むかしむかしあるところに村がありました。
ある日、その村の外れに薄汚い、小さな箱が置かれているのを誰かが見つけました。その箱には蓋がしてあり、上から灰色の紐で十字に縛られています。
しかし村の誰に聞いても、その箱を置いた覚えはありません。村人は不気味さを感じました。しかし、怖くて誰も中を確かめられません。
その時、ちょうど通りかかった旅の僧が箱を見るや「これの中身を見てしんぜよう。万が一のことがあるといけない、皆は遠ざかっているように」と言いました。村人はちょうど確認をしてくれる人間が来てくれたことを幸運に思いながら、言う通りにそこから避難しました。
その後しばらくすると僧は村長のところに言いました。「あの箱の中には『恐ろしいもの』がある。誰も近づいてはならぬ」と。
その言葉はあっという間に村に広まり、村人は恐怖します。村にそんなものがある。どうすればいいか、村人は僧に相談しました。すると僧は言いました。「しばらく私がこの村に滞在して、『恐ろしいもの』から守るための祈りを捧げよう」と。
その日以来、僧は毎日その箱の前に行き、お経を読むようになります。彼が言うにはそれを鎮めるにはそれには幾らかのお金が必要というので、皆でお金を出し合います。さらに村長はそのための僧が出て行かないようにと毎晩もてなします。この村は決して裕福ではありませんでしたが、『恐ろしいもの』が出てきて災厄を及ぼすことにはかえられません。
そして一月後、僧は言いました。「ああ、私はこの村から去らなければならない」。
当然村人は必死になって止めます。すると僧は「なら、私がその『恐ろしいもの』ごと箱を持ち去ろう」と。それには相応のお布施が求められましたが、もうあの『恐ろしいもの』の箱がなくなるということで、金を出し合いました。
それを受け取ると、僧は箱を持ち、去って行きました。
そして村人は安心しました。もう『恐ろしいもの』は去ったと。
数日後、もとの村から離れたある村の外れ。その僧は箱を開け、空だった中身を確認すると再び紐を締め直します。
そして誰にも見られないように気をつけながら、その箱をにやりと笑いながら村の外れに置きました。
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さて、『恐ろしいもの』とされている「箱の中身」は何でしょうね。ま、『恐ろしいもの』を『タブー』を言い換えると色々思いつくのではないでしょうか。
例えば表現の範囲において、とか。
ちなみにこの箱の話は、伊集院光がラジオのフリートークでたまに言う話(記憶では心霊系の話で出てきたような)を念頭に置きつつ自分で勝手に解釈して、物語風にしてしてみました。そのような元ネタがある感じなので、以前書いたヤツみたいにカクヨムに投稿するのはやめておきました。