カドカワとはてなが組んだ小説投稿サイト「カクヨム」が先日オープンしました。
しかし、オープン当初から色々な意味で話題になっています。初日に話題になったのは以前富士見ファンタジア文庫のスレイヤーズ全盛期にドラゴンマガジンなどで著名だった作家さんが契約関係のことについて書いたり、それを追うようになんかどっかで見たようなペンネームの人が、その人の今の立場からの視点で書かれたように見える作品が投稿されていたりしたこと。とはいえこれらはその時に注目を集めるものでありましたが、カクヨムというシステムに大きく影響を与えたか、というとそうでもないと思います(まあ執筆の方向性で「あ、こういうのいいんだ」と多くの書き手に認識させてしまったところはあるかもしれませんが)。
しかし現在、ネットで別のところで色々問題と言われているところが発生しているという声が挙がっています。自分もちょっと使ってみて、試しに一作テストで(過去のブログネタの焼き直しですが)投稿して思ったことなどありました。
そのいくつかのうち、今日はある点に絞ってその問題、そしてこれからも起こりうる問題について書いてみることにします。
- カクヨムにおけるフォロ爆・★爆問題
- 評価システムの崩壊スパイラル
- コンテストの存在
- はてな互助会と同じ問題を抱えたカクヨム
- カクヨムにはてブ互助会が入り込む可能性
- CGMサイトの抱えるジレンマ
- 真の問題は目立たない作品の読む機会がさらに奪われること
- しばらくは改善を期待して見守りたい
カクヨムにおけるフォロ爆・★爆問題
ネットで色々なところを見てみると、現在カクヨムのシステムに対しての問題点を指摘する声が挙がっています。
そのひとつに「フォロ爆・★爆問題」というのがあります。
これはどういうことかというと、まずカクヨムにはそれぞれの小説や作者アカウントをフォローするという、SNSなどでは普通に存在するシステムが存在します。しかしこれ、フォローをすると相手に通知が行くのですが、そのお返しという感じでフォロー返しをする人が出ます。それを利用して、フォロー返しを期待したのかフォローしまくる「フォロ爆」が発生し、そのため一部フォロワーが千や万単位になった人も登場したようです。
とはいえ、これはTwitterなどでフォロワー数稼ぎのためによくある手法で珍しいものではありません。しかしながらカクヨムの場合それに付随する問題を抱えていました。
評価システムの崩壊スパイラル
カクヨムには評価システムとして★があります。これは作品の評価システムで★の数にかかわらずプラス評価となるものなのですが、ここでフォロ爆と同じように相互に★を入れ合ったと思われる行為が発生してしまいます。つまるところ、★が作品の評価システムとして正常に機能しなくなるという現象が起きてしまったわけです。
その問題を複雑化させてしまったのが、ランキング。まだこれらフォロ爆・★爆が起こった時にはまだランキングが実装されていなかったのですが、そのまま★の数が反映されると、当然★爆を行われたアカウントが上位に来てしまいます。つまりランキングも評価システムとして正常に作動しなくなるわけです。
ただ、ランキング実装前に運営もその対策を行い、迷惑な違反が確認されたものに対してのBANが行われました。
とはいえ★爆の影響かそうじゃないかを完全に判断することは出来ず、今でも最初の頃に目立った作品がランキングで目立ってしまい残ってしまっています。もちろんランキングに載っている作品が全部★爆でそうなったというわけではありません。しかしこのことにより現在のランキングは「★爆で得た先行じゃないか?」という疑惑が全作品につきまとう可能性を与えてしまいます。
さらに悪いことに現在のところランキングが一番作品を目立たせるためのものであり、そこに載るのと載らないのでは閲覧機会に差が出てしまいます。最初に何らかの手段で目立ちランキングに載った作品が目立つことで★を重ねる一方、序盤で目立たなかった作品が「出来の善し悪しにかかわらず」追いつけないという現象が発生している可能性が高いです。そして目立つことで★を重ねればさらにランキングに載るけど逆もまた然り、のスパイラルが起きていると。
これはもちろん★爆だけではなくて、ランキングシステムを実装することにより避けられないことなのでしょうけど。昨年ニコニコ動画のマリオメーカー絡みでもちょっと騒動になりましたね。
コンテストの存在
そこでさらに問題を複雑化させていたのが、オープン前から募集していた第1回カクヨムWeb小説コンテストの存在。
このコンテスト、それぞれのジャンルで賞金書く100万円と書籍化が確定というものなのですが、その対象となるのが「2015年12月25日(金)~2016年2月28日(日) に応募」をしたもの、そこから「読者選考によるランキング上位作品(4/7まで)が、編集部による最終選考へエントリー」されるという方式です。つまりランキングの上位になることが、まず第一次選考の前提なわけです。
しかし前述のようにランキングに載る作品が目立ち、逆にそうじゃない作品が目立たないという固定化を招いてしまっています。そして途中で作品を中断して引き上げて締まっている人も出ている模様(2/28までに少しでも書いて連載中状態にしておけば対象になったけど、その続きを書かずに撤退するという感じ)。
ついでに言うと、現在新規投稿してもすでに投稿期間は終了しており、このコンテストの対象にならないために、新規投稿が停滞してしまっている(様子を見て次のコンテスト待ちか他の投稿&応募先にしようという心理が働いている)という可能性もあります。これは新規立ち上げたサイトにとってはマイナスのように思います。まあ現状では書き手より読み手を増やすべきなので、書き手の抑制される状況も悪くないかもしれないですが。
ほかにも色々出てきている点があるのですが(主に広報による露出の差に問題や、投稿作そのものの是非など)きりがないのでここでは割愛します。
はてな互助会と同じ問題を抱えたカクヨム
つまるところ、評価が相互につけあえるシステムが、本来の評価の指標を崩してしまっている、という感じですね。
しかしこれ、デジャヴを感じた人もいるのではないでしょうか。そう、これははてなブログ及びはてなブックマークでも最近よく言われている「はてな互助会」問題と非常に似通っているので。
いわゆるはてな互助会、もしくははてブ互助会というものは、その内容の如何にかかわらずはてなでブックマークをつけあうことによりはてなブックマークの新着に載りやすくなるという点が問題とされています。つまり、ここでいうはてなブックマークと、カクヨムにおける★によるランキング問題は同じ性質をかかえてしまっているのです。それにより、互助システムに参加していない人の投稿が目立たなくなることまでも含めて。
もちろん以前書いたようにこういった互助会システムはやがて自然崩壊する仕組みと考えますが、その時までに放置すると場が修復不可能なほどに荒れまくってしまうという結果もありえます。
カクヨムにはてブ互助会が入り込む可能性
そしてまだ顕在化はしていないけど、カクヨム自体も同じ、ブクマ互助会の問題を抱える可能性が高いと言えます。つまり、注目を集めたい人同士がはてなブックマークのアカウントでブックマークを互いにつけあい、はてなブックマークに掲載させることで目立たせるという手法がカクヨムの投稿作でも行われないという保証はありません。実際カクヨムの小説情報の項目には、Facebookのシェアボタンやツイートボタンと並んで、ブックマークボタン(カウンターつき)も表示されているわけですから。
ですがカクヨム内部のシステムであった★とは異なり、はてブは(一応)外部サービスなわけですから対策が及びません。ただ、互助会についてはいろいろ言われながらもはてなから特にアクションが起きているわけではないので、そのまま放置され、アニメ・ゲームの新着がカクヨム投稿作で埋まる、なんて可能性もゼロではないと思われます。もしそうなると互助会の問題をカクヨムに輸入した形になるのでしょうかね。
CGMサイトの抱えるジレンマ
このように、現在のカクヨムの評価システムは正確に作品の出来を反映されているかというと、疑問符が残るシステムになっています。
ただこれはカクヨムだけが悪いというのではなく、このようなユーザーが参加して評価をしあうようなサイト、いわゆるCGMサイトではどこでも起こり得る問題です。大手で個人認証までしているようなところ、例えば食べログなどにおいてさえ、プラス評価でもマイナス評価でも工作を行う余地があるくらいですし、Amazonの★も同じく。ゲーム系とかだともうズタズタになったところもありますし。
だいぶ前ですが書いたので以下に。
真の問題は目立たない作品の読む機会がさらに奪われること
ネットでもそれ以外でも知名度の差というものを一律にすることは不可能ですし、自分としては多少はそのスタートラインに差があるのは問題ないと思います。知名度を得ている人だってそれまでの実績とも言えますし、営業として見た場合、そのような知名度も当然必要になるわけですから。ただ、それが過剰に行われることにより、本来評価されるべきである作品を読む機会、目立つ機会までも奪ってしまうのだとしたら、それは大いに問題があると言わざるを得ません。
しばらくは改善を期待して見守りたい
とはいえその問題は運営側の人も大半は把握していると思いますので、そのうち何らかの対策が練られると思います。とりあえずは、見られる機会を可能な限り均等にして、良いのに埋もれている作品を出来る限り無くすことでしょうね。そのためにはまず読み手を増やすための施策が重要でしょう(具体案はそのうち書くと思います。まあ既にあちこちから出ていますが、とにかく読み手をもっと引き込む仕組みを作る必要があるなど)。
まだ始まったばかりで、スタートがこの手のふらつきを見せたけどあとから改善されたWebサービスも少なくないので(まあそうでないのも多数あるけど)、これからしばらくはまだ期待したいと思います。