空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

幼なじみがメインヒロインになりやすい理由

マンガ、小説、映画、ゲームなど、物語に主人公とヒロインがいればその間には必ず「関係」というものが生じます。それは同級生だったり先輩、後輩の間柄だったり、はたまた主従関係だったりいろいろ。

その中で、昔から多くの作品で「幼なじみ」*1というのがあります。しかしこの幼なじみというもの、ギャルゲーやらハーレムマンガ(女の子がいっぱい登場して主人公を取り囲むタイプのマンガ)などでは、メインとなるヒロインがこれになることが昔から多いように思えます。マンガなら古くは『タッチ』、最近だと『名探偵コナン』『鋼の錬金術師』(とりあえず近くにあったマンガ)など。ゲームなら『ONE』や『ToHeart』などからずっと。

さて、幼なじみがメインヒロインになりやすい理由は何故でしょうか。


回答の一つとして、こんなエントリーがありました。

幼馴染み系の話が好まれるのは (情報元:ふぇいばりっとでいずさん)

これもたしかに言えると思います。しかし、もうひとつ物語的な要因があるように思います。

結論から先に言ってしまうと、「その物語では書かれていない『過去』を、幼なじみという関係であることにより読者に想像させるから」だと思っています。
多くの作品では、物語はキャラクターの人生のある期間のみです。高校の3年間だったりとか、1学年だったりとか、はたまたギャルゲーでは数日なんてのもありますね。
しかし、キャラクター的の設定的には、それが人間である以上はその期間以前も存在していることになります。しかしそれまでにどういうことがあったかは、(物語的に意味合いをもつもの以外は)描かれないことが多いです。それは読者が想像するしかないでしょう。しかし、その想像の余地が一番広いのが幼なじみと言えます。言うまでもなく、幼なじみは幼い頃からの知り合いなので、そこから現在までのつきあいの中でのことが色々想定できますから。
幼なじみの場合は物語本編でもそれを意図的に使われます。例えば幼なじみと主人公の話が描かれる時には、ほぼ100%過去の回想が出てきますね。それによって上のリンク先で書かれているようなノスタルジックなものとかが描かれると。

つまり、物語のスタートラインでは全部のヒロインがが同じ位置にいるのではなくて、幼なじみというのは「(物語には描かれていない)それまでの期間」というメリットをすでに持っているのですね。ですので、幼なじみはそのアドバンテージの分、メインヒロインになりやすいのだと考えます。
ちなみに、義理の姉や妹とか昔から暮らしてきたヒロインも、広義では「幼なじみ」の範疇に入ると思います。同じ理由で、「昔引っ越して最近再会したヒロイン」よりは「昔からずっといっしょにいたヒロイン」のほうが、その期間の関係性を想定できる分、強いと思います(「With you」ってゲームがそんな感じだったっけ?)。


でも、幼なじみばかりヒロインにするわけにもいかないでしょうし、そういう場合にとれる方法もいくつかあります。一つは簡単で、幼なじみ、つまり主人公と過去から接点のあるヒロインを出さないこと。まあよくあるパターンですね。そしてもうひとつは、幼なじみを出してもその過去の関係をあまり描写しないことです。でもこれだと、必ずしも幼なじみである必要がないよなあって気もしますが。これらはゲームで多いですね。

でも、昔から関係している幼なじみを断ち切って、別のヒロインを選ぶという方法もありますが、どうしてもそれを書くと暗さが出てくるので、作品によってはそういうのは使えないことも多々ありますな。(この手の作品には暗さが似合わないものが多そうですし)


ちなみに今まではギャルゲー的なものを想定して書いてきましたが、実は漫画やアニメのような一本道のものでしたら、ゲームよりは簡単に幼なじみアドバンテージを回避する手段があります。それは読者にとって主人公と(幼なじみ以外の)ヒロインの出会いを最初にしてしまうというもの。つまり「ボーイ・ミーツ・ガール」を幼なじみ以外とさせてしまうってな感じ(そもそも幼なじみとボーイ・ミーツ・ガールはしにくい、というか出来なさそう)。それだとキャラの関係性に関係なく「読者にとっては」その一番最初に出会ったヒロインが目立ちますので。『らんま1/2』とかもキャラの一人、右京が幼なじみだったけど、先にあかねと出会ってたしそんな感じかな?まあほとんどの作品では、途中登場したヒロインと結ばれるってのはないですし。

ちなみにこれも無視して他のヒロインとくっつけることもありますが、そうすると読者から「えええっ?!」という驚きの反応が返ってくることもあります。
でも、それが悪いとは言いません。お約束を打破しても面白ければそれでいいのですし。ただ打破してバランスを崩したら元も子もありませんけどね。


まあ、過去からの「時間」を想定させる幼なじみが強く、それと最初に出会うパターンにしても、読者にはその二人を見ている「時間」が長いからそう思うわけで、物語としては「時間」というものが強いのかなあと思いました。*2現実はそうとは限らんとは思いますが。多分。

*1:昔、同性は「幼馴染(み)」、異性だと「幼なじみ」と表記するとしてあったサイトがあったので、それに従わせていただきます。たしかに字面的に後者だと柔らかくなってそれらしいのですよね。

*2:『君が望む永遠』というゲームが昔ありましたけど、あれも水月というキャラと主人公が恋人になったきっかけや、恋人になっている期間の話がまたあれば印象がだいぶ変わったのかもと思います。