綺麗に終わり方を迎えられたマンガ10

ちょっと前に、「『漫画賞』に思うこと」のエントリーで、作品として途中ではなく、完結した漫画からの評価というものをしたらどうかという主旨のことを書きました。しかしながら、現在のマンガ連載では自分の意志で作品の長さを決められるものというのは少数でしょう。たいていはどんな構想があっても人気が無くなればそこで終わりというのは当たり前、たとえ人気があったとしても逆に終わる時期を決められることは希だと思います。
一番顕著なのは週刊少年誌。現在はややそれが薄れてきたとは思いますが、600万部時代の少年ジャンプは特にその傾向が強く、ここでは10週でいきなり打ち切りになるのは有名ですが、人気のある連載作品を何が何でも終わらせないことでも有名でした。『ドラゴンボール』などはその有名な例とも言えるでしょう(それでも最後までテンションを落とさなかったのはさすが鳥山明と言うしかないですが)。

だけど、前述の『ドラゴンボール』のような人気のまま終わったものばかりではありません。どちらかというと少数でしょう。たいていの作品は引き延ばしすぎたことによって失速し、もしくは収束のつかない展開となり、人気を落として終了するというパターンが多かったです。その時の終わり方は物語的に美しいものとは言えず、10週打ち切りと大差ないんじゃないかというものさえあります。あと人気のまま最終回を迎えても『幽々白書』みたいに無理矢理終わった感の強いものも多数存在します。

これはジャンプや週刊少年漫画だけではなくて、ほとんどの雑誌掲載作品で言えることで、人気がなければ続けてゆけないマンガの宿命だと言えるでしょう。
同じことは映画にも言えますよね、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、1作しか予定していなかったのに結局3部作になりました。『猿の惑星』は、監督が1作しか作りたくなかったのに(2作目のラストでコバルト爆弾で地球を破壊したのも、あとを封じるためと言われています)、上の意向で続編を次々に作らされました。まあこれはいい方で、何作も続編を作らされた挙げ句に、最後のほうはもうどうしようもない劣化をしてしまった作品も多々あります。

だけど、出版社としては人気があるうちは出来るだけ長く引っ張りたい反面、作家としてはやはり、話の終わりを綺麗にまとめたいと思うのは当然ではないでしょうか。というわけで、この終了時期を決められ、そして綺麗に終わることができるということは、その作品の人気が出る次に希望することではないでしょうか。まあ人気が出ないと出来ない希望なので贅沢な悩みでしょうけど。

そして、そのような綺麗に終わったマンガというのも存在します。そういうマンガは単行本でまとめて読んで、最終刊まで読み終えたときに変な引っかかり(無理矢理感や失速感)が無くて、非常に心地の良い余韻を残してくれます。まあ言ってみれば、2時間ずっと満足させてくれた映画や、放映期間中質を保ったアニメを見終わった時と同じ感じですね。前述のようなマンガの連載システムにおいて、それらは作者の意思だけではなく、運が良かったというのもあるでしょう。で、せっかくですので、そんな質と運が良かった綺麗な終わり方を迎えられたマンガ10作をセレクトしてみました。
ただ、1話完結型(ギャグに多い)や4コママンガは終了時期の調整をしやすいと思うので、ここでは上記の趣旨に添う形で連作ストーリー形式のものを優先します。ですので『アフター0』や藤子F短編集は外してあります。ついでにあまり短くても何なので、「単行本が4巻以上出ているもの」という制約もつけてみました

■ハチミツとクローバー(羽海野チカ)
これは最近のでは一番綺麗な終わり方かと思います。アニメとほぼ同時に展開していましたが、どちらもほぼ同時に終了し、綺麗に話がまとまりました。さらにすごいのは、このマンガが2回の雑誌休刊→移動に見舞われているのにこのように綺麗に終了できたことではないかと。

 ハチミツとクローバー (1) (クイーンズコミックス―ヤングユー) ハチミツとクローバー 第1巻 [DVD]

■デスノート(大場つぐみ&小畑健)
始めから終わりまで、全て読ませる名作。これは、あの週刊少年ジャンプ誌上で人気最高クラスでありつつ、108話を綺麗に終了できた意義が大きいです。まあ最近のジャンプは昔より人気作が任意で終えられるようになってきているかもしれませんが。

 DEATH NOTE デスノート(1) (ジャンプ・コミックス) DEATH NOTE 1 [DVD]  

■寄生獣(岩明均)
これも名作ですね。最終回で感動した人も多いでしょう。まあ当時のアフタヌーンでは、けっこうこういう綺麗に終わった名作は多い。『地雷震』『ディスコミュニケーション』なんかもそうかも。

 寄生獣(完全版)(1) (KCデラックス アフタヌーン)

■美鳥の日々(井上和郎)
ちょっとマイナー?なとこからもひとつ。まあ、1話完結型に近い気もするけどまあいいか。これもまさかこの人気絶頂期に終わるとは……というタイミングで終了。しかしそれが非常にさわやかな終わり方でよいものでした。ちなみにこれもアニメの終了と同時期でした。これが連載終了した号は、『かってに改造』が終了した号と同じ。赤松健氏の日記で当時ネタにされてましたね。

 美鳥の日々 (1) (少年サンデーコミックス) MIDORI NO HIBI MEMORY 1 [DVD]

■フルーツバスケット(高屋奈月)
アニメから数年経っているのにテンションを落とさず、最後まで綺麗にまとめたのが大きいです。ちなみにアメリカでは、翻訳単行本の最新刊が新刊書籍に混じってベスト20に入るくらいの売り上げだとか

 フルーツバスケット (1) (花とゆめCOMICS) フルーツバスケット DVD-BOX

■羊のうた(冬目景)
冬目景氏の代表作。最後まであの独特の雰囲気を描ききり、ラスト2話の名シーンに繋がります。

 羊のうた (第1巻) (バーズコミックス) 羊のうた(1) [DVD]

■サンクチュアリ(史村翔&池上遼一)
史村翔&池上遼一の政治&極道マンガ(劇画)。これも面白い上に綺麗な終わり方をしていましたね。まあ池上作品はあまりグダグダにならないことが多いですけど。

 サンクチュアリ(全8巻セット) (小学館文庫)

■藍より青し(文月晃)
これは正直途中で一度キャラが増えたあたりで「失速するかなあ」と思っていました。しかしそれでも最後までストーリーに興味を引かせる展開で、綺麗に終了したと思います。そしてその期待は最新作である『海の御先』に繋がっていると思います。

 藍より青し (1) (Jets comics (735)) 藍より青し TV-BOX 1 [DVD] 海の御先 1 (ジェッツコミックス)

■アドルフに告ぐ(手塚治虫)
手塚治虫氏の作品の中でも、これは最初から最後までまとまっていたものだと思います。それは1話での墓の前のシーンが、最終話に繋がるところでも言えるかと。あと、これが歴史物(話のもとがあるので引き延ばせない・三國志にも言えるかも)ということもあるのでしょう。

 アドルフに告ぐ(3) (手塚治虫漫画全集)

■愛人(田中ユタカ)
これは雑誌連載時はやや唐突感があったのですが(それでもいいタイミングでしたが)、その後の単行本で大幅な加筆が加えられ、非常にまとまった&感動する形で終了しました。そんなわけで入れてみます。

 愛人 1 (ジェッツコミックス)

□その他
10と言ってしまったので入れてありませんが、あとから思いついたものとしては、『うしおととら』『こどものおもちゃ』がありますね。『トライガン』ももうちょっと経って全体を見直せばそう感じるかも。あと意外なところで藤子不二雄A氏の作品でわりとある気がします。


以上、ぱっと思いついたところでチョイスしてみました。思い出補正で全体が良ければけっこういい印象を与えられているものも多かったですが、あえて綺麗な感じになっていると思ったものを選んでみました。有名作品ばかりなのは、そもそもある程度人気が出ないと名作にならないし、そもそも続けられないので当然ってことで。

ちなみにこれらの作品は、完結してだいぶ経つものもあるのに、片付けたり売ったりせず本棚に入れっぱなしにしてあるものが多いです。皆さんの本棚にも、このような綺麗に完結しているが故、ずっととっておいてあるマンガというのが存在するのではないでしょうか。

まだ他にもこういったものはかなりありそうなので、古本屋とかに行ったときにこういう視点で探してみるのも面白いかもしれません。

ちなみにここに挙げたものでアニメ化作品が多い理由については、また後日書こうと思います。