空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

既存広告が減っているのは広告主が「0円の広告」を手に入れたからではないか

テレビCMがかなりの勢いで減っているようです。

■asahi.com(朝日新聞社):日テレ・テレ東が三十数年ぶり赤字 CM落ち込む ※リンク切れ

これによると、スポット収入は前年同期より49億円減の470億円、タイムCMも年間39億円の減少を見込むと書いてあります。さらに新聞や雑誌における広告費も激減して、部数低下とのダブルパンチで新聞社、出版社の経営を直撃しているという話もよく聞きます。

さて、これは不況だから3K(交際費、広告費、交通費)のうちの広告費を削減したための影響、というのが主因だと思われます。しかし、ここまでの激減は同じく不況だった1990年代中頃でもなかったのではないでしょうか。では、何故こうなったか。ここで考えられることでぱっと思いつくのがインターネットの存在。

ただ、インターネットの広告はたしかに伸びてはいるみたいですが、急激に、というほどではないでしょう。実際、そこまで目立ってませんし、インターネット広告の伸びを表したグラフでも、上り坂ではあるけど、急激に、というほどではありません。しかし、インターネットの存在は、明らかに既存広告を脅かしていると言えます。それは前述のような数値にはなかなか出てこない「0円の広告」というものにおいて。

よく言われるインターネット広告というのは、おそらくですが既存のCMやら雑誌広告のように、代理店なりを通じてある媒体に出稿したものを指すのではないかと。つまり、ポータルサイトのバナー広告とか、アフィリエイトなどですね。しかし、ネット上ではわざわざ代理店に出したり、ほかの媒体(この場合は他のサイト)に出稿しなくても成り立つ広告があります。それは、自社のサイトでその製品を広告すること。そう、自分でサイトを作って公開すれば、極論0円で広告が出せてしまうのです。たしかにこれでもサーバ代、製作代、管理費などはかかります。しかしそれは既存の広告出稿費よりははるかに安いのではないかと。言ってみれば、出稿費と制作費のうち、制作費分しかかかっていないです。

個人がただ出しても、6hotな場合は多いですが、それなりに知名度のある企業サイトのアクセス数というのはバカにできません。それなりのSEO対策をしている企業ならば、企業名、製品名を打ち込めば上位に出てきますし、その関連ワードでも出てくる場合があります。うまくいけば、関連ワードであまり知らないような会社でも上位に出てくることがあります。

さて、この企業のアクセス数って殆ど公開してないのでわからないのですが、ちょっと名の知れたメーカーなら、月に100万くらい行っても全然おかしくないのではないでしょうか。これはネット上だけではなく、たいていの場合は製品にURLやQRコードが印刷されていたりと、外部からそのサイトに誘導する手段もありますしね(これが既存CMからの誘導だったら、その分の金はかかりますけど)。

しかし仮に月に数万でも、それはCM似比べてかなりの効果だと思われます。たしかにCMを見ている人数よりははるかに低いですが、その人達は自分の会社の製品の興味があって来たという、ただ流れているCMを見ている人よりは購買に一歩近い人なのですから。それに、CMの15秒よりもネットの方がはるかに製品の情報を伝えられます。それこそユーザーが見てくれる限り無限大に。

前述の通り、もちろんサイト運営に対しての経費はかかります。しかしここまで利点があって且つCMより安いとなると、やはり自サイトの方に重きを置く企業が出てきてもおかしくはありません。故に、最近の既存広告ではかなりのものにURLや検索ワードを表示して、サイトに誘導するようにしています。一番その余地がないCMでさえ、最後の2秒を使ってそれを出しているくらいですからね(雑誌なんかだとQRコードとかまでありますよね)。

しかし、既存広告から自サイトへ誘導し、ある程度のユニークユーザーを掴むことができるようになったサイトは、そこから先、既存広告に必要性を感じるでしょうか? CMの最後に検索窓を表示させているようなメーカーは、ある程度サイトが人を常駐させられるようになった時、出稿自体がほとんど必要なくなる可能性も考えられると思います。あってもプレスリリースで済むとか。昔はテレビにもその危機があったのか、URLの表示は2秒以内とか制限があったようですが、検索窓では2秒でも把握できますので、意味がなくなっています。現在増えているというパチンコのCMは、それが出始めだからあるのであって、そのうちポピュラーになり、自サイトに人を誘導できるようになれば、それさえも撤収するという可能性は否定できません。

じゃあ何がCMに残るのか、となると、おそらくはそういったサイトを見るという行為からほど遠い人対象ではないかとも思えます。つまりネットになじみのない高齢者。実際、ゴールデンタイムでも健康食品、器具系のものや通販が流れていますし。

そう考えると、将来テレビ現在の昼間ラジオ番組のように高齢者向けのコンテンツ中心になる可能性も否定出来ませんが、あと2年半後には、その高齢者tが一番切り替えに悩むのではないかと思われる地デジ完全移行が迫っています。今後5年間で景気にかかわらずCMは非常に大きな変化を迎える可能性があるので、注目してみると面白いと思われます。