空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

地デジ対策に金を使うほど、閉店間際のスーパー状態でチューナーが売れなくなるジレンマ

地デジ対策費が、昨年度の10倍になるそうです。

地デジ対策に600億円 総務省概算要求 今年度の10倍に

要求の柱は生活保護世帯への支援で、128億円を求める。専用チューナーを無償配布するほか、アンテナの改修費なども国費で支援する。来年度は40万世帯を対象とする計画で、10年度も続ける。高齢者や障害者の自宅を訪問し、地デジへの移行を促す方針と経費(97億円)も新たに盛り込んだ。

前から言われているように、アナログ停波まで3年を切った現在でも、普及率がかなり怪しく、一説では50%を切っているとか(しかも一説では、あくまで視聴可能機器を持っている世帯としてカウントしているので、地デジを見ていない家庭、地デジ機器を複数持っている家庭を考慮すると、もっと減るとか)。テレビ関連製品がよく売れるというオリンピック商戦を過ぎても普及率が上がっていないということでしょうか。残るはワールドカップ位しか思いつきませんし(それも日本が予選でコケたら潰れる可能性大。まあ、今回のオリンピックでの成績を見る限りありそうだしなあ……)、そもそも物価高も影響して、停波まであと6回しかないボーナス商戦も期待できないとなると、これから2011年7月までに100%に届くことはまず無理、80%でも微妙なところではないでしょうか。ただ、それを誰も言えないという、おそらく問題の検討において一番マズイ状態に陥っている可能性はあります。

さて、以降に失敗すると国の責任問題だけではなく、放送局、及びそれに携わる関連産業(広告代理店はもちろんスポーツや芸能まで影響する可能性大)がとんでもないことになりかねません。それで現在、携わる団体すべてが普及に必至になっていて、そのひとつが上のものなのでしょう。

このように金をかければ地デジ移行は進むか。いえ、私はこのくらいの費用では全く逆だと思います。というのは、こうすることによって効果がないばかりか、逆にその配られた分以外においての普及が鈍化すると思うので。

最初、導入にはかなり金がかかった地デジも、値下げなり、生活保護世帯は無料なりと、なし崩し的に緩くなってきたものですから、本来なら買える余力のある人でも、「あとちょっと待てば、うちにも無料で配布されるかもしれない。いや、アンテナ工事もしてくれるかもしれない。だから今金を払って買うのはやめておこう」という買い控えが起きているのではないでしょうか。それはあたかも、夕方(最近だと夜9時くらいかな)、閉店間際のスーパーで、生鮮食品や弁当に半額値引きシールが貼られる瞬間を待つ主婦のように(つか、私も一人暮らしの時はよくやったけど)。しかも地デジの場合、閉店間際のスーパーよりも圧倒的に不利です。だって他にその製品を狙う競争相手はいないし、劣化しないどころか、新しいほうが性能がよいことがある。そしてたとえ閉店(停波)しても、その後から買うことも出来るのですから。だって、冷蔵庫や携帯電話と違って現代のテレビは生活必需品ではなくなっているのですし。

しかし、これと同じ問題はチューナーだけではなく、録画機器にも言えますね。すなわちB-CAS問題やコピワン問題。B-CASは先日、フリーオにおいてとうとうカードが無くても録画できるという仕組みが作られてしまいました。

■参考:ついにあの「フリーオ」がB-CASカード不要に、とんでもない方法を採用

さらに、コピワン問題も未だ荒れています。でも、今の状態より未来のもののほうが良くなる可能性は高いのならば、今必要でないのなら買うのを控える、と考えるのは自然でしょう。おそらくこれも、B-CASなし、コピーフリーになるまで買わない人(つまり興味はあっても永遠に買わない人)というのは潜在的にかなりいると思います。だって、それらは生活の必需品ではないのだから。

これは、機器を買える買えないという問題だけではなく、それに使う金があるならば、先に他のものに使うと言う人が多いのではと。例えそこそこ収入がある人でも、使わない機器が部屋に置いてあったら部屋の邪魔ですしね(東京の部屋での1平米はけっこう貴重)。そして何より、テレビ及びそれを録画したものを見ている時間がないと。それに加えて、前に書いた受信料の徴集問題もあります。

テレビはワンルームマンションから最初になくなってゆくのではないかと思った話


つか、この地デジ移行の失敗って、完全に「テレビが生活必需品である」という前提の元で動いてしまったのが敗因だと思うのですよね。でも、「テレビと携帯電話、どっちを捨てる?」と言われたら、たとえワンセグがついてなくっても50代までのほとんどの人は前者を選ぶのではないでしょうか。いや、たしかにテレビのほうが大事という世帯も存在するでしょう。特に高齢者の世帯とか。となると、デジタル放送時代のテレビ、特に地上波民放は、そういった高齢者向け中心ものになる可能性は高いでしょうね。つか、現在でもゴールデンタイムに健康食品とか通販系とか多い気がするなあ……

それでももし、CM等の問題で若い人をテレビの前に残したいのだとしたら、富山の置き薬じゃないですが「頼んでチューナーを置いてもらう」ような時代が来る可能性も無いとは言えませんね。