空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

携帯小説の未来はアドベンチャーゲームの手法が切り開くかも

さて、最近良きにつけ悪きにつけ携帯小説についての話題がよく取り上げられます。でも、ネット上でそれについて聞かれる評判はあまり良いものとはいえないものが多い気がします。しかし実際携帯小説を見てみると、作品の出来以前の問題として、本における小説とは異なりかなり制約を受ける部分が多いような気がしました。そこで思ったのが『携帯小説は既存のような小説を書いては向いていないのではないか』ということです。それは既存のように小説を書くと、あまりにもマイナスになると思われる点が多いのですね。ちょっと以下に思いついたことを書いてゆきます。

※追記:ちなみに見たのは、アプリを使わない携帯小説サイトで、使用したのはDocomoのN903iです。

■読み返しが非常に面倒
本、携帯問わず、読み返したい時にそのページを正確に覚えていることはあまりないでしょう。たいていは指でめくって前後を補正しながら見つける感じです。しかし紙をめくるならすぐできるその処理も、現在のインターフェイでは「前に」「後に」「ページ指定ジャンプ」などを何度も繰り返さなければいけないというわずらわしさがあります。特に推理小説など伏線を張っているものはこの「読み返し」がわりとあるのですが、携帯の今のインターフェイスではこれがめんどくさいのです。

■ルビがない、読みにくい
携帯小説は携帯電話の仕様上ルビが振れません。ですので携帯青空文庫などでは文字の後に括弧でルビをつける方式になっていますが、これが読みにくいのですよね。となればこの読みにくさをなくすためには、最初から難読文字は使わないとなります。さらにラノベである別名を読ませる方法も多用は出来ないのではと思います。

■横文字
既存小説は縦読みですが、携帯の現在の主なインターフェイスは横読みです。まあこれは慣れもあるでしょうし、アプリで立てに読ませることも出来ると思います。

■機種依存文字
小説の中には、生涯そこでしか見ないんじゃないかと思わせるような漢字や記号があります。ものによっては造られた文字も。しかし携帯には表現できる文字に制約があるので、必然的にそれらは使えないことになります。まあそれを画像にして乗っけるという荒技もありますが。

■禁則処理
携帯小説を見てみると、禁則処理が出来ていない、つまり”、”や”。”が文章の先頭に来ることがあるのですよね。しかしこれってベタテキストの場合防ぎようがないのですよね。何故かというと、画面サイズが携帯によって違うので、横に表示できる文字の限界も異なってしまうため、手動で処理出来ないと。故に文の頭で句読点というのがよく見られますが、あまり美しくはありません。

■文字が詰まる
携帯小説では「改行が多い」というのがよく言われます。しかしそれは、ある意味仕方のないこととも思えました。というのは、画面の使用上改行しないと読みにくくてしょうがないのですよ。携帯は横12文字表示くらいが多いですが、これはたった36文字程度の文が2つで、画面のほとんどを埋めてしまうのです。画面が文字でいっぱいになった時の読みづらさは慣れていないせいもあるでしょうがかなりものです。しかもスクロールするから目が痛い。
それを防止するためには、空白改行をこまめに入れないといけないのですね。ですので、あの無駄とも思える改行の多さはある意味必然でもあるのかなと。だけどそれにより、今度はスクロールが多くなったり、文章が途切れ途切れになってしまうと。


こんなふうにあまりにも本に比べて欠点が多いので、少なくとも現在のインターフェイスでは、いままで文庫で出されていたような小説をそのまま書いて載せるには、不向きだと思えます。
それならば、携帯電話は小説として向かないから、次第になくなってゆくのか……と思っていましたが、これを見てちょっと考えが変わりました。

ケータイ小説について

そうか、たしかに携帯電話は既存の小説の手法を生かすには向いていない。だけど既存の小説みたいでダメなら、本があるのに無理に対抗したりしようとはせずに、携帯小説独自の手法を模索すればいいんですよね。「ハイパーリンク」「バックライト」など、たしかに携帯電話ならではの利点ってのがありありますし。


それで、どんなものが向いているかと思って考えてみたら、「アドベンチャーゲーム」の手法が使えるのではないかと。つまり、ワンボタンで一文が表示されて、ワンボタンで次に行く形式(よくわrかあない人は、絵のない「かまいたちの夜」みたいなのを連想してください)。しかもこの方法だと、読み返しもアドベンチャーゲームと同じスクロールで出来そうですし。
しかも、はてなキーワードみたいに、分からない言葉にハイパーリンクを合わせて、注釈的なこととかも出来るかもしれませんし。
まあ、作家は当然それに合わせる必要がありますが、それは新しい分野を切り開く以上当然ではないかと。
つか、それならアドベンチャーゲーム作れとかいうツッコミはなしで。やはり文字だけを読むって楽しさもあるので。


こういうように、携帯小説というものは既存の小説と被るものではなく、まったくべつのルートを行くことでその可能性を広げるのがいいと思ったりしました。

でもとりあえずは、書いてくれる人を探すところからかも。でもたしかに面白そうだからやってみたいなという人はプロにもいるのではないかと思います。私もなんか書いててちょっと面白そうだと思ったりしましたし。……書いてみてもいいかもなあ……