、という話で)それなりに高い利子を取れますし。最近、深夜時間帯のテレビ広告で以前多かった消費者金融そのものに加えて、このような銀行のローン関係が多かったり、ネット上の広告でもかなりよく見るのは、それだけ利用者が増えて欲しいからだと思われます。

しかし、テレビ広告やネット広告は既存の延長線上だからいいとして、この新しく出てきたATMでの広告誘導、はたして効果があるのでしょうか。あくまで私の予想となります、これはたしかに多くの人に見せることは出来ると思います。しかも銀行利用者という対象者に対してポピンポイントに。広告のプラス面だけを考えれば、たしかに有効かもしれません。しかしながらその反面、確実にATMの利用者にどれだけかには嫌悪感を与えているのではないでしょうか。

その嫌悪の理由はいくつもあります。まず単純に「ウザイ」ということ。今まで十数年間、ATMにおける引き出しの作業工程というのはどの銀行においても決まっていたのですよね。すなわちカード入れる→暗証番号入力→金額指定→確認(→明細書を発行するか)→金受け取りという流れ。しかし今回はその明細書発行のあとに、その「カードローンの詳細を見るか」という工程が加わります。ただ、広告が表示されるだけならどのATMでもありますが、これの場合は「はい」「いいえ」で指を動かす必要があります。それがウザイ。しかも間違えて「はい」を押してしまった場合、さらに表示されるため、ウザさが増します。こんなのたった数秒〜1分程度じゃないかと思う人はいるでしょうが、社会人がATMを使う場面って、かなり急ぎのことが多くないですか? たとえば電車がもうすぐ来るとか、昼休みの貴重な時間とか。そういう時に時間をロスする要素はたとえ一瞬でも腹が立つと。もちろんこれが必要な工程(たとえば暗証番号変更のすすめ)とかならば、まあそれほどではなかったですが、広告という自分にとっては何の役にもたたないものなので。ちなみにこの広告を出なくする方法もあるようですが、それが「インターホンを使う」という、普段なら非常用にしか使わないものなので、辞めさせる気はないのだなと思ってしまいます。何でボタンで「今後表示しない」を出さないのかと。今時ブラウザのディフォルト設定アラートにもチェックボックスがあるというのに。さらに書けば、今後ここに広告を出してくるということも考えられ、それに対してのヘイトもあるのかもしれません。

さらに、この広告がローンであることに問題があります。現在、昔に比べるとだいぶ消費者金融も一般化して、「サラ金」と呼ばれていた時代に比べて、ローンに対する抵抗はなくなってきたと思われています。故に、こういった宣伝がよく行われているのでしょう。しかし、年配の人にはこういったローンに対してまだ抵抗を持つ人はいるのではないでしょうか。まあ年配の人の気持ちはわからないので、これくらいいいと思うかもしれませんが。では、今の20〜40歳くらいはどうなのか。たしかに周知によって、ローンは一般化してきました。しかし、全員が全員、抵抗がなくなったとは言えないでしょう。というか、「抵抗がない」人が増えた反面、「嫌い」な人が増えたのではないでしょうか。

昔の場合、サラ金は抵抗があると言っても、だいたいは借りるつもりがないので、好きも嫌いもない、ただ「無関心」だったと思われます。つまり使わないから関係ないという感じ。しかし、現代はそれが周知されるにつれ、「無関心」から「(知っているけど)抵抗なし」に変わった人が増えてきたのは確かだと思います。しかし情報の流入は、当然それについての問題も付随してきます。つまり利率の問題など。そうすると「無関心」から「抵抗なし」を経由してかしないでか、そのまま「嫌い」に変わってしまった人も多いのではないでしょうか。

さて、そんな人にATMにおいてローンの宣伝をしたらどうなるか。その銀行自体の信用を疑ってしまうのではないでしょうか。でも、町中で消費者金融のティッシュをもらっても腹が立たないのに、どうしてこっちは腹が立つのか。それは広告といえど、一方的にもらってそれで終わりなティッシュに対して、ATMでの広告というのは、ある意味個人情報を盾にとった宣伝だからではないかと。実際にはないでしょうが「ああ、俺の預金をローンで奪おうとしているのか」という心理も働いてしまいますしね。定期預金なんかを持っていればなおさらです。


そんなわけで、ATMでのローン勧誘はやめたほうがいいと思うのですよ。正直、アレを毎回見せられるのだったら、他の銀行に全額預金移しかえようかと思うくらいですし。……これ、私が神経質なんですかね? でも、同じように思う人がいるなら、ローンによる利益を得る代わりに、見えないところで多数の預金を失っている可能性もあるのではないでしょうか。つか、昔から思うのですが、何でテレビCMのクレームに対しては敏感なのに、こういった見えない部分で反感を買う可能性のあるところでは鈍感なのかなあ……