現代における自室のスペース価値上昇とそれが阻害するコンテンツ購入意欲

前に『CDが売れない!』と最近よく言われているところから、その理由のひとつであると思われる、自分が既に所有している過去のCD等から考え、そして逆に音楽を聞く時間は環境が充実しているのだから増えている可能性があるのではないかということを書きました。

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しかし、CDが売れない理由として前回のものはあくまでひとつで、その他の要因もいろいろと入り組んで複雑になっていると思われます。

さて、最近では音楽CDに限らず『○○が売れない』という声はあらゆる場所で聞かれます。コンテンツにおいてもゲーム、DVDソフト等々。そして今特に言われているのは、雑誌、書籍といった出版物ではないでしょうか。近年では「出版不況」という言葉及び多くの雑誌の休刊がそれを表していますね。それら出版物が売れなくなった理由も、不景気やネットの普及などいろいろな点が言われています。その中で、あまり言われていない(と思う)にもかかわらず、私がそれら本、とりわけ雑誌が売れなくなった理由についてかなり影響が遭ったと思われる要因があります。今日はそれについて

買ったものを置いておくスペースの深刻な不足

まず、私事から。私は、かなりコンテンツを買い込むタイプで、家どころか仕事場でも非常にたくさんの本、マンガ、CD、ゲームなどに溢れています。これは仕事場(ワンルーム)の一角。

しかしこの写真だけではありません。ここの裏側にも本が積んでありますし、家でもすでに本棚に収まりきらず、1mくらいのブックタワーが5〜6本、おそらくは数百冊出来ていたりします。雑誌を切れるともうきりがありません。こればかりはしょうがないとおそらく10キロを超えるくらいの本を売りに行きましたが、それでも全然です。これに加えてパッケージゲームやゲーム音楽サントラをはじめとしたCDもあるのですから、その隙間で寝ているような感じです(とはいえさすがに布団を敷くスペースは確保してますよ)。

それで最近、このところマンガなり本を買おうとするときに、それは面白いか、値段はどうかということと同時に、もうひとつの事をよく考えるようになっています。それは、置き場所があるか、もしくは置いても損はないものか。

写真にもありますが、自分は『藤子・F・不二雄大全集』を全部揃えています。そして現在第三期なのですが、正直この三期目は購入しようかすごく迷いました。もちろんお金の問題もあるのですが、それ以上にこの全集、かなり分厚い本が多く、(『ドラえもん』などは10cm弱くらいあるものも)それが毎月来るのですから、置き場所がどんどん削られています。そして第二期の時点で既に本棚が飽和状態だったのですよね。そこで散々悩みましたが、それでも買う価値があると判断し、思い切って購入しました。もっともその判断は当たりで、『ドラえもん』の読みたかった未収録話、それと待望の『SF異色短編集』の表現を連載時に戻したものが読めましたしたので。

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 1 (藤子・F・不二雄大全集 第3期) ドラえもん 1 (藤子・F・不二雄大全集)

とはいえ、この大全集含め買ってくる本(主にマンガ)ですでに本棚の収納できていない本が積もってゆく、前述のような読んだけど積んでおく状態のものが多くなっているのです。そして本屋で買うとき、そしてAmazonで注文しようとするときには「これ以上増やしてスペース的に(もしくは床の強度的に)大丈夫かなあ」と思うようになり、それが購入を躊躇わせることもあります。

このような購入するコンテンツがスペースを圧迫するという問題、私のように買いまくる人は同じ問題を抱えているのではないでしょうか。何もオタクな人ではないとしても、そしてコンテンツではなくても、多くの人は大なり小なりこのようなスペースの問題を抱えていると思われます。

コンテンツの所有における様々なスペース上の問題

おそらく昔はこうした場所の概念は、家具などのような大きなものならいざしらず、比較的占める面積の小さな本やソフトなどについては考慮対象となりにくかったかもしれません。ですが現在ではそれらのものでさえ自分の活用できるスペースがそんな広くはない人にとっては場所を圧迫するようにんていると考えられます。どうしてこうなったのか。それにはいくつかの理由があると思われます。

家に滞留している今までのコンテンツがスペースを圧迫している

コンテンツの量が膨大になり、しかもそれもが比較的安価になってきたため。安価になったコンテンツは大量に買われました。しかし、実体のあるものは絶対にスペースを必要とします。勿論捨てられるもの、売られるものもあるでしょうが、どうしても残しておきたいものは存在してしまいます。それが累積した結果、新しいものを買い、それを置くための幅を圧縮してしまっているのではないかと。そこまでお気に入りのものでなくても、たった数年前に買ったものそう簡単に手放せるものばかりじゃありませんよね。いや、たとえそこまでお気に入りのものでなくても、単純に捨てるのや売るのもいろいろ心理的障壁がありますしね(その話は後述)。
このへん、今までの時代のツケがここでやって来ているような気がします(たくさん出たり安くなったこと自体はよいことなので、ツケというのは語弊がありますが)。

購入→売却循環の滞留

もうひとつは、入れ換えのルート、すなわち購入したものを手放すルートが滞っているということ。昔はマンガにしろゲームにしろ、購入したものは捨てる他に「売る」というルートがある意味確立していました。本なら古本屋、ゲームなら中古ゲーム屋、CDなら中古CD屋みたいな感じですね。しかし近年、これら、とりわけ古本やマンガ関係において、これらの売却価格が売れ筋の新品を除けばないに等しいものが多くなってきているように感じます。そして、そんな体験をした人なら重いものわざわざ持っていくより売らない方がいいと思う人も多いのではないかと。

で、売れなかったものを捨てるかというと、これまた全員がそうとはならないと思われますが。というのは、コンテンツ、とりわけ本というのはぽいと捨てにくい心理が働くのですよね。これらをどうもいらないなあと思っても、且つそれが売れなくても、そのままゴミ箱に捨てるのに全く抵抗ない人というのは少数派ではないでしょうか。どうもここのところ業界の人で勘違いしている人がいるんじゃないかと感じてしまうことがあるのですが、音楽も本もマンガもゲームも、ユーザーにとってコンテンツは使い捨ての消費物ではなく、持ち続ける資産と思う人が大半だと思うのです。だから前回のエントリーで書いたように、気に入った音楽はいつまでも聞き続けるのですし。
しかしそうなると置き場がその過去のもので占められてしまう可能性もあるわけで、それらが新しいものを買い、そして置くための幅を圧縮している可能性もあるのではないでしょうか。

ついでなので言いますが、最近「家電(特にテレビ)が売れない」なんて声も聞かれますが、あれも手放すルートが滞っている(リサイクル法で手放すにも5000円程度もってかれる)ため、購買意欲につながっていないという面がかなりあると思われます(それについてはいろいろ思うところがあるので、そのうち書きたいです)。

デジタルの普及によるスペースをとるものを買う習慣の減少

さらにもうひとつ、実は持っているもの総量は昔と変わっていない場合でも、人によって買うことをスペースの都合で躊躇うようになった可能性があります、。それは保存が可能なハードウェアの普及。昔は実物として持っていなければいけなかった書籍は自炊で取り込むように出来ましたし、そもそも買ってくることなくネットで購入出来るようにもなっています。音楽CDにおける音楽配信も同様ですね。また、テレビを録画することで生まれていた数々のビデオテープ、DVD-Rも、ハードディスクレコーダーの登場により、その本数が激減したことと思われます。例外は、昔はパッケージ価格が高値でレンタル主流だった映画などのビデオ→DVDが、価格の大幅な低下において自分で持つようになったくらいでしょうか(映画の場合まだまだ配信は一部ですし)。

このような物は言うまでもなく、そのハードウェアの占めるスペースを除いてはいくら情報を詰め込んでも、ハードディスクの容量の限りはスペースをとることがありません。むしろクラウド化でハードディスクの容量さえ超越しつつあるかもしれません。となると、パッケージに愛着があるわけじゃない場合、買わなくなる傾向は強くなっているのでいるのではないでしょうか。これは何も同一コンテンツとは限らず、例えばネットでの情報があるから雑誌を買わずにそっちを読むとか、若い人なら前回語ったように音楽CDを買わずにニコ動でボカロを聞くとか(まあ後者は金銭的な面が強いかもしれませんが)。パッケージには愛着はあってCDを買っている自分でさえ、音楽CDはMP3にエンコードしたらあとは棚にしまっちゃいますしね。

場所コストゼロの電子書籍むしろ売上げ増加のチャンスではないか

このスペース問題における購買意欲の低下がどのくらいの範囲で広まっているかはわかりません。それこそ私のように物を買いまくるオタクだけなのかもしれませんし。しかしながらこの傾向はパッケージソフトの宿命として必ず来るものと思われます。まさか今更買い取りの値段が高くなるとは思いませんし。音楽CDにしろ書籍にしろ、他の原因ともあいまってパッケージ的なコンテンツのシェアが回復する可能性は低いと思われます。

しかし、コンテンツの売上げが下がったままとは限りません。というのはこのスペース問題を解決する手段があるからです。もうお気づきの方も多いと思われますが、それがネットによる配信。つまりスペースという概念を考慮することなく、コンテンツを手に入れられるものがここにあるのです。そしてそれが生活に占める割合を増やしてゆく可能性さえあるというのも、前回のエントリーにおいてスマホやデジタルプレイヤーが音楽を聴く環境を広げているということで書きました。そして同時に、書籍にもそれが言えるのではないかと思うのです。つまり、電子書籍を盛り上げることで、このようなスペースの問題を気にしなくなったユーザーがどんどん(電子)書籍を購入すると。

しかし現在のところ出版界では電子書籍の取り組みが出てはまとまらず消え、出てはまとまらず、そうこういっているうちにiPadが上陸して普及してきて、そしてまたKindleやGoogleのタブレットが上陸しようとしています。そろそろこれらを忌避するのではなく、正面から電子書籍を見つめて売上げを増やしていけるかを大急ぎで取り組まないといけないのではないでしょうか。ただ、残念ながら今までのような高値(本と同価格かそれより高い)だったり、使用環境が限られていたり、端末のムーブに制限があるような状況では今までのような頓挫の繰り返しで、どのようにしたらこの電子書籍でユーザーの利便性と保ちつつ利益をあげられるかを考えないといけないでしょう。
ちなみにここで既存本屋の心配も出て来ると思います、少なくとも今の状態を放置してゆっくり衰退するよりは、電子書籍と紙媒体書籍の棲み分けを行って、両者が利益をきっちり出せる制度にした方がいいと思うのですけどね。テレビが普及しても新聞や雑誌が生き残ったようなケースもあるのですから、共存は不可能ではないと思います。


ただ、理想論を言ったあとで何ですが、本だけではなく音楽CD、DVD、ゲーム、はてはテレビなどの家電など、どの業界でも、日本企業が正直なところこれらをうまくしてくれるかといのは今までの実績からしてう〜ん……という感じがしてしまっています。実際音楽配信なんかは、もたもたして利便性が低いものだけでユーザーを惹きつけられないうちに、iTunesにとってかれた感はありますし。更に問題の本質をずらして、違法ダウンロードが主因で、これさえなくなればあらゆる売れあげが伸びると考えて問題だらけの法をプッシュするようになってしまうと、問題の解決どころか本質にも辿りつけなさそうな気がしてなりません。出版などではここに気づいて、問題の本質を理解し、みんなが得をする形で電子書籍を押し進めてくれる人なり企業なりが出て来てくれればいいのですが。