空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

声優がいらなくなる時代というのは来るのか

「初音ミク」が大人気ですな。たしかに面白そうなので、DTMマガジンについてくる体験版にまず触れたいなと思ってます。

で、それに関連して興味深いエントリーを見つけました。

これからいらなくなる仕事は、声優と漫画家のアシスタント

さて、こちらに書かれているように、本当に技術の発展によって声優の必要性が問われる時代が来るのか、ちょっと考えてみました。しかし結論はすぐに出て「それはたぶんない」でした。


過去、収録現場に立ち会ったことがあるのですが、プロの実力ある声優さんというのは本当にすごいです。例えば「ここは前後がこうだから感情表現的にこう読んで欲しいなあ」と思っていると、いちいち言わなくてもほぼその通りに読んでもらえます。つか、マイクの前から動かないだけでやっていることは役者とほとんど同じなんですよね。
ちなみに、読みの時には書いてある字面をそのまま平坦に読む、という人は一流にはなれないと思います。ほとんどの人は、うまく説明できない高低や「間」等を含めて、こちらが思い描いているとおりの読み方、いや、場合によってはそれ以上の表現をしてくれることもあります。
ちなみに台本も、台詞部分のみ渡すということはあまりありません(効果音的使われ方の場合は別ですが)。ほとんどの場合は前後関係をつかむために、読む部分の大区切り(章)を全て渡します。それにより前後関係を掴んでそこをどう読めばいいのか判断している場合がほどんどです。
ただ、そういうところって非常に気付かれにくいんですよね。ただ、今でも音声合成で出来た作品とプロの上手い人で収録した作品を比べれば、違いは歴然だと思います。

それにこれから先、すごく技術が進歩したとしても、結局調整するのは人間ですので、そこまでの領域に達するにはそういった間や演出を分かっている作り手が、とんでもない労力をかける必要があるのではないかと。だけどそれだとコスト的に声優頼むのとたいして変わらないような。なんか次世代ゲーム機による機能向上と、作り手の負担の問題を思い起こさせますな。

あと、マシンは常に平均して100をたたき出しますが、人間は50もあれば150、200を出すこともあります。逆に言えばコンピュータは100以上、つまり人間の組み込んだもの以上をたたき出すことは出来ないことを付け加えておきます。

昔、それこそパソコンが普及してきた時代に「すべての作業はパソコン(IT技術)で行え、人員を大幅に削減できる」という幻想があったような気がします。しかし、実際はたしかにそういう面はあったものの、実際はそれを扱う人や旧来の技術(ノウハウ)も必要でした。そして今回の流れも似たようなものだと思います。


とはいえ、これから先声優のこういったお仕事にまったく変化がないか、というとそんなことはないと思います。たぶんボイスは必要だけど小規模なもの、例えば同人とかはそういったボイスを使えば十分という場合も出てくるでしょう。それにアクションゲームなどの効果音的に数語喋らす程度のものなら、今までは一瞬で終わるようなものにもわざわざスタジオをとって声優さんを呼ばなければいけませんでしたが、自動生成出来るようになれば、わりと多く使われるようになる可能性は高いですね。あと、博物館にある案内板とかは、こういうので簡単にできるのかも。あ、そうだ、視覚障害者補助のための音声なんかもこういうのにすればコストが下がってその分を還元できていいかも。
それらはパソコンの登場により事務が簡単になったように、技術進歩の傾向としてありだと思います。ただ、やはり完全になるなるってことはないでしょう、というのが私の感想です。ま、もしその声優がやっているレベルまで進歩してしまったら、たぶん面白い文章を自動的に生成するプログラムとかも出来てそうだなあ……そうなったらブロガーはいなくなったりして。

あと、声優さんの「ネームバリュー」ってのもありますよね。それはこの人なら上手くこの役をやってくれる!みたいな信用ですね。まあついでに言えば、演技とは関係ないところでのその人に対する人気もありますが、それは今回の主旨とはずれるので割愛します。


さて、漫画家アシについても書こうと思いましたが、長くなるのでそれはまたの機会に。まあ先に書いておきますと、これも形態は変わってゆくけどなくなることはないだろうってことで。


◆追記

リンク先のコメントも読ませていただいたのですが、シンセサイザーがあるからといって生音が滅びていない、というのもかなり似たようなものだと思います。