去年あたりから「ニコニコは衰退した」というものをネット上でよく目にするようになりました。もっともこれは最盛期の2009年頃以降からずっと言われていたような気がしますが、プレミアム会員は上昇していました。しかし今年二月、プレミアム会員がはじめて減少に転じたというニュースがありました。
この理由については色々な分析がなされています。そして理由もコンテンツ面、システム面いろいろあるでしょう。 しかしながら一番の理由は、「新しい人が入ってきてないせいではないか」、正確には「アニメ以外で新しい人が入ってきていないせいではないか」と思われます。
それはコンテンツ、システム面の両方でありますが(あと収益面も)、長くなるので今日はシステム面の理由について書いてゆこうと思います。 また、ニコニコ動画とニコニコ生放送は色々なところでユーザー層や文化圏、そしてもちろんシステムが違うところがありますが、今日は動画のほうを主眼に置いて語っています。
- プレミアム会員優遇の反面無料会員が受けるマイナス
- YouTubeとの比較で負けてしまう
- マイリスト、クリップの上限問題
- スマホ等最新のネット技術対応に遅れている
- 投稿者も減るスパイラル
- とりあえずユーザーをシステム面でつなぎ止めないと
- ニコニコ動画に打開策はあるのか
プレミアム会員優遇の反面無料会員が受けるマイナス
まずニコニコ動画では、無料会員と月額540円のプレミアム会員があります。プレミアム会員は無料会員に比べて色々な特典がありますが、主には以下の通り。
・画質の向上(低画質モード回避) ・通信速度の向上 ・途中再生が可能に(無料会員では不可能) ・クリップ枠の増加 ・広告表示をOFFにできる ・生放送の優待入場
ですが、これを逆から言えば「無料会員はこれらが出来ない」ということになります。 つまり画質は低く、通信速度は遅い、さらには途中再生が出来ず、クリップ枠の上限も低く、広告が表示されるといった状態。
もちろんこれらはプレミアム会員になれば解決出来ます。しかし、ニコニコを知って最初からプレミアム会員になるという人は極少数でしょう。ほかのあらゆるWebサービスと同様、無料会員で試してよければ有料会員に移るというのが王道です。特にネットを始めたような子ども、学生は、持ち金的にも決済手段的にも(特にクレカを持ってないので即時に決済が出来ないのが大きい)容易く課金出来ない環境であり、無料会員を余儀なくされるケースは多いでしょう。
しかし、その無料会員の時点で多くのユーザーをロストしているのではないかと思わます。そして今時ニコニコを新しく知って入ってくるのは若いユーザーがメインでしょうから、殆どの新規ユーザーを。
YouTubeとの比較で負けてしまう
説明するまでもなく動画サイトとしては巨大な存在としてYouTubeがあります。そしてこちらもニコニコ設立当初から存在するためによく比較対照になりますが(そもそも原初はYouTubeの動画を引っ張ってきて字幕つけるようなシステムだったし)、無料で使える状態で比較すると、明らかにニコニコのほうがあらゆる面で不便になってしまっているのです。
特に画質と通信速度は一目見てわかりますが、しかし一番大きいのは途中からの再生が不可能なこと。これは見たいシーンがある場合わざわざシークを待たなければいけませんし、かなりストレスになります。かなり長い動画の場合それは顕著で、途中離脱する人がいても全く不思議ではありません。 さらに出だしの広告も加えて、動画を一つ見る際にも無料会員はYouTubeに比べてかなりストレスが溜まる仕様になってしまっているのです。
今でも動画サイトがニコニコ動画にしかないものであればそれしか選択肢がなかったから見たのでしょうが、現在は多くの場合ニコニコ動画と同時にYouTubeにもあげられている動画が相当数あります。ならニコ動の特徴である字幕コメントを求めなかった場合、どちらを選ぶのかとなると一目瞭然でしょう。
マイリスト、クリップの上限問題
しかし上記のもの以外でもかなりユーザーというか再生数を削っているのではないかと思われるものがあります。それはマイリスト、さらにはにこにこ静画のクリップ数の上限。 ブックマーク的役割を果たすマイリスト&クリップですが、前述のように無料ユーザーには上限があります。そして自分を含め使い切ってしまった人は相当数いるのではないでしょうか。 そうなると、気に入った動画&静画があってもクリップ出来ず、その部分でのリピートが失われます。まあどうしても見たいものなら検索かけるでしょうけど、そこまでじゃないものも多いわけで。 ちなみに自分はたまーにマイリストを見直しますが、その際にも2007~8年頃にマイリストに入れた動画を懐かしみながら見る、という役目になってしまっています。
しかしこれはユーザー側の問題だけではなく、投稿者の問題のほうが大きいと思われます。前述のようにリピートが失われるということは、再生もその分減ることになります。また、長い歴史の中でマイリストやクリップ数が評価システム的として受け止めている人もいるでしょうが、それが上限によって機能しなくなっている(もしくはプレミアムという限られた人のものだけになっている)のです。 最近、昔に比べて動画のマイリストや静画のクリップ数が減ったと思っている投稿者は多いかもしれません。もちろんそれは閲覧者の絶対数が減ったこともありますがもうひとつ、もうマイリストやクリップが上限に達してしまい、それを出来ない人も多いので、前に比べて品質下がってるとかおもしろくなくなったというわけではないでしょう。むしろ自分とか整理のためにマイリスやクリップ消してますし。
スマホ等最新のネット技術対応に遅れている
そもそも、ニコニコ動画がスタートした2006年にはまだスマホは存在せず、ネットと言えばPC文化圏でした。しかしその後スマホが爆発的に普及しPCを凌駕していますが、生憎ニコニコはそちらの対応に乗り遅れた感があります。とりわけ公式アプリは正直なところ使い勝手があまりよろしいものではないというのは度々指摘されています。 さらに10年経っているわけで、PCにおける閲覧も周辺環境の変化も相まってかなりガタが生じているところがあります。 ちなみに自分のやっているブログでたまに貼り付けていたりしましたが、現在のところフレームも動画もhttpsに対応していないので、https化したページで貼り付けることはないでしょう(ついでに言うとAMPも対応してないけど、これはWordressテーマなどの問題でもあるので)。 余談ですが、「共有」の「ブログサイトに貼り付け」でいまだに「はてなダイアリー」なのですよね。
まあ普及しまくっているChrome、さらにスマホOSであるAndroidを抱えるGoogleが持つYouTubeと、ただのいち動画サイトのニコニコを対応面で比べるのは酷でしょうけど、やはり不利となってしまうのです。
先日、10月に大幅改良がされると予告がありましたが、これがどのくらいのものになるかは注目です。
■ニコニコの新バージョン「niconico(く)」2017年10月、開始|ニコニコインフォ
投稿者も減るスパイラル
さてこのような状態になっていてユーザーが減るとなると、再生数も減ります。そうなると有償無償問わずユーザーもなるべく多くの人に見てもらいたいというほうが大半なわけで、再生数の多いYouTubeに移ってしまうことになります。これには再生数以外の収益の問題もあるでしょうが。
■参考:ニコニコ動画のゲーム実況はもうオワコン。大手実況者は既にYouTubeシフトでニコニコではチャンネル活動がメイン。 - ゴトーのブログ
そしてユーザー数と投稿者の減少がスパイラルとなると。 これは生放送ももちろん同じで、ひいてはニコニコチャンネルも同じです。見ないものがなくなったら、そりゃプレミアムも解約するでしょうし。
とりあえずユーザーをシステム面でつなぎ止めないと
Webサービスの世界はたいていの場合一強多弱になるので、巨人YouTubeと比較すればニコニコ動画がこのまま衰退してゆくのは必然でしょう。
それを防止するには、まずはシステム面から「将来プレミアムに繋がるかもしれないけど、今は無料にいることしかできない層」に対して、引き留めておく、ニコニコ専門ではなくても、せめてYouTubeと平行して使ってもらい続けるようにする策が必要ではないでしょうか。 特にクリップ上限とかは、閲覧者も投稿者も得しないものなので、即時排除した方がよいでしょう。通信や画質についてもサーバの問題があるにせよ、今の状態だと途中離脱がかなり大きくなる可能性が高いので、どうにかすべきでしょう。
ただそのあたりは問題に気づいていても、既存プレミアム会員が「じゃあ無料でいいや」となるのを防止する為にやりたくてもできないのかもしれません。ただそれを解決しないとスパイラルで結局プレミアム会員離脱率が増えるでしょうし、難しいところでしょうから、かなり戦略を考えないといけないでしょう。
まあこれをやって、やっとシステム面ではYouTubeと並ぶ感じなのですけど。
ニコニコ動画に打開策はあるのか
なんかこう書いてくるとニコニコ動画はもう衰退し続けるしかない印象ですが、必ずしもそうとも限らないと思います。というのは現在YouTubeにおいても増えすぎて経年のことによる問題があるので、その改善をしたものを提供出来ればまたチャンスはあるのかもしれません。小回りの利く、YouTubeにはしにくいようなものはユーザー主導、コンテンツ制作などの企業主導両方で(とりわけKADOKAWAの力を生かせば後者で)まだ発掘出来ると思うので。
少なくとも日本ではトップクラスの一般動画サイトなので。困難な道のりとは思いますが、どの独自性を再発見出来れば、注目を浴びる可能性はないとも言えないと思います。