「せどり」は本当に儲かるのか

「せどり」という言葉をご存じでしょうか。

Wikipedia-背取り

背取り(せどり、「競取り」とも)は、書籍・雑誌などを古書店から安く購入し転売する行為。本の背表紙を片っ端から見て本を選ぶことからこう呼ばれる。これらを行う者は古書店バイヤーであったりあるいはインターネットオークションやamazon.co.jp(以下、アマゾン)などで転売し利鞘を儲けにする目的で古書店めぐりをする人を指す。

その本を売って利益を得られるかどうかという目利きが重要である。

まあ転売の一種ですけど、値上がりが確定的なものを買ってきて売るのではなくて、仕入れが安く販売されている点が違うところですね。私がブログというものを始めた2004年頃、ブログランキングサイトなどを見るとこういったせどりを扱うサイトがわりと上に来ていたことがありました。そしてもちろん今でもあり、複数のサイトには月に数十万単位という儲けがある、と書いてあります。

では、今から私がこの「せどり」を始めたとして、儲かるのでしょうか。まあ儲けると言っても1円からでも利益が出れば儲けですので、ここは労力を費やした時間が、同じ時間800円のバイトをした時を上回るか、という仮定のもとに考えてみましょう。そして出た結論は「おそらく無理」です。ちなみにこれはほかの転売系にも言えることも多いですが、とりあえずそう考えた理由を書いてゆきます。

すでにせどり市場が飽和状態

もし、この市場がまだ未開拓で、やっている人も少ないようなところだったら話は違いましたが、すでに専業へと発展するケースまであらわれるくらい広まっているます。ということは、ここで始めたとしてもノウハウを持っている先人にかなうはずはなく、結局売り上げを伸ばせないのではないかと。それにたとえノウハウを持っていたとしても、この市場が本当に儲けられる、魅力のある市場ならば、この後もさらに新規参入が続々と入ってきて、魅力的な売り物を得るチャンスを減らしてゆくでしょう。余談ですが、ブックオフとそれまでにあった専門的要素の強い古本屋はケンカしないとも言われています。というのは、扱う性質が全く違って、故に古本屋の店主もブックオフに自分お店で売るものを安く仕入れられないかと探しに来るからだとか。そういう目利きのプロまでライバルになっているのです。
しかし思うのですが、「せどり」を広めるという行為は、ライバルを増やして市場価格を下落させるという矛盾している行為のように思うのは気のせいでしょうか……

転売材料の減少

最近では、読み終わった本をブックオフで売らないで、自らヤフオクやAmazonマーケットプレイスで売る例も出てきています。つまりここでは昔せどりが入っていた領域がすっとばされているわけですよね。さらにそれらはライバルとも成り得ます。

■参考・ネットの普及で「ブックオフ」にも転機か?

このように、せどりで仕入れできる本(当然CDやその他のものも)がどんどん減っているということです。上のライバルの増加と併せて、これも問題ではないかと。
おまけに、最近ではブックオフがとうとう前年比成長を割ってしまったというニュースがありました(ソース見失ったので、気づいたら追加します)。ということは、買い取り値を安くするか、100円本を値上げしてくる可能性もあります。どちらの場合もせどりには不利ですね

発送作業は多くこなせない

ここでは時間的側面から。
ヤフオクをやったことのある方ならわかると思いますが(私も以前やったことあり)、発送作業は意外と手間がかかります。よほど流れで作業できるようにならないと、1時間にこなせる量は20冊に満たないかと(郵送してくれるところにもっていく手間も含みます)。
さて、ここでトータルで1時間に800円以上、8時間働くとして1日に6400円以上の利益が得られるか。正直数日内の1日ならともかく、毎日は苦しい気はします。何せ元手が安いものですし。それに100円で仕入れても、売れなければそれは0円で、損する可能性もあるということをお忘れなく*1

ちなみに商売経験のない人が売買をすると、それを仕入れた時の値段のことがすっぽり抜け落ちて、差純利益で計算するとたいしたことがなくても売り上げ額が高ければすごい儲かった、と思ってしまうこともあるようですので注意しましょう。あくまで得した金額は、売上から仕入値を差し引いた額です。


そんなわけで、個人的には「素人が今から専業に変わる手段として初めても無理」という結論に達しました。まあ、うまくいっている人もいるみたいですが、そういう人は見えないノウハウなどがあるのでしょう。儲けている人から見れば、私の意見は鼻で笑うものかもしれませんが、ここではそういった成功した人だけではなくて、全体として見ているので。

まあ、基本的に儲けを考えずに趣味の範囲で小遣い稼ぎ程度にやるならいいのではないでしょうか。目利きもゲームみたいで楽しそうなところもありますし、損しても元手が安値本なので数万円に満たないでしょうし。ただ、個人的には会社を辞めてまでそれに専念するのは、将来性も含めてリスクが高すぎるんじゃないかなあと思います(兼業ならばともかく)。

ただ、ネット上に限ったことではありませんが、この手のうまくいった話の成功談は大々的に報じられても、失敗談というのは滅多に語られることってないのですよね。ですのでこの手の儲け話が出てきたときには、成功した数名の話よりも、失敗した人数とその人たちの話に耳を傾ける習性をつけたほうがよいと思います*2。まあ、ほとんどの場合においてやるもやらないも自己責任だと思いますので、それは個人の判断で。私は石橋を叩いても安全ロープをつけながら渡るような性格なのでやめておきますけど。


さて、ここで終わってもいいのですが、それだけではなんとなく面白くないのでもう一歩踏み込んで考えてみましょう。それは「そもそも何でせどりが出来る環境が生まれるのか」ということ。これは転売にも言えることですが「安く売る人」と「高く買う人」がいてこそ成り立つものです。では何故「安く売る人」がいるのか。これはブックオフなどの新古書店ですが、要は価値を見抜く点(人材の調達)を無視しても、回転を重視しているからでしょう。昔はそれでも捨てるよりはとブックオフに持ち込まれる例も多かったですが、前述のようにネットが普及してきた最近では、個人でヤフオクなどに出せる状況になってきました。となると、やはりせどりの出来る環境はだんだんと縮小傾向に向かっている気がします。
しかしそもそもその本の供給量が多ければ、値段も上がらずに「高く買う人」が減少して、最初から市場が出来ていないはずですが、実際それが出来ています。これは「需要が高いのに供給されていないため」ですが、これは以下を見る限り、必ずしも欲しい人が多くてもそれを上回る分を供給できないという現在の書籍流通上の問題もあるみたいです。

■参考:売れているのに重版されない、の何故?

こう考えると、せどり含む転売というのはこういったひずみの中に生まれるものなのかもしれないと思ったりします。

*1:ちなみに1円で売っている本もあるみたいですが、この時は支給送料と実送料との差額で利益を得ている場合もあるみたいです。逆に買う人はここに注意して、表示されている金額だけではなくて、総額でかかる金はいくらいになるのか頭に入れておきましょう。

*2:ちなみに悪徳商法の場合は、引っかける方がそこのリスクを「チャレンジ精神」とか「ここが勝負時」とかで誤魔化してくるので注意が必要。