空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

「ツンデレ」というものの他の属性とは大きく異なる特徴

マンガ、アニメ、ギャルゲーなどで使われるキャラの特徴、いわゆる「属性」という分類は、実はそれぞれが違う性質を持っています。
一番最初は「性別的分類」、つまりは男か女か。まあ現実ではそれ以前に「(血縁などの)身内」か「他人」かって話も入ってくるかもしれませんが、社会学の授業ではないのでここではあくまで作品的に捉えていこうと思います。そしてその下に、よく言われる「属性」というものが来るでしょう。
ここでは、女性キャラのみに特化してみましょう。

まずは「立場的分類」。まあ独断でざっと分けてみました。
 ・「妹」「姉」「従姉妹」などどいった戸籍的関係
 ・「同級生」「下級生」「先輩」などといった社会的立場に基づく関係
 ・「恋人」「友達」「幼なじみ」といった、本人の意思に基づく関係(幼なじみの場合、それに時間軸が加わるのでちょっと特殊ですが)

特徴として、同じ立場的分類の中でも2つ以上を兼ね備えることが可能なものと、不可能なものがあることです。「同級生」の「恋人」は成立しますが、「姉」と「妹」や、「先輩」と「下級生」が物理的に成立しないように。もうちょっと詳しく分類すれば、同細目内では兼ねるのが不可能だけど、異細目間では可能ってことも出来そうですが、そこまでやる気力はないので省略。

さて、もうひとつは「性格的分類」ですが、こちらもおおざっぱに分けることが出来ると思います。それは「その人のもともとの性格故のもの」、つまり「天然」「ボケ」「明るい」「狂気」などのものと、「主格(主人公、読み手)に対しての性格」、つまり主人公(もしくは男子のみなど一定の範囲に対して)に対しては喧嘩腰だけど、他の人に対しては明るく喋るとか。『彼氏彼女の事情』の初期の雪野もそんな感じで有馬のみには本性、他に人には猫を被る感じでしたね。

まあ、作品はあくまで読み手のそのキャラの性格に対しての認識(量子力学的に言えば「観測」か?)が必要なワケなので、全部が関係的と言えなくもないですが、(つまり「天然」でも本人はそれが普通であり、他人が「天然」と認識することによって成立するので)わかりやすくするために上のようにしてあります。

こちらも、主人公に対してのみ「無口」と「おしゃべり」など相反するものなどくっつきにくいものはありますがですが(人によって違うなら相反してもOKですが)、立場的分類とは原則としてどれを組み合わせても大丈夫でしょう。


さて、ここで気になってくるのが最近よく使われる「ツンデレ」。これはもちろん性格的分類に入ります。そしてこれもツンデレの定義通り主人公に対しての態度の違いから来るものなので、、「主格(主人公、読み手)に対しての性格」のほうに属するでしょう。しかし、このツンデレ、そしてヤンデレは他とは微妙に異なるところがあります。それは「時系列」の点。

今まで挙げてきたツンデレ、ヤンデレ以外の性格属性は、相手方によって変わることはあれど、原則として一点で認識できます。つまり出会ってからちょっと交流しただけで「無口」なり「天然」なりが認識出来る場合が多いです。作品的に見ればある程度姿形で類型化されているので一目瞭然でしょう。もちろん個々のストーリーによってはそこで判断できないものもありますが(つきあううちに本性が出てて来るとか)。
しかし、ツンデレはその一点だけで判断することは不可能です。その一点だけでは「ツンツン」「愛想が悪い」ということでしか判断できません。また先のデレ状態をとっても「デレデレ」「甘え」です。つまり「ツンデレ」というのは、それ以外の性格のように時系列の「点」で表現することは不可能で、「線」、つまり展開の流れによってはじめて判断できるというものではないでしょうか。
これは「ヤンデレ」も同じで、時系列(主に主人公との関係での変化)がなければ、「MAD」で終わります。

こう考えると、ツンデレは、「点」ではなく、「線」でみなすという、それまでとは全く捉え方の違う属性ではないかと思ったのです。

ちなみに幼なじみもたしかに時系列ではありますが、その幼なじみという要素は物語の外に属するものなので、「こいつは幼なじみだ」という説明でも読み手を納得されられるでしょう。しかしツンデレの場合、前述のように「こいつはツンデレだ」と言っても、言葉が名付けているだけで、それを点だけで読み手に実感させることは出来ません。


さて、かなり属性も細分化されて、「点」でとらえられるものはもう新しいのは出ないんじゃないかなあと思えますが、こんな「線」で現される属性が、そのうちまだ生まれてくるような気がします。それはストーリー次第なのですから。



■追記
実は今日書いたものに関連して「シュレディンガーのツンデレ」ってのを書いたのですが、ぐぐるととっくの昔に書かれていました。それも数人の方が。

 ・シュレディンガーのツンデレ(量子ツンデレ)
 ・真面目に物理学について講義してみる
 ※もうひとつありましたが、消えていました。

でももったいないので、以下に書いたのを載せときます。

『シュレディンガーのツンデレ』

まず、ツンデレヒロインを箱、もとい物語の中に入れる。

物語の中にはランダムイベントを用意し、そのイベントは主人公に対して好感度をあげるもの(例えば苦手なことを変わってあげる、落とし物を一緒に捜してあげる等)を用意しておく。

もしランダムイベントが発生すると、そのヒロインはツンツン状態からデレ状態となり、ツンデレが完成する。しかしランダムイベントが起きなかった場合、その人員はツンツンしたままの状態で終わる。

この実験において、ランダムイベントが起こるかどうかは完全に確率の問題である。仮に出る確率が50%だとする。そして一定時間後、ヒロインはツンデレになっているだろうか。それともツンツンしたままだろうか。プレイヤーがそれを見る前は、ツンツンとツンデレの重ね合わせなのだろうか。