空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

本当に恐れられているのは初音ミクの先にあるものかもしれない

なんかこのところ、初音ミクに対してのあまりよろしくない方面での話題が多いですな。

TBS「アッコにおまかせ」の初音ミク特集に批判相次ぐ

話題の「初音ミク」の画像が検索結果から消滅中

まあ今のところいつものオタク偏見報道的な番組がひとつ流れたことが事実で、検索エンジンのほうについては何故こうなったか不明ですが、仮にこれらの動きが「初音ミク」を潰そうとするものであったという陰謀論的なものも出てきています。まあこの手のニュースがあった時はいつものことですが。

しかし、今日はその陰謀論的なもの、すなわち誰かが初音ミクを妨害しているというのが正しいと仮定して、話を進めてみたいと思います。故に今日の内容は「こういう可能性もある」程度の空想話として受け止めてください。個人的にはまだそこまで陰謀的に見るには材料が乏しすぎると思うので。


これらの動きが、「初音ミク」を何らかの形で妨害したいものだとして、何故、そんなことをするのか。それは何も「初音ミク」自体に不都合なものが生じているのではないと考えます。では何故、これに圧力を加えるのか。それは初音ミクではなくて、この歌声合成ソフトウェア「VOCALOID」の技術、更にいえば現在のこれではなくて、発展していった未来のVOCALOIDという技術に対して誰かが恐れを抱いているのではないかと。

こんな話があります。
2000年、AOLに買収された旧Nullsoft(Winampの会社)の技術者があるソフトを開発して、それを他のフリーソフトと同じようにアップロードしました。それは「Gnutella(グヌーテラ)」というもの(参考:Wikipedia ーGnutella)。しかしこれはAOLからすぐに命令が来て、1日で公開停止となってしまいました。
さて、このGnutella、いったいどういうソフトかというと、P2Pソフトです。しかしそれまでもP2Pソフトというのは存在していました(まだ合法サービスに入る前のナップスターとか)。しかしGnutellaはそれとは大きく違う点がありました。それはそれまでのP2Pソフトがマッチングなどの処理を行うためにサーバが必要だったのに対し(ハイブリッドP2P)、これらは特定のサーバがいらず、すべてをP2Pクライアントで行えてしまうのです(ピュアP2P)。これのもたらすことは何か。つまりそれまでだったら例えば違法ファイルを追う場合、そのマッチングサーバのログを調べれば流れが比較的簡単に追うことが出来ました。しかし、ピュアP2Pの場合、必ず通過するサーバというものがないので、例え違法なファイルが流れていても追うのが前者に比べて非常に面倒くさいことになるのです(追うのが不可能なわけではないですので念のため)。

その当時、AOLが公開中止をしたのも法律違反の可能性からという話でしたが、このようなピュアP2Pの技術の第一歩を危惧したから、という話題もあちこちの掲示板でなされていたように記憶しています。ただ、当時はこのようなファイル交換ももちろんですが、このP2Pの技術が検索サービスや掲示板サービスなどに転用された場合、ポータルサイトの必要性が無くなってしまうというほうを危惧した故に停止命令を下したという噂(投稿)がかなりありましたね(AOLは当時は最大級のポータルでもあったので)。
しかし、Gnutellaはそのわずか1日でダウンロードされたものから再構成されて、現在のWinnyなど幅広いピュアP2P技術へと繋がってゆきます。

もし、これと同じことが「初音ミク」というかボーカロイドの技術にも言えたらどうでしょうか。つまり、この初音ミク自体はDTMに声を持ち込んだ画期的なソフトではありますが、ここではそれ以上ではないとする。しかし、ボーカロイドの技術がこれ以上に発展して「何か」をおびやかす存在になることを危惧していたら、今のうちにその「何か」の関係者で流れを止めようと思う人がいても不思議ではありません。

ただ、前にも書きましたが(参考・『声優がいらなくなる時代というのは来るのか』)個人的にはそこまで完璧再現することが技術的に可能になったとしても、それを操作するのは人間なので、最大限のスペックを引き出すオペレーターの手間を考えれば結局声優や俳優が必要なくなるということはないと思うのですよね。ここはうまく棲み分けが出来るというか。前述のP2Pの件でも結局今でもポータルサイトは存在しますし、掲示板はクライアントサーバ型が存在しています(まあもしかしたらこの均衡が崩れる時がくるかもしれませんが、その話はまた後日)。
ですので、ボーカロイドが現在の需要を絶滅させると考えている人は少数だと思います。まあその考えすぎの思考を持った人が何かを動かす力を持っていた場合どうなのか、って話ですけどね。もしくは私がまだ思いついていないような未来に対する可能性に対して危惧を持っている人とか……


ちなみに今回の騒動の流れは実は初音ミクよりも、そこに当たり前のようにある検索エンジンが実はかなり不安定なものということを再認識させた方が大きいと思います。もしかして、ここからP2P検索エンジン構想がまた盛り上がってくる可能性もあるかもしれません。

■参考・独FAROO、完全分散型P2Pサーチエンジンのベータテストを開始

さて、パンドラの箱を開けるパンドラは誰になることか。