空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

どこでもドアが崩壊させる世界

 ドラえもんがらみの面白いエントリーがありました。

 ■どこでもドアの値段は?(リンク切れ)
 

これを読んでいると、ふと昔伊集院光がラジオで「どこでもドアが出来ても、絶対に商品化されない。何故なら運送会社、輸送会社が成り立たなくなくなるから妨害に遭うし許可されない」という内容の話を思い出しました。(ちょっと記憶が曖昧ですが、大意はこんなところかと)
まあたしかにそうですよね。まず輸送関係がどこでもドアによって必要が全くなくなりますので、運輸関係各社が壊滅します。もちろん船便や航空便といった大規模なものを運ぶ会社も同じく(郵船とか)。

それどころか、JRや私鉄、各種航空会社、バスやタクシーまで壊滅……いや、自動車産業自体が壊滅的になるでしょう。もちろん造船なども同じく。
当然それの付随産業も壊滅的になります。例えば鉄道・自動車部品、駅産業(弁当とか)等々。そしてその下請けも。
さらに直販が可能になるので、問屋の存在意義がなくなり壊滅、さらに商店全般もかなり減少するでしょうね。まあポータルとしての役割を果たすところ、つまりデパートなどは生き残るでしょうが。


たしかに車などの移動手段がなくなれば、排気ガスも激減するでしょうし道も空きますが、そのかわりとんでもない数の失業者が出ることは確実です。この時点でも上記に関する各種会社は反対するでしょうし、経済も混乱するので国が許可を出さないでしょう。


しかし、それらよりももっと大きな問題があります。それは国境、そして進入禁止区域の概念がなくなってしまうことです(これもラジオで言っていたような気がしますが)。
よって密輸はOK、侵入もたやすいということで、もはや国境をはじめとした境界全般が機能しなくなります。当然盗難や強盗もたやすくなりますので、犯罪も激増しますね。
そのうち、現在の紛争地域での要人暗殺やテロからスタートした戦争が起こり、おそらくその争いは、何処でもドアが機能しなくなるまで続くでしょう。


そんなわけで、おそらくどこでもドアの技術がいきなりあるメーカーから売りに出された場合、国家予算をかけてでも買い取ろうとするでしょう。というか、それ以前に開発していることを悟られただけでも、その国の管理下に置かれると思いますが。
どちらにせよ、商品化は絶対に無理でしょうね。仮にどっかの国が最高機密で作っているというのならあり得ない話ではないですが、完成したとき、世界の軍事バランスが崩壊して、破滅への一途を辿る可能性は高いでしょう。


さて、こんなどこでもドアの暗黒的未来を書いてみましたが、これはどこでもドアだけではなく、どの道具にも言えることです。

タイムマシンの場合

もう言わずもがなですね。出来た数年以内に、最低でも「時間」というものの存在意義がなくなり、地球が終わります。(ヘタをすれば宇宙も)時間操作系全般にも同じことが言えます。

タイムテレビの場合

直接干渉することはできませんが、事実上、現在過去未来における監視カメラですよね。ということは、スキャンダルが暴き放題、プライバシー皆無となるわけです。
特に歴史関係、宗教関係の昔の映像をそのまま見るということは、ものによっては現在伝わっているものとの兼ね合いで、非常に危険な要素をはらむ可能性もあります。
そもそも、自分に不都合な過去の映像を認めることは出来ない人が多く、たとえ本当のタイムテレビが作られたとしても、それの映像を全面的に認める人は(心では本当と思っていても)ほとんどいないのではないでしょうか。
ちなみにSF小説の名作『幼年期の終わり』では、過去のいずれの瞬間も見る道具をオーバーロードが持ってきましたが、地球側の(善良とされている人からの)大反発があって、使用を極めて限定的な状況にしたという話がありますね。

人心操作系(ペコペコバッタ等)・ウソ反転系(ソノウソホント、ウソ8OO)の場合

全般的にまずいです。使い方次第で容易く独裁者を生み出します。

攻撃系(空気砲等)の場合

これも言うまでもないですね。使い方一つで凶器になります。ちなみに「とうめいマント」「石ころぼうし」「桃太郎印のきびだんご」なども軍事転用できますね。

タケコプターの場合

これは難しいところですが、おそらくのび太達が使用しているような移動手段にはならずに、娯楽程度(最近で喩えればセグウェイくらい)で終わると思います。というのはやはりあれを大勢が使うと、空が混雑すること、高層階への進入も容易くなること、そして一番のネックは、事故時の危険性が高いために、相当手を加えなければいけないことです。(ちなみにドラえもんの未来の世界では、地上に反重力装置かなんかがあって、落下しても大丈夫だったはず)


このように、ドラえもんの道具はほとんどのものが、現代の現実的世界観に当てはめると、技術的理由だけではなく、政治、経済的理由で実現不可能になってしまうのです。

しかしそれは藤子・F・不二雄先生もわかっておられたようで、例えば大人向けSF短編のほうでは「タイムマシンは絶対に」という話で、絶対にタイムマシンを生み出すことはできないと描いておられます。そういうわけで、あくまでドラえもんの世界は、そういった要素を無視した世界での出来事なのだなということです。とはいえ、あまりに突拍子もないご都合主義にならないように、ところどころで理由付けがされていることもありますけどね

あ、でももしかしたらドラえもんの未来は現在からは技術的な要素の他に何か政治的、倫理的、宗教的大きく変わるポイントがあり、法律や技術に対しての枷などが整備されているのかもしれませんけど。

少なくとも、まあこういったドラえもんの見方をするのは、大人……というか、私のようなひねた人間だけで十分ということで、子供はストレートに読んで、その結果「ドラえもんの道具が欲しい」と、純粋な欲望を持ってくれればと思う次第。