空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

現在のネットにおけるコアユーザーは、非常に微妙な時期にいるのではないかと思う話

ネット上の時間進行は、よく早いと言われることがあります。たとえば3年同じブログをやっていれば、それなりに長いと言われるようにもなるみたいですし、20世紀からあるサイトなんて、かなり古参の部類に入ります。これは、インターネットの発展の速度が、技術的のみならず、内容的にも非常に速く発展したためというのがあるでしょう。故にインターネットが普及してたった10年程度しか経っていないのに、かなり濃い歴史が生まれているわけです。これは他の媒体、すなわちテレビや雑誌の10年でも、なかなか見ることが出来ないものかもしれません(特に近年では)。

しかし、それをふまえて考えると、今はネットの利用者的に非常に特殊な時代だと思うことがあります。


現在、ネットの主な利用者は20代〜40代くらいの世代でしょう。

■参考:「インターネット白書2006」で見るインターネットの現在(1)

しかし、この世代というのは、ネットの歴史を未来をふまえて考えると、非常に微妙な時代にいるのではと思うのです。というのは、この中間世代が生まれた時にはネットというものどころかパソコンでさえほとんどなかったのですよね。これは携帯電話も同じですね。いや、もうちょっと遡ればゲームもそうかもしれません。

私の場合、パソコンがなかった時代、エクセルもワードもなかったので、書くのは全部手書きでしたが(まあワープロはありましたが、リボン代が高かったのでそう多くは使えなかった)、今ではシャープペンシルもめったに使いません。携帯電話がない時代、いちいち固定電話で連絡をしあっていましたが、今では固定電話にかかってくるものは、まず勧誘を疑います。まあさすがにファミコン以前に何で遊んでいたかを思い出そうとすると、昔すぎて考えてしまうわけですが。まあ平行してプラレールやゾイド、ミニ四駆があったので、その系統でしょう。

このように、私の年代の周辺、つまり今の20代〜40代ってのは、そういったものがなかった生活というのを知っていて、これらの変化を経験しながら成長してきたのですよね。ただ、それは当たり前のように見えてすごいことです。特にパソコンや携帯におけるネットは、既存家電の進化の延長線上にない、全く新しいものだと言えるから。それはもしかしたら、情報が入ってくるという意味において、ラジオが一般家庭に来た時以来の衝撃かもしれません(テレビは発信者と受信者がいるという意味ではあくまでラジオの後追い)。これは今後よほど新しいものが出ない限り味わえない、特殊な体験をしてきたのではないかと思えるのです*1


こう考えると、それより上の世代、つまりすでにある程度歳を経てからネットの普及が始まりなじみがそちらのほうにある世代や、それより下の世代、つまり生まれた時からすでにネットというものが存在していた世代とは、ネットというもののとらえ方に違いがあるようにも思えます。

現在の政治的中心にいる50〜60くらいの人からネット害悪論が唱えられ、それへの反発が行われますが、もしかしたらこの2者のネットというものに対して受けている印象は、全く違う可能性があるのです。たとえば、ネットそのものが社会にとってどれだけの立場を占め、個人生活に必要なものかということ。もう少し言えば、それを統制できるか統制できないかも。おそらく今後、ネットなしで社会が成り立つ可能性はかなり低いでしょうし、多くの若い人はそう思っているでしょう(個人の使用だけではなく、社会的インフラとか含めて)。しかし、それでもないのを経験してきた世代では、実際に使わなくてもいけるとなります。その印象の差が、各種規制論などにも影響しているように思えるのです。

ただ、それを言葉にするのは非常に難しいです。それこそ自分でもその主観を説明するのは難しいし、相手がどう思っているかもわからないので。(追記:あえて言えば、「ただの家電のひとつ」と「生活&社会における必需品」という感じかも)。そして、今の論では上記の違いをふまえずに、同一線上で語られているようにも思えるのです。当然、もっともそれは個人次第で、高齢者でもネットを若い人と同じように捉えている人もいれば、若い人でも高齢者と同じように捉える人もいるかもしれませんが、傾向としてはそういうこともあるのではないかと。

ですので、青少年のネット規制問題の委員会にそういった世代、すなわち青少年や20代、30代で話に参加できる人がどれくらいいるのか知りたいところはあります。もしそういったネットにそれなりに馴染みのある世代を加えていないとすると、前提自体が違っている可能性があり、下手をすると過度な規制という負の遺産を残してしまう可能性があるので。*2


そういった意味で、今は本当に微妙な時代にいるのですよね。おまけにコア層が、その過渡期のユーザーだと。そして自分もその世代ですが、ある意味大変で、そしておもしろい、且つ重要な時代に生まれたのだなと思います。

これから先、時間が進むにつれてネットがなかった時代の人がいなくなってゆくことでしょう。すると、ネットに対してのとらえ方が、少しずつ可能性というのはまたあるかもしれません。問題は、それまでに規制などによって、良い方向での発展を止めてしまうかどうかですが。


◆追記
今日のは、やや先日の児童ポルノにマンガ、アニメ含むかどうかの問題をふまえて考えたつもりですが、もしかしたらこの問題は国内だけではなく、海外のマンガ、アニメユーザーにも意見を聞いて、未来的にどうすればいいかというのを、マンガ、アニメ好きの立場から世界的に考えてゆく必要もあるかもしれないなんてことを思いました。いろいろな意味で。

*1:ゲームももちろんそうですが、これはある意味それまでのアナログ的な遊びを受けついでいるところがあると思うので。TRPGとか、極論ジャンケンとか

*2:津田さんが参加している音楽配信問題やらコピワン問題のところでも、同じことが言える可能性があります。