空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

都内でトイレットペーパーなどの買い占めが起こった原因は何なのか

仕事も終わりかけ、何か書く気力も湧いてきたときに起きたのが件の大地震。私の家は東京でしたが、積んでいた本とCDは崩れはしたものの身体に影響はありませんでした(せいぜい地震酔いによる目眩くらいかな)。ただ、最初認識出来なかった災害の大きさが、その後徐々にとんでもないものだと実感することになります。改めて被災者の方にはお見舞い申し上げます。上の方にはてな経由の義援金のバナーをつけておきますので、よろしかったら(ここではなくてもよいですが)募金ご協力お願いします。
さて、本日の話題は、その災害関連のことで。

都内のスーパーやコンビニからなくなっているもの

地震から10日になろうとする本日、東京でも影響が起きています。いろいろありますが、数日経った今目立つのは、コンビニやスーパーなどから特定の品物が消えていること。これは店に行けばいつもはぎっしりと棚に置いてあるものが、ここ数日間ないものが多数あるので誰にでもわかります。

では、東京ではいったい何がなくなっているのか。ニュースとかではトイレットペーパーとかガソリンとかよく言われていますが、実際にどうなのか、自分の移動可能範囲ではありますが、少しばかり自転車であちこち回って調べてきました。その結果、なくなっていたもの、品薄になっていたもので、私の気づいたものは以下のもの。

・ティッシュペーパー
・トイレットペーパー
・ミネラルウォーター(主に2Lサイズ)
・乾電池
・カセットコンロ用ガスボンベ
・紙おむつ(特に赤ちゃん用)
・カップラーメン
・カロリーメイトなどの簡易食
・パン
・米

あと、私は確認してなかったのですが、生理用品も不足していると後から聞きました。一番ないのはガソリンもないと言われていますが、自分は車を持ってないのでよくわかりません。ただ2〜3件通りかかったガソリンスタンドは閉まっていました(1件だけ、消防署、警察、役所車両専用になっているスタンドがありましたが)。ただ、これらすべて綺麗さっぱりなくなっているというのではなく、食料品、飲料に関しては週末はすでに棚に若干量並んでいましたし、ミネラルウォーター以外の飲料は正直多くのところで手に入ります(自販機も売り切れてなかったし)。あと、コンビニやスーパーではない店、たとえば酒屋などに行けば水割り用の水や米がきちんとあったりしました。あと、乾電池も充電式のセット(2000円くらいの)はわりと見かけました。

必要そうなものがあって必要なさそうなものがなくなっている?

しかし、これらを見て不思議に思ったことがあります。というのは、買い占めが起こっているものの中には、災害時に品薄になるには向いていないものが多いのではということ。さらに災害時に品薄になっているのでは、と思ったものが普通に棚にあったことです。

自分がコンビニやスーパーに行くまで、こういった時なくなっていると思ったのは、主に非常食や避難用品の類。つまり緊急事態が生じた時、持ち出せるような食料や簡易品といったものだったのですよね。たしかに予想していたものの中には完全になくなっているものもありましたが、前述のように電池は(充電しておけば最低1回は普通の電池と同じように使える)充電式のならありましたし、ウェットティッシュもアルコール入りの消毒タイプならコンビニにもありました。またドラックストアにも寄りましたが、絆創膏、消毒液、包帯などの救急用品は見たところ揃っていたと思われます。なかったのは花粉症用のマスクくらい(余談ですが、数日前に放射能を防止するとデマが流れたヨウ素入りうがい薬も品切れとかじゃなかったのは少し安心したり)。非常食になるようなものの類も、カロリーメイトなどこそなかったにせよ、缶詰、チョコレート、クッキーなど非常時に携帯食として使えるものは普通に置いてありました。ちなみに今、そこで買ってきたチョコクッキーを今、ポリポリと食いながらこれを書いています。さらに不思議なのは、2リットルサイズのミネラルウォーターはなくなっていても、持ち運びの出来やすい500mlのほうはわりとあったのですよね。

さらに、飲食店では節電のため看板の電気が消されたり、深夜営業がなくなっていたりはしたものの、行けば普通にいつものものが食えました。ライス大盛りも可能でしたし。あと八百屋や魚屋、肉屋といったところもほとんど平常運転でしたね。

つまり、自分が想定していた、非常時に必要であろうものと、実際になくなっているものに大きな差があるのです。
そこで思ったのは、買い占めをしている人はそもそもどのような事態を想定して買い占めをしているのかということ。


現状、実際に起きる可能性は度外視して、実際に買い占めが起きるとしたら、どのような非常時が頭の中にあるのか。いくつかの可能性について考えてみました。

1、家が壊れ、避難所に避難しなければいけないような事態
2、断水、長期的な停電
3、計画停電の影響など、短期的な停電
4、物資の供給減少

ここに、前述のなくなっていたものを照らし合わせてみます。
まず、一番謎だと思ったのがトイレットペーパーとティッシュペーパー。1のようにどこかに避難する事態が生じたとき、たしかにこれらは(特にトイレットペーパーは)必要でしょう。ただ、よく考えればわかるように、そんな非常時にせいぜい一人が持ってゆけるのはせいぜい数ロール。もちろん非常時で他の用途にも使いうので、普段より性別、年齢などによって使用量は変化しますが、少なくとも10日で5個も10個も使い切るのは、よほど無駄をしない限りないのではないかと。

そして4の物資の供給が滞っているといっても、西日本での物流は比較的通常通りですし、数ヶ月間流通が滞る可能性は低いと思われます。そもそも、トイレットペーパー、ティッシュペーパーがなくなる根拠は全くありません。たしかに支援物資などで被災地に多くのものを送る必要があるでしょうが、それでも都内の使用量を圧迫するほど、とは思えません。

水も同じです。ミネラルウォーター2リットルの重さは約2キロ。それを1のような避難時に数本持ってゆくことは不可能です。なら2の事態というのもありますが、これも本気で対策をするなら買い占めに走らずとも水道が通じている現在、対策が十分出来るはずです。たとえば毎日風呂の水を抜かないで貯めておく(断水時にもトイレを流せる)、やかんや鍋などに水を貯めておく(終わったらそのまま風呂などに利用)、湯冷ましを作っておく等。どうしても断水の不安があるなら、ポリタンクでも買ってきてそこに水道水を貯めておく→風呂の水にを毎日繰り返しておけばいいのではと思ったりします。

食料もです。謎だったのが牛乳の売り切れ。言うまでもなく牛乳は腐りやすいもので、停電して冷蔵庫が使えなくなればまず他の飲料より腐る可能性が高いものです。今日の東京は暖かいので、もし冷蔵庫に入りきらないくらい買い占めていた人がいたら、そろそろ困る時間ではないかと。そういった意味ではパンも同じです。カップラーメンもです。まず避難時の食料としては非常にかさばります。さらに電気が通っていない時はお湯を沸かすこと自体難しいため、非常時には必ずしも向いていません(まあ緊急時は、水で40分かけてもどせば食えるようにはなるらしいですが)。逆に言えば、お湯がわりと簡単に手に入る状態なら、カップラーメン以外の食料も手に入るはずです。

つまり、全部が全部とは言いませんが(オムツなどの赤ちゃん用品や、食事補助剤などの介護用品は切らすと困るものがありますからね)、冷静に考えると買い占められて不足しているものの多くでは、実際には買い占めたところでそんな役にたっていないものが多いような気がするのです。

必要ないのに行われる買い占めの心理

では何故、このようなものの買い占めが起こるのでしょうか。

買い占めの問題については、すでにネット上でも意見や考察が書かれています。

■参考:買い占め脱出のヒマ人は無視しろ - フリーライター宮島理のプチ論壇 since1997 - BLOGOS(ブロゴス) - livedoor ニュース
■参考:Twitter / 飯塚真司: 何日か買占めの人を観察したら、一人のお年寄りとおとな ...

一般的に、お年寄りや主婦の方が多いというのは私も(見た範囲は少ないですが)感じました。ただ年齢や性別のリテラシーという問題に直結させることは出来ないでしょう。単純に日頃から昼間、品物があるうちに買い物をする人というのはこの層なので(会社勤めの人は日中いないだろうし)。あとガソリンは別に主婦や老人が中心とかいう話でもないだろうし。

では何故、こういった人たちが買い占めるのか。もちろん原因は個人個人で違うでしょうが、おそらくはこれらが「震災地で、避難所などに避難している人にとって足りていないもの」と報じられていることがあるでしょう。家が危機にさらされ、身一つで出てきた方々にとっては、このようなものは必要にもかかわらず不足しているというのがおそらく現状だと思われます。それらの物資が足りないというメディアなどの情報が、そのまま物資があるはずの東京に伝わって、同じような事が起きると勘違いをしてしまった人が発生しているのではないでしょうか。
さらにそれにより品物が少なくなる棚の状態を見て、品不足の不安を証明してしまい、さらに呼び起こすという悪循環が起きており、それが品不足になっている、とも考えられます。

ただ、これだけでは説明できない疑問も残ります。というのは前述のように、探すところを探せば一応見つかることや、余っているもの(特に食料)も多いこと。つまり特定の物資はないけど、結構余裕を感じるのですよね(まあもちろん流通や販売の人が頑張ってくれている可能性も高いですが)。となると、もしかしたらこの買い占め自体必要や不安にかられての本気ではなく、中には買い集めのゲーム感覚でやっているような人も中にはいるのではないかとも思えるのです。実際、新製品が出たときに買い占めてヤフオク出すような人みたいなのはいるのですし、そういう人が混じっていても不思議ではないかもしれません。

どちらにせよ、本当に直近で必要のないものを買い占める必要は、私にはあるとは思えません。それを買い占めるくらいなら、風呂に水を貯めておき、リュック一つ分の非常持ち出し袋の用意をしておいたほうがよっぽど有益だと思われます(非常持ち出し袋は1年後でも使えるし)。

被災地への救援物資の送り先

さて、あくまで私の予想ですが、このままいけば今月中〜4月頭には東京では物流もほぼ回復し、こういった買い占められていたものも回復してくると思われますが、その時に山積みになっている物資を見て我に返る人もいるのでしょう。そうならないために、その前に本当に必要かを説いて、目を覚ましてあげた方がよいでしょう。

ちなみに現在、赤ちゃん用品、高齢者用品、生活用品、飲料水の新品を、東京都が救援物資として募集し始めましたので、ここにあるものを買い占められた方が近くにいらっしゃいましたらこちらに送ってはいかがでしょうか(ただし現状では食料品、トイレットペーパーは募集してないので要注意。くれぐれも必要とされているものだけを送る感じで)。

東北地方太平洋沖地震に伴う支援(救援物資の受け付け)|東京都



◆追記(3/21 17:30)
コメントありがとうございます。参考にさせていただき、本文で抜け落ちていた点があると感じましたので若干補足させていただきます。

まず、都内のコンビニなどでは「流通遅延のため」と書かれているものもあります。主にパンなどですね。また買い占めと関係ない雑誌類も、ガソリンの不足により現在2日に1回の便に減らされているところがあるようです。

たしかに、本文で書いたように買い占めに走る人もいるでしょうが、すべてがすべてそれにより起きているわけではない、というのは私も思います。ただ、どちらか片方がいつも通りというのではなく、両方の要因が(比率はわかりませんが)重なっての現状だと考えています。また、自我のためではなく、被災地に送るため、また近くの人へ配るという意図により買われている面もあるでしょう。というか多くの人にとっては独占ではなく、その要素は強いかもしれません(特に1日でも欠けたら困る赤ちゃん用品、介護用品とかは)。

よって、棚が空になったのには自我の悪意だけではなく、個人個人の心理における要因や、流通、生産などの経済的な要因が複雑に絡み合っている、と考えます。ただ、これを正確に把握するのは、それこそ落ち着いた後の社会研究などを待たねばいけなくなるでしょう。

本文の目的としては、それが善意にせよ悪意にせよ過剰な心理を持つ人に対して冷静になっても大丈夫、ということが広まればよいなという意図があって書きましたが、都民が悪意を持って行動に及んでいると見られるのは望むところではないので、このように追記として書いておきます。私も都民ですが、周りの人間で悪い人がそんないるとは思わないですし。