空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

限定版コミックの存在を書店の人はどう考えているんだろう

ちょっと都市部の本屋に行ってきたのですが、そこでワゴンに入った製品が「50%引き」とか書いてあったのですな。それがトレカだったら数年前(トレカバブルの時代)にはよくあった光景なのですが、そうではなくてコミックなのでちょっと驚きました。が、よく見てみるとフィギュアとかのついているいわゆる「限定版」なのですね。しかも発売したのはおそらく1年前ので、アニメ化がされたけど、放映が終わったもの。

ご存じの方も多いでしょうが、日本には「再販制度」というものがあります。(Wikipedia-再販売価格維持契約)でもってコミックも書籍ですから、これの通り本屋さんは入荷した本が売れなければ「返本」することになります。これ、その仕入れ価格が返還されるのはもちろんとしても、送料までも出版社の負担となるらしいですね。昔から本屋さん関係のブログを見ていると、入荷数をかなり絞られているというのを見ますが(特にタイアップ系で人気が出ると予想されるもの)、まあ出版社ももし外したらかなりの損失になるということですね。なんか本屋も出版社も大変だなあとか思うわけです。ちなみにコミックヨシモトが休刊らしいですが、コンビニで大量に入荷していたように見えたけど(近くの本屋にはまんがタイムきららキャラット置いてないのにこっちは数冊あった)、それの多くが返品したとなり、その返本率低下の余地が見えないとなると、早期撤退した理由もなんとなくわかります。

ですが、このような限定版は再販対象外のもの、例えばフィギュアだったり、DVDだったりがつくために、再販の対象から外れることが多々あります(というかほとんんどこれかな?)。その場合、この本はもし売れ残っても返品が出来ません。そして前述のように一定期間を過ぎたら損切りモードになるわけです。書籍は原則再販制度により割引販売できませんが、これは法律上は書籍とはカウントされないので値引きも可能なわけですね。
余談ですが、『ハリーポッター』は、書籍なのに買い取りとなっているようです。なのでハリポタを売る本屋があれだけ盛り上げに必死なのはそういうわけで。


で、その限定版ですが、昔だったらそれ自体が珍しかった上、人気作しか限定版にしなかったので、売れ残ることは希だったと思います。ちなみに有名なところは『ぱにぽに』『エレメンタルジェレイド』『鋼の錬金術師』などスクエニ系が多かったですが、これは広く浅いファンを持つマンガよりも、熱心なファン(マニア系)を持つもののほうが限定版への購買意欲が高かったというのがあるでしょう。

■参考・今年、コミックの限定版を多く出している出版社はどこ?

しかし、最近はあまりにも限定版が珍しくなくなったのもあるのか、発売からだいぶ経っても余っているものってありますよね。具体的な名前は言えませんが、一部の書店員さんにとっては、呪いたくなる名前もあるのではないでしょうか。まあ私はゲームの方が詳しいのですが、ゲームでは限定版でもワゴン行きってのけっこうありますよね。あと限定版しか出してないのとか。

でも、それ以前に一般書店ではあまり限定版って入荷しないんですよね。それはやはり、一般書店で扱うにはリスクが大きいからだと思います。それは前述のようにこういったものは熱心なファンの方が購買意欲が高いので、一般書店ではそういった客が来ないリスクと売れ残りのリスクを同時に抱えてしまうからだと思います。


だけど、この「限定版」の存在について、書店の人はどう考えているのでしょうか。これも仕入れられる書店と仕入れられない書店でまた話は変わると思いますが。仮に仕入れられる場合は、売れ残りのリスクを押しつけられて、且つ通常版(返本可能)の売り上げが減る要素が出来てしまい(限定版を中古で手に入れようとする心理が働く可能性がある)まずいと思わないのでしょうか。それとも一応売り上げが増えるので歓迎しているのでしょうか?そして入荷できない本屋の場合、仕入れられる書店との差別化が行われてしまうことで、不服に思わないのでしょうか?ちょっと事態が複雑で、一般人からは見えない部分があります。

特定店舗でついてくるイラストカードとかもそうですが、今までは原則どこで買っても同じだったコミックにも、格差が出来てきているような気がします。もちろんプラスアルファの要素は、読者にとっては嬉しいことなんですが、それで後々なんかの形でしわ寄せがきたら本末転倒ですので(しわ寄せの形はいくつか思い浮かびますが、それは今日は割愛します)。


一度、書店の人にこういう再版対象外になる限定版の存在を歓迎しているのか、それとも歓迎していないのか聞いてみたいところです。


■参考:限定版はシリーズ全体を殺すか | ゲームミュージックなブログ
 ……ちょっと前の文章。これはゲームの場合ですが、マンガの場合にも言えそうな気がしたので。

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◆追記
今日も眠いのですよ…( ̄_ ̄;さんにトラバ打っていただいたので見に行ったら、かなり詳しく書いていただきました。

実はコミックの限定版には二通りあります。

非常に参考になりました。ありがとうございます。
後者のはカトゆー家断絶さんでも関連して引用されてましたが他にもネギま19巻などですね。

■関連:Forest Field そもそもネギまの限定版が少なかった理由

ちなみに限定版を通常版に対して絞られるというのは、ゲームソフトも同じことがありますね。こちらも固定した数ではなくて、あらかじめ発注に対して○%と決まっている例もあるようで。それで泣く泣く限定版の予約を断ってしまうお店もあるようで(限定版を仕入れるために、売れる見込みのない通常版を仕入れたら赤字になるので。しかも再販対象外で返品も出来ません)。

「アイテムの良し悪しと値段のバランス」を見られている時期、というのは確かに言えますね。限定版に関しては出たときに出来が悪いと、ニュースのネタにされますし。(ex・『スクールランブル』のフィギュアなど)