空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

2011年にテレビアニメの構造ががらりと変わる可能性

今、『瀬戸の花嫁』をDVDで見ていたりします。つか原作があの名作にして怪作『余の名はズシオ』や『アーティファクトレッド』の人とは最近までまったく気付きませんでした(絵柄違いすぎるし)。しかしギャグの破天荒さが萌えでマイルドになっていて(それでもかなり突っ走ってますが)いい感じのマンガに、演出の巧さが引き立ってかなり面白い作品です。ちなみに木村太彦作品にについてはまたそのうち紹介してゆきたいと思います。♪1月〜は正月〜で……の替え歌の続きがわかる人はお楽しみに。

[asin:4757508808:image:small]  [asin:B000QEIV60:image:small][asin:B000QUCU3Y:image:small][asin:B000TCU4G4:image:small]瀬戸の花嫁 第肆巻 初回受注限定生産版/CD付き [DVD]

そんなわけで、ということでもないですが今日はアニメの話題。

現在のアニメ業界では、構造的な問題があるとされています。特によく言われているものでは「製作現場に資金が流入しない」というものがあるでしょう。

■参考:アニメ制作現場から悲鳴 「生活保護を受けたり、ホームレスになった人もいる」

しかし、ここ数年テレビで放映されているアニメの本数はそれ以前と比べて莫大に増えています。Wikipedia-テレビアニメによると、在京民放キー局だけでも今期は51本とのこと。これでも

何故こうなるのかというと、一言で言ってしまえば「アニメ業界の構造」と言えるでしょう。この部分に関してはよく手塚治虫の罪と言われていますが、それについては愛・蔵太の少し調べて書く日記さんでかなり詳しく分析されています。というかこれについて書こうとしたら、すでに数段階上のレベルで調べられていたので。

「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か
「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か・その2
「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か・その3(補足)
アニメ『鉄腕アトム』の制作費神話について・1:宮崎駿の手塚治虫批判テキスト全文その他
アニメ『鉄腕アトム』の制作費神話について・2:萬年社の「三十万円」
アニメ『鉄腕アトム』の制作費神話について・3:アニメーターは儲かる職業だった

ともかく、現在でもコストを(アニメーターの給与削減などで)切り詰めないと、製作費用が足りないというのは、業界の慢性的な問題でしょう。

さらにこんな話まで聞きます。

・アニメ産業に関する公文書

スポンサーから1本あたり5000万出ている制作費が、なんだかんだで現場に着く頃には800万になっているそうです。

これには驚き。半分ならまだわかるとして、1/5以下です。一部で「アニメはバブルだ」と言われているという話も聞きますが、それはこういった上からの側面で見た場合のことだなあと思ったりします。
ちなみにこれ、実はアニメだけではなくて、現在のテレビ番組全般に言えることなのですよね。すなわちテレビ制作を自社で行うより制作下請けに丸々出してしまうというもの。『発掘!あるある大事典』の捏造問題の際にも、下請けの料金の安さが取り上げられていましたね。

しかも、近年は供給過剰などの理由により収益源となるDVDの1作品あたりの売り上げも下がっていると言われています(といってもアニメはまだましな方で、洋画DVDはさらに落ち込みがひどいと言われていますが)。ですのでこれから先、今のままだとアニメ業界はますます苦しい状況となるでしょう(そこで供給が減ってバランスが取れればいいんですけど、そうなるまでに業界が持つか……)。

こんな困難な状況なのにもかかわらず、何故アニメはテレビで放映されるのか、という疑問が浮かんできます。それはおそらく、テレビアニメ以外の手段がないからかと思います。たしかに他にOVA、つまりオリジナルビデオアニメ(ちなみに今ならODAとでも言うのか?なんか政府開発援助みたいだが)、それにネット配信という手段はあります)。しかし、前者は今の供給過多ではよほど知名度があるものではないと売り上げが見込めないと思いますし、後者はまだまだオリジナルで作成して採算が取れる段階にさしかかっていないでしょう。そうなると自然と見てもらえる、そしてその後の関連商品を買ってもらうための手段としては、テレビアニメくらいになってしまうでしょう。
おそらくはテレビアニメでないと、スポンサーから金を引き出すのも難しいのではないかと思います。


このような構造のアニメですが、実は数年後にこの構造に大幅に変わる可能性があるのではないかと思ったのです。それは2011年7月の「アナログ放送停波」。

なんかいろいろ言われているアナログ放送停波ですが、おそらく現在のテレビ保有者が100%そちらに移行すると思っている人は、よほどおめでたい人でないといないでしょう。おそらくいくらはの人はテレビを見なくなる可能性があります。それは自分がそうしてもいいかなあとも思っていますし、こんなデータもありますので

地デジ完全移行で約2%が「テレビを見るのをやめる」

まあ上のはインターネット内の調査で2%ってことなので、現実的にはここから増えるか減るかは予想がつきにくいです。というか現時点では正確な予想はできないと思います。おそらくそれが当てられる人がいたら、株で少しくらい儲けることが出来るのではないかと。まあ国民のほとんどが持っているテレビが増える要素は減少することは確実でしょう。それが0.02%(テレビ保有数を約1億人として2万人強)か、それとも20%(2000万人強)かはこれからの動き次第でしょうが。

しかし、もしここで後者の20%になってしまった場合、つまり、テレビの保有数が下がってしまったとき、テレビアニメにも大きな変化が訪れるのではないでしょうか。
テレビアニメのビジネスモデルの多くは、テレビで露出することで、その関連商品を買ってもらって採算を取る方式です。しかしその露出が力を弱めた場合、すなわちテレビアニメを見る絶対薄う合減少した場合、今まで続いていたこの方式が崩壊してしまう可能性があるのではないでしょうか。

たしかにアニメを見る層はテレビに対しての欲求が強いので、真っ先にデジタルに移行して影響がないとも言えます(専門性が強くなって、テレビのアニメが増える可能性もありますね)。しかし、テレビの力が弱くなるということは、それへの資金流入も減るってことになりかねません。もちろんアニメも例外ではないのと思います。ただでさえ(開発元に流れる)資金が少ないのに、それに輪をかけたら……

とはいえ、逆に増える可能性もあったりします。例えば買い換えにより地上デジタルではなくてケーブルテレビやCSをついでに導入する家庭が増えたら、アニメ専門チャンネルが地上波と同じ位置づけとなってアニメの本数が増えたりとか。

それにテレビ以外のメディアが急発展する可能性もあります。有力なのはネットでのアニメ試聴でしょうか。それはGyaoみたいなインターネット放送だったり、課金による動画配信だったり。しかし、何も発展せずにテレビとともに市場が急速に縮小してゆく可能性もあります。
ただ、今のままだと結局供給過多による緩やかな衰退がどのみち始まるような気がしますので(というかもう始まってるよね)、これは紹介再編をはかるチャンスとも言えるのではないかと。

まあ、どんな形かは分かりませんが、数年後アニメの歴史上でもかなり大きくアニメ市場の様相が変わっている可能性は非常に高いと思います。デジタル移行が成功したらしたで、またテレビアニメも変化すると思いますしね。まあどの方法であれ、全員に適正な金が行き渡り、よい作品が出来るようになればよいと思う次第です。


□参考

アニメ業界が使い捨てにされない作戦はあるか?

景気が良くなると地上波のアニメが減る?