空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

『もやしもん』の主人公のように実際にあんな菌が目で見えたらどうなるかをSF的に考えてみる

最近『もやしもん』人気ですね。アニメ化もされてますし。

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このマンガの人気が出ている点は、農大で起こるさまざまな研究、そして事件の面白さの他に、菌が肉眼で見える主人公、沢木の見える形での菌のかわいさにもあると思います。ちなみにぬいぐるみがオークションで出される騒ぎがちょっとあったみたいですが、ぬいぐるみつきの限定版が来年出るので無理にヤフオクで買う必要はないとのことです。
で、それを見て「自分にもあんな菌がみえたらいいなあ」と思った人は、細菌研究者ならずともいるかもしれません。作中でも研究者の長谷川がもし血を吸えばその能力が映るのだったら、遠慮無く刺す、みたいなことを言ってますし。

じゃあ、実際我々にそれらが見えたらどうなるか。きっと沢木みたいに菌と会話をして楽しい生活が送れそう……というわけではないと思います。実際には。それはたとえ、沢木の見えているようなかわいい菌でも同じように。


その理由は、SF短編マンガ『アフター0』にあります。まずひとつ、「大いなる眠り子8 “妖精伝説”」より(再編集版4巻)。

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これは、死んだ父の魂が宿ってしまったことで、知性を持つ赤ん坊となったあきお(「大いなる眠り子」シリーズ)が、ある日不思議な生き物を見ます。それはシナプスの関係で「子供にしか見えない生き物=妖精」とわかります。そしてそれを何故か集めている(捕獲している)大人が。それを助けてくれるように妖精から頼まれるあきお。その人もその大人は見えないはずの妖精を見られる人間でした。曰く、大人になったら自分を無視した妖精が許せないから捕まえて復習すると。
しかしラスト、その妖精を解放したあきお達は、いっぺんにその妖精に囲まれます。

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混乱するあきおとその大人。しかしもうひとりの大人である由美子(あきおの母で、魂の主の妻)は見えないので何が起こっているかわからない。そして妖精はお礼を言って去ってゆきます。
その話しのラスト、なんで大人は要請が見えなくなるのかという由美子の問いに答えるあきおは、大人が日常生活でそれらの妖精が見えたら、その状況に混乱すると。人間は見たくてもいいものを長い時間をかけて神経から取り去ってしまったと。そしてそれが自然の適応だと。
最後は「由美子、見えすぎないのがいいんだぜ」と言って終わります。

ちなみにもうひとつ、この見えすぎるために混乱してしまった社会の例は「ほうき星翔ける街角」(再編集版1巻)にもあります。こちらは、毒がないのに浮いている物体「ゲルフラウ」が現れたことで、世界中の経済が大パニックになってしまうという話(実はこれはさわりで、もっと深い話しですが、ここでは割愛)。


要はこれと同じことで、もし沢木以外の人間がいきなり菌が見えるようになったとしたら、まわりじゅうをあれが何万、いや何億、何兆もあれが埋め尽くすのですから、いくらかわいいといってもそれがどんなことになるかは容易に推測がつきます。原作見る限り、視界が遮られることもあるみたいですし。まあ他のマンガにあるように1つくらい自分だけに見えるものとかならいいのですけど、何せ菌ですからねえ。

じゃあ何で沢木は大丈夫なのか、というと、おそらく生まれたときから見えていたのがあ足り前だったので、そういうものをして脳が適応してしまったのではないかと思うのです。そして逆に、菌がない状態に寂しさを覚えていた感じでしたし(4巻)。
まあそんなことを考えてみたのですが、こう考えると沢木の能力ももともとは人間が持っていたのに、取り去ってしまった能力かもしれませんな。


★追記 2014/12/11
今は再編集版がさらに文庫になって出てます。こちらはまだ新刊で市場にあるはず。
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