空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

コンビニは恵方巻のような季節イベント商品は弱いのではないかと思った話

昨日は節分でした。節分といえば数年前からやけに恵方巻きが本来その風習がなかった地方(関東など)でも話題として出てくることが多くなりました。ただ、自然発生的に広まったのではなく、イマイチ物販要素の薄い節分という行事に、購買要素を作ろうとする売り手側のプッシュと考えた方が自然でしょう。それでここ数年、「節分には恵方巻」の宣伝が盛んに成されている感じです。主には寿司系の会社(小僧寿司、京樽など)やスーパー、コンビニといった店舗の広告ですね。私もテレビを見ている時間はそんなに長くないのですが(だいたい12時前後のニュース時間帯くらい)、それでもここ数日間はかなりの恵方巻を宣伝するCMを目にしましたし、新聞の折り込み広告でもその手のものをよく見ました。ついでに寿司屋の前を通ると、「受け付けます」系の張り紙も貼ってありましたね。

で、節分も終わった今日(2月4日)の午前3時ごろ、弁当を買いにふとコンビニに行ったのですが、そこで弁当の棚の上に見たのは大量の恵方巻の残り。「恵方巻」という包装がなされた海苔巻きがずらっと余っていました(10は下らないくらい)。これだとただの仕入れすぎの可能性もあるので、他のコンビニもちょっと覗いてみたのですが、やはり余っていましたね(まあ2件とも仕入れすぎだっただけかもしれませんけど)。買おうかどうかと思いましたが、値引きもされていなかったし、そもそも恵方巻での具があまり好きではないので(コンビニで売っている寿司ならば、恵方巻きよりは押し寿司とか鯖寿司とかのほうが好き)なので買ってきませんでした。

さて、これを見て、コンビニ弁当(チキン南蛮弁当)を食いながらいろいろなことを考えました。「恵方巻」というイベント自体、もうそもそもの風習がなかった地域では飽きられたのではないかとか、昨日みたいに寒い日には、恵方巻よりあったかいもののほうがよかったとか。ただ、恵方巻の全体的な売り上げのデータがないので、これらについてはどうとも言えません。もしかしたら私の見なかったデパートなどでは売り上げが好調だった可能性も十分あり得ます。というのも、それなりに売れる要素はあるのではないかなあと思うからです。それについては去年書きました。

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ただ、恵方巻に商業的需要があるとしても、もしかしたらそれが広まれば広まる程、コンビニでの購買に行き着きにくいのではないか、とも思えるのです。そしてそれは節分の恵方巻だけではなく、バレンタインやクリスマスなど、商業的な要素が絡むイベントの多くにおいて。

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コンビニでは、実にいろいろな物が売られていて、どんな時間帯でも行けば手に入る商品が大量にあります。いまや需要の高い日用品ならば、ほとんどのものが手に入るかもしれません(余談ですが、ありそうで手に入らなかったのはプリンタのインク。よって今でもこれだけは買い溜め)。そしてコンビニには、安い商品が大量に揃っています。ただこれは値引きではなくもともと売値の安いものを中心に取り扱っているからなものが多いでしょうが(最近ではコンビニ独自商品とかで品質のわりには安いものも出てきているようですが)。しかしこの、何でも安い価格で手に入るということが、逆にこのようなイベントで売る商品に対しては逆に作用しているように思えるのです。

恵方巻ですが、前述のように今年はコンビニだけではなく、スーパーやデパート、専門の寿司屋でも前に押し出して売り出すようになっています。つまり市場の拡大に伴い、競争相手が増えたわけですね。ある意味当然と言えます。しかしそれが本格的になってきた時、コンビニは優位に立てるか、というと、そうは思えないのです。それはコンビニでは何もが安く手に入る、というイメージがあるため。つまり「同じ寿司を買うなら安っぽいコンビニよりも本格的なところのほうがいい」ということで、デパートや寿司屋といった、品物がイメージ的に本格的なものを作っていそうに見えるところで買ってしまう心理が働いてしまうのではないでしょうか。これは品物の価格が同じ場合顕著になり、同じ価格でコンビニと寿司屋で売っていた場合、イメージ的に「本格的」な気がする寿司屋のほうで買う人が多いと思われるのです。それはたとえ品質が同じものであったとしても。では本格的にやる層がそっちに行くとして、あまり本格的ではない層はコンビニで買うか、というと、そもそもそういった層は恵方巻自体をスルーするのではないかと思われます。もし価格が通常買っているおにぎりより安いとかだったら考えるでしょうが、高かったりしたらそりゃいらね、と思う人が多くても不思議ではないでしょう。

これは恵方巻よりもバレンタインデーやクリスマスのほうでイメージしたほうがわかりやすいかもしれません。もしバレンタインデーで本格的にチョコを買いたい女性がいたとします(誰にあげるか、もしくはあげないかは問わず)。そういう人はコンビニで買うよりは、専門店とかデパートとかのほうが需要が高いのではないでしょうか。で、熱が低い場合はコンビニということもあるかもしれませんが、そもそもやらなくなってきているのではないかとも思えるのです。クリスマスのケーキも同様で、やはりケーキ屋など、専門的に作っているところのほうが、コンビニのケーキよりもイメージ的に購買意欲が高いのではないでしょうか。で、こちらもいらない人はいらないと。同じ理屈で考えると、ケンタッキーはあくまで総合ファーストフードにならないことで、クリスマスでのあの大量需要を獲得しているのかもしれません。


このように「本格的にする」と「しない(買わない)」で二極化してしまっているところで、コンビニはその「なんでもあって安い」、つまり「品質は専門のそれより劣っていそう」というイメージが故、こういったイベントを本格的に望む客層を逃してしまっているのかと。たしかに最近は高級なものの注文サービスとかもありますが、それには手間がかかって、コンビニのメリットが失われ、それだとやはり専門店ということになりがちではないでしょうか。故に、コンビニではこのようなイベントものを売り出すというのは、実は向いていないのではないでしょうか。もし「しない」という選択肢がない場合は、需要が生まれたかもしれません(昔のバレンタインとかはそうだったのかもしれません)。しかし多くのイベントにおいて「しない」と割り切る人が多くなり、そこに需要は生まれなくなってしまったのではないかとも思えるのです。そう考えると、コンビニはあくまで日常(ケ)の店であり、こういった非日常のイベント(ハレ)には向いていないのではないか、と思うのです。自分も昨日行ったときに「恵方巻置くくらいならこの時間帯の弁当一種類増やして」と思いましたし。


もし、コンビニでもこのようなイベント商品が売れるようにするには「コンビニは何でも売っているけど、質は(専門のそれに比べて)よくなさそう」というイメージから、「コンビニでも高くて品質の良いものを扱っている」というイメージをつけないといけないでしょう。しかしそれはネット通販なども敵になる上、イメージ構築までにもかなり時間がかかるような気がします。それこそユニクロが安さだけのイメージから脱却するのに時間がかかったように。

ただ、個人的にはコンビニはそういったイベントに頼らず、ボトルキャップみたいにコンビニ(あとせめてスーパー)以外で真似ようのない独自のキャンペーンをやったほうがよほど盛り上がると思うのですが。