Wikipediaの国別編集回数ランキングに見えたもうひとつのもの

先日、Wikipediaの国別での編集回数が多い項目のランキングが発表されました。そしてその結果が話題になっています。

痛いニュース(ノ∀`):日本のWikipedia編集回数ランキング、アニメ・漫画が上位独占

さて、このランキングだけを見ると、社会系やスポーツ関係のものが多いアメリカやフランスに対して、日本はアニメやマンガ、芸能の項目、はてはAV女優一覧が出ていることが話題となっています。

さて、これの示すものはなにか。本当にこの項目順位のように、日本のネットユーザーはアメリカやフランスと比べて、アニメや芸能系のほうに興味が行っており、そちらで挙がっているような社会系のものに対しては興味が薄いのか。いや、少なくともこの結果がそれを示すものとはなり得ないでしょう。何故か。それはWikipediaの仕組み上、このランキングはイコール興味の結果となり得ないからです。

Wikipediaを使ったことのある人なら、項目の上の方で「このページは荒らしや編集合戦などのため、方針に基づき編集保護されています」というものを見たことがある人は多いのではないでしょうか。これは文字通り、その項目に注目が集まって編集合戦になった時に、その編集が凍結されることです(同時に、ある一定の人のみが更新できる「半保護」というのもあります)。はい、ここでもうお気づきの方はいらっしゃると思いますが、日本のWikipediaでは、社会系のものはそういった編集が行われ、保護状態になるものが多いのです。

例えば、アメリカで6位の「Wii」は半保護になっています。あと、上のリンクのコメントに書いてあったのですが、政治家の「野田聖子」に関して見ると凍結が長く、2007年10月13日からずっと変わっていないために、現在消費者相になっていることでさえ記されていません。

■参考:保護されているページ - Wikipedia

ざっと上のリンクを見た限り、法律系、政治系で議論が巻き起こりやすいものが入り込んでいます。つまり、このランキングに入るのは、原則としてそういった保護、半保護が行われていないものと推測されるのです。

とはいえ、もちろん海外でも、このような保護(protect)は行われています。ですので、海外でもこういった問題はあると思われます。

■参考:Protected pages - Wikipedia, the free encyclopedia

つまりこのランキングは、注目されている項目を調べるものとして意味を持つのかというと、大いに疑問があるのですよ。だって、激しく編集が行われたものはこのように保護、半保護となりますし、その隙間を縫ってランクインしたものなのですから。


では、何故ここで日本だけこのようにアニメやマンガ系のものが出てくるのか。これはたしかにアニメなどの項目が日本におけるWikipediaの成立過程で組み込まれていたからとも言えます。おそらくはその要素もあるでしょう。しかし、そのほかに要素がある可能性も否定できません。すなわち、諸外国ではランキングで出ているような社会的なものに対して「保護」が行われた可能性。これについては2種類の考え方が出来ます。つまり、基準は諸外国と同じなのに、社会的なものに対しての編集合戦が激しく行われたから、保護になることが多かったということ。これの場合、このランキングは全く逆で、日本は世界よりも社会的なものに興味がある人が多く書き込まれたが故に保護になり、編集が減ったということになるでしょう(保護されている項目をよく調べないと何とも言えませんが)。

そしてもうひとつの可能性は、日本は保護の基準が諸外国より厳しく、すぐに凍結されてしまうということ。そしてその網から逃れたものが、多く編集してもあまり気に留めないようなアニメだったりマンガの項目だったということ。つまり、ランキングが示してしまったのは、その国の興味のある単語ではなく、その国の編集方針。そして日本は、そういったものに対して保護がなされてしまうので、もう一つの柱であるマンガやアニメなどが浮き上がってきてしまったということになります。*1

これはどっちが正しいとは、統計をとっていないためにわかりません。しかし、保護一覧ページをざっと見た感じでは、話題になった社会的なものの大国保護が行われているようにも思えます。このアンケートの結果は、そのような編集的な疑念を巻き込むことになってしまったのではないでしょうか。ましてや、Wikipediaのこの手の問題は前から言われていますし。

■参考:404 Blog Not Found:群衆の責任、いずこ - 書評 - ウィキペディアで何が起こっていのるか


Wikipediaはたしかにここの項目は便利ですし、あったほうがいろいろ助かります。しかしながら全体として見る時、あまり過信をしすぎると、とんでもない過ちに繋がる可能性は十分あることを理解しなければいけないでしょう。

もっとも、「自分で考えて真偽を判断する」というのはネットにおける情報すべてに言えるのでしょうが。ネットの向こう側にいるのは自分と同じ「人間」なのですから


ウィキペディアで何が起こっているのか 変わり始めるソーシャルメディア信仰
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*1:もしかしたらそれは海外も同じで、その代わりに浮き上がる項目としてアニメなどがなかったので、平凡なものになったという可能性はありますが。