空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

コンプガチャにおける確率以前の話

ここ数日、消費者庁など行政の動きを受けてか、各社がコンプガチャを今後行わないという声明を出しております。

ASCII.jp:グリーやDeNAなど6社、「コンプガチャ」の取り扱い中止

この「コンプガチャ」というもの、限定的な範囲でのみ使われていたものがここ数日で広がった感がありますが、その仕組みやその問題点については、以下のサイトがわかりやすいので、ご覧になるとよいかと。

【漫画つき】コンプガチャだけじゃない。ケータイSNSゲーム課金の仕組み解説 - しっぽのブログ


さて、このコンプガチャの仕組み、各所でぱっと見た時の揃いやすそうな感じとは違い、確率的にはどれだけ揃えるのが困難かということは、上のブログでも説明されていますが、以下のサイトでは数画雨滴アプローチで詳細に解説してあります。

■参考:コンプガチャの数理 -コンプに必要な期待回数の計算方法について- - doryokujin's blog
■参考:コンプガチャの確率マジックを中学生にも分かるように説明するよ - てっく煮ブログ

これらにあるように、心理的にはすぐに当たりそうに思えても、実際にコンプリートしてレアカードを手に入れるためには、かなり低い確率となり、大量の金を費やさないといけなくなる仕組みが問題となり、景品法との絡みなどで問題になっているということでしょう。

しかし、コンプガチャのコンプ確率というのは、誰が(どこの会社が)やっても実際にこの確率通りになるでしょうか。これは個人個人で確立のばらつきが出るという意味ではなく、全体の平均をとってみても確率で予想されたもの通りになるか、それともかなり外れたものになる可能性があるか、ということです。もっとぶっちゃけてしまいますと、コンプリートの確率を本来の出現確率よりも低く(反対に高く)してしまうことは出来るかということです。例えば10枚中9枚集まっていた人の当たる確率が、急激に下がるとか。
結論から申しますと「コンプガチャは今までそうしてきたかはわからないけど、そうすることは技術的には十分可能」ということです。
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デジタルくじの操作は技術的には簡単にできてしまう

別にコンプガチャが確率の操作をしていたということではありません。ただ、ソーシャルゲームのこのテのくじにおいては、いやソーシャルゲームに限らずネットの、もっと広げてしまえばデジタルのものすべてにおいて、相手の出る景品を操作するということは「技術的には」造作もないことです。例えばコンプガチャに限らず、どっかのメーカーのキャンペーンで出て来るようなFlash製スロットやルーレットなども。

その最たる理由は、こういったデジタルくじのシステムは、他の製品プログラム同様殆の場合クローズなことにあります。デジタルなクジは多くの場合ネットを経て行うものですが、その場合ユーザーからは相手、つまりクジのシステムが見えません。故にたとえ確率が操作されていたとしても、それを見破るのは非常に困難なのです。ですから極端な話、カードならは出るものの一枚一枚を裏で操作することだって「技術的には」出来てしまうのです。しかもコンプガチャなどのソーシャルゲームの場合、持っているカードの情報はそのクジを提供する側が掴んでいるのですから、たとえば10枚集めればコンプなところを、1〜7枚目くらいまではダブりなしで集まるようなシステムにしておいて揃いそうに思わせておいて、残りは確率をグッと下げるようにするということなんて、プログラムにそんな詳しくない自分でも条件分岐ですぐ作れます。


繰り返します。このようなデジタルのクジは、確率なり出るものを胴元が調整することは「技術的には」容易いことなのです(さっきから何度も「技術的には」と書いている理由は、あとで説明します)。

ローカルでも出来うる確率の調整

とはいえ、実はこれはデジタルに限ったことではありません。実は現実におけるこのようなクジなりギャンブルでも、確率をプレイヤーの思っているのとは違い、胴元が有利になるようにするというのは不可能ではありません。

最たるものは夏祭りの屋台。よく、夏祭りの屋台で紐引きやクジなどで、発売間もないゲームハードとかいかにも豪華な賞品が展示してあったりしますが、あれのアタリ確率を紐もしくはクジの数とイコールで保証するものはありません。実際ああいう所で展示してある最高商品当てた人っているのかなあ。

ギャンブルでもそうです。ラスベガスのカジノではコンベンションなどでIT企業の人間が集まることもあるそうですが、プログラマなどは胴元にとっては利率の多いスロットはあまりやらないといいます。というのは、スロットの確率制御をするプログラムを自社で組んでいるという話。なら人の手でやるほかのものは確率勝負かというと、そうとは限りません。実は確率勝負と思われているものでも、ある程度経験のある人が絡むと、必ずしもそうならない場合があります。あと以前聞いた話ですが、ラスベガスで空いているディーラーにチップを渡して「技見せて」と言って、カードの山から自在に(もちろんわからないように)任意のカードを引き出して、ブラックジャックでも何でも揃えるということをしてしまったそうです。つまり熟練のディーラークラスになると、カードからある程度自在に任意のものを引き出すことくらいは出来てしまうという話。まあこれはさすがに見てないので本当かわかりませんけど、少なくとも人の手が入る以上、運の要素が強いはずのブラックジャックでもこのようなことが起きる可能性はあるということです。

あと以前会った人でテーブルトークRPGのすごい人がいたのですが、その人は6面ダイズ×2ならほとんど狙った目を出せるとのことでした(それ以上の面は難しいそうで)。聞くと熟練のTRPGプレイヤーはわりと多くの人が出来るという話でしたが、本当ですかね? ちなみに自分も一時期サイコロを使うトレーディングカードゲームのテストプレイで何度も何度もサイコロを振っていたことがあるのですが、何度もやっていると任意の目を出すことは出来ませんでしたが、任意の目(出したらまずい目)を出さないことはわりと出来てしまうものでした(任意の目が出にくい振り方をすればいいので。だいたい1ゾロだし)。

確率を操作することに対する枷の存在

じゃあもっと有名なところではどうか。宝くじでも手法だけ見れば出来てしまいます。あれの当選番号抽選が調整できてしまった場合はどうでしょう。また競輪、競馬といった公営ギャンブルも、あれらももし無秩序で裏で勝ち順を調整してしまえたとしたらどうでしょう。まさに胴元丸儲けという状態が作れてしまいます。
しかし、現実的に宝くじやこう言えギャンブルではそれは出来ません。というのはこれらにおいては当該の法、例えば宝くじなら当せん金付証票法、競馬なら競馬法において公正であることが定められているからです。仮にこれらで何らかの調整が行われていたら、新聞一面に載る大ニュースとなるでしょう。

さて、ここでもうひとつ思いつくギャンブルとしてはパチンコがありますが、これも厳しい検定があり、妙なロムなどが仕掛けてある場合は出荷することが出来ませんので、一応の公平性が保たれている……はずです(正直このへんよくわからんので)。ただ、よく裏ロム操作とか本当か都市伝説かわからない話が出て来るのも、デジタルが故(言うまでもなく、現在のパチンコ、パチスロの確率は腕による要素は昔より相当削られ、内部で制御されています)、そしてシステムが故その公平性の過程がユーザーによく見えないってのがあるでしょうね。

また、景品くじなどのおいても、今回のコンプガチャで話題になっている景品表示法という法律が存在しており、それに違反することは出来ません。故に今回の見解で騒ぎになっているわけですね。今回各企業が早々に手を引いたのは、色々な思惑もあるかもしれませんが、やはり法の影響力の強さを懸念した点が大きいかと思われます。

表示対策課 | 消費者庁
■参考:何故、コンプガチャ禁止で「チョコボール」の金のエンゼルは禁止にならないのか?:Blogで本を紹介しちゃいます。
「カード合わせ」規制ってなんでできたのか? | ぱらめでぃうす

しかしながら、デジタルコンテンツの場合、これから先も完全にこのテの確率を保証する仕組みというのは出来ていません。つまり極端な話、前述のような枚数による調整も行っていたとしても、特に違法の規程は見あたりません。もしそのようなことがあったら景表法ほか何かの法律で引っかかるのかどうかはもうちょっと調べないとわかりませんが、少なくともコンプガチャのように指導される迄は出来る状態にあるとも言えます。
ただ、仮にこれを法で規制するって言うのも難しいと思われます。というのはそこに踏み込むといよいよゲームのシステムまで干渉することになりかねないので。この辺については今後問題になりそうな気がするので、注目したいところです。

確率は誰の手の中か

つまるところ、このようなクジが存在した場合、思考はどうしても確率に引っ張られがちですが、実際このテのクジというのものはそれが公平なものであると保証する人や組織、もしくはシステム(法を含む)が存在してこそはじめて成り立つもので、その担保が薄いものは確率を考慮する前提時点が成り立たず、全くアテにならないケースもあり得るのです。さらにデジタルの場合、それをやっていたとしても非常に発覚しにくいという点があります。だってシステムはサーバの中のみにあるものですし、調整されて確率が低くても、心理的に確率の誤差で片付けてしまうケースも多いでしょうから。

それでもコンプガチャはそんな悪どくやると会社の信用に関わったり、コンプガチャのように景品法に引っかかる可能性があるでしょう。それより問題なのは、よくスパムメールとかで来るオンラインカジノなど。あれなんて全く確率が全く保証されていないので、正直金を振り込んで相手の気が向いただけ返してくれるシステムと大差ないと思ってます。極論、当たっているように見えても、最初に20勝たせて100負けさせて、やめそうなところでまた40勝たせて100負けさせて……というドツボにハマル調整をしている可能性だってあり得ますね。そして何か問題があっても、多くの場合はそのままトンズラ出来る環境にありますし。まあ儲けた人はそれで。自分はこの不信は絶対に崩せないので、やるつもりはないので。

確率と同時にその背景も考えよう

最後にフォローじゃありませんが、別に全部のソーシャルゲーム及びその企業が操作をしているとは言いません(そんなリスク背負わなくても儲かる仕組みだったし)。ただ、デジタルのものというのは、ひいてはギャンブルやクジなど確立の絡むものというのは、その状況やシステムによって十分それが変動する可能性があるのです。むしろピュアな条件で確立が発揮できるほうが希かもしれません。

このようなものをする時は、純粋な確率のみではなく、それを仕掛けられている状況をふまえて判断すべきかと思われます。