『少年サンデーコミックグランプリ』と言っても、ほとんどの方はご存じないでしょう。これは約15年前くらいに少年サンデーにあった新人賞ですが、普通の新人賞と違うのは、その作品が受賞すれば、そのまま連載開始という、かなり思い切りのよい賞だったのですよね。つまり、応募作は読み切りではなく、連載を想定した初回を送るという感じだったみたいです。
さて、この賞は6回程度行われたようですが、その短い期間、というか第1回、第2回にとんでもないものを生み出した、ある意味すごい賞となりました。その受賞作とは……
『帯をギュッとね!』河合克敏 (第1回大賞)
現在、『とめはねっ!』を連載中の河合先生のデビュー作。この作品が第1回目で受賞、そしてそのまま連載開始となります。今でも記憶しているファンが多いこの作品を生み出しただけでも相当の価値があるでしょう。ちなみにこの賞については、河合先生も「今はもうないんだけど、またそういうのやればいいのにね。「新世紀コミックグランプリ」とかいってね」と仰っています。
『うしおととら』藤田和日郎 (第2回入賞)
さて、この第2回目の受賞者はなんと藤田和日郎先生で、受賞作もあの『うしおととら』。もう説明する必要はないのでは。あのとらとの出会いの回が、受賞作です。ただ、当時すでにあさりよしとお氏などのアシスタントをされていたはずですので、かなり実力はあったのでしょう。
『音吉君のピアノ物語』林倫恵子 (第2回大賞)
こちらは上の二つと比べると知名度は低いかも知れませんが、個人的には印象に残っている作品です。ストーリーはピアノで少年マンガ的なサクセスストーリー(というとちょっと変だけど)という、それまでになかったもの。音楽系マンガはサルまんにあるように表現が難しいためほとんどなく、あっても少女漫画程度でしたからね。ただ、王道的なスポーツやバトル、恋愛ものの中で、ちょっと変わった感じでおもしろかったです。たしか月刊少年サンデー→週刊少年サンデー→月刊という流れだったかな(当時は『今日から俺は』もそうですが、この行き来がかなりあった)。ちなみに当時からピアノの現役の先生が描くマンガということで紹介されていましたが、現在でもピアノの先生をされているようです。ちなみにピアノ指導者協会のサイトでは、先生の伝記Webコミックが読めたりします。あと、単行本は絶版ですが、コミックパークで入手できるとのこと。
少年サンデーの黄金期だったなあ
ちなみにこれらのマンガが連載されていた時期は、『らんま1/2』も中期、『H2』も初期(その前の『虹色とうがらし』もやっていた)、『YAIBA』がまだ連載中、『拳児』連載中、久米田氏の連載デビュー作である『南国アイスホッケー部』も連載開始と、タッチやうる星やつら以降のサンデー以降での最盛期だったと思います。もっともジャンプも600万部超時代の黄金期と、少年誌全般がとても盛り上がっていた時期だったのですね。
ただ、この第1回、第2回の印象が強すぎたのか、この後が続かず(いや、何か受賞していたはずなのだけど、記憶にないし、ネット調べても見つからない)、その後終了してしまいました。でも、今だからまたこういった思い切りのよい賞が復活すれば、良い人材が集まるのでは、と思います。そして黄金期のように、また後世に残る名作が出てくればいいなあと。