同人誌即売会において買い手にかかる金銭以外のコスト

昔から『コミケでは金銭感覚がなくなる』みたいなことがよく言われます。つまり普段しないような出費を、コミケの会場ではついついしてしまうという感じ。これはたしかにそうでしょう。私も使うはずのなかった金まで使ってしまいそうになるので、財布に入れていく金額は前もって決めていましたしね(最近はやや分別がついた)。まあ、お祭り会場で財布の紐が緩むというのは、同人やオタク系の趣味に限ったことではありませんよね。しかし、これが転じて、たまに『コミケで売るものは、あまり金額が関係ない』とか『高くても安くても売り上げに関係ない』みたいに言われることがあります。つまり、同人誌の売り上げと同人誌の値段の関連性は、同人即売会の会場においてはあまりないという感じ。さてこれは真でしょうか、それとも偽でしょうか。

個人的には、これはケースによって真でもあり偽でもあると思います。たしかにコミケでは財布が緩くなりますが、買い手としてはよほど金に余裕のある人でない限りは、個々のものをちゃんと値段を見て買うかどうか判断している人がほとんどではないでしょうか。*1私も当初は買おうと思っていたサークルの本が予想以上に高くて、スルーしたことというのはわりとあります。

たぶんこれは全ての購買行動に言えることでしょうが「欲しい度合い」と「(本の)最大許容価格」が比例する感じ何だと思うのですよね。欲しい本が高くても、欲しい度合いが高いものならそれは買ってしまうかもしれないし、同じ値段でも欲しい度合いが低ければ買わないという感じ。同人即売会など、お祭り的な会場ではその最大許容価格が上がるでしょうが、そういった金銭感覚が全く働いていないというのはさすがにないと思います。実際、いつもなら売り切れているサークルが、その回の頒布物の値段が高かったため(多くはボッているわけじゃなく、グッズセットなどで必然的に高くなった例)、だいぶ時間が経っても売れ残っていたケースというのは何度も見ています。まあヤフオクとか見ていると、サイン色紙などでやけにその最大許容価格が高い人はいて、話題になることがありますが。


しかし、コミケではこのような景気の良い話の反面、同人誌即売会で大手ではない島中の人などは本が売れないというのは良く聞く話です。

夏コミでたけど3部しか売れなかったんだぜ……。 - ゴールデンタイムズ

で、ここのスレの人の場合、100円でも3冊しか売れなかったということですが、無名サークルの創作で3部ってのは、別に少ないワケじゃなくて普通ですよね。目立たないですが、ある意味こっちのほうがコミケの大多数ではないかと。しかしこのスレ主の行動が本当だとするならば、その行動力は見習いたい。

もちろんコミケに儲けに来ているのではなく、楽しみに来ている人が多いので、売上金額をそんな気にしているわけではない人は多いと思われます(特に超マイナーなジャンルにずっといる人とか)。しかし、金銭的理由は置いておくとして多くの人に読んでもらいたいというのは、自然な心理だと思われます(これも状況によりそうではない場合もありますが)。それ故に無料コピー本を配布したりする人はいますが、こちらも必ず受け取ってもらえるとは限らず、無料配布であっても余ってしまう。それはどうしてか。実は即売会の一般参加者、つまり買い手からすると、本を受け取るまでに、金銭的以外の面でもコストがかかっているからだと考えられるからです。

まずは「時間的コスト」。即売会の時間は限られています。そしてオンリーならともかく、コミケクラスでは全部回ることは不可能です。そうなると、どうしても目星をつけていたサークルのみ回ることになって、その他のところは切り捨てざるを得ないのですよね。これは気になっているジャンルでもそうです(本当は私も3日目には1日かけて評論ジャンルのいい意味で変な同人誌を見まくりたいのだけど、なかなか出来ない)。

あと時間コストと微妙に関連しますが「疲労コスト」というのがあります。つまりいくら時間があっても、あの広い会場を全部回る体力はないと。しかも酷暑だったり極寒だったりするのに。故にそれで回るところが絞られてしまいます。ちなみにこの前のコミケで座り込んでいる人を大勢見ましたが、いくら疲れてもコミケで通路に座り込むのはいけません(どうしても座りたいなら、帰るか休憩所などを使うこと)。

さらには「重量・容量コスト」というのがあります。言わずもがな本は重さを持ちますから、買えば買うだけ荷物が重くなります。故に、無料の本でも荷物に加えたくないから受け取れないと言う人は多いのではないかと。ちなみに私は同じ理由で紙袋つきのところを躊躇することがあります。まあ宅急便もあるにはありますが、下手するとそこでも並びますし金もかかるので、あまり使いたくないのですよね。


これらの金銭的なコスト以外の理由で、たとえ安いとか無料でも頒布されるには至らないってことがあると思うのですよ。ちなみに大昔、これを利用してゲームが作れるんじゃないかとか思ったことがありましたなあ。なんというか古のアーケードゲーム『ルパン三世』風の(どっかの同人サークルで作ってそうな気もしますが)。

では、そんな状況でも見てもらうにはどうすればいいのか、というのは、そのコストを減らせばいいわけですからいくらか思いつきます。ということで以下のものを考えてみました。

★コミティアなど規模がコミケ程大きくないところに参加
先ほどのリンク先のブコメで、創作で目にとまるようにするならコミティアの方がいいと書きました。理由は「時間的コスト」「疲労コスト」が減るため。たしかに一般参加者はコミティアはコミケよりも減りますが、おそらく一つのサークルが本を見てもらえる時間はコミケよりも長いと思われます。それは会場がコミケの1/6程度であり全部回れないい数でもなければ、見本誌コーナーもあるので。おまけにコミティアの場合はマイナーな人でも発見するという意識を持っている人が昔から多いと思われますので。創作でなければ、他のオンリーなどというのも同じ理由でありではないかと(イベントごとに性質や来場者数は大幅に違うので、そのへんは個々見極めつつ。まあ見てもらうのを目的とせず、参加して楽しければOKで、それを目的としているイベントも多数あることをお忘れなく)。


★安いor無料でちょっとした同人誌やチラシを作る
私は全く新規のサークル買いをすることがありますが、実はそこでも金銭感覚が働きます。というのはやっぱりオフセ同人でよくある500円とかはマンガ一冊買えてしまうわけですし、大金なのですよ。しかし、そこで100円のコピー本や300円程度の折本だと、比較的気軽に手を出せます。なんというか「お試し版」みたいか感じで。しかも荷物にならないのですよね。で、その次の回はそこを目的にくることもあるかもしれないと(実際そういうところはあります)。何も同人誌ではなくてもよいでしょう。昔からサークルでは本の他に無料のチラシを配ることがありますが、あれは無名の人にとってはわりと有用な手段なのではないかと。あと、最近のTVCMよろしく「続きはWebで」と自分のブログやpixivのURLを張って来てもらうこともできますしね。

ちなみに私も同人音楽で知らなかった人のサークルからチラシだけもらって(CDはどうしても単価が高いので、あまりうかつに手を出せないってのがありますし)、あとで読んでサイトに行く→そこで視聴する→同人音楽サイトで今までのニュースを見る→気に入ったら次に行く時に視聴or購入するってこともあります。その意味で、全く知らない人引き込むのにはチラシは有効だと思われます。絵に自信がある人なら、そこでもしっかり描けば目にとまることもあるでしょうしね。何よりサークルにとってもコストが比較的安いのがよいかなと。

上に書いたのが確実な方法とは限りませんし、ほかにいくらでも手段はあるでしょうが、まあ思いつきということで。また、サイトがどのくらいアピールに有効なのかというのはまた長くなるのでまたの機会に考えてみようと思います。


そんなわけで、買い手も買い手でいろいろな事情があるってことなのですよね。殆どの人にとってみれば、ジュース一本の価格でもそれは降ってわいてくるものではないので。だけど、自分の作りたいものをねじ曲げて軽くしろとか安くしろというわけではありません。基本同人は作りたいものを作ればよい場だと思います。ただ、もし今以上の人に読んでもらいたいというのを望むのなら、ちょっとはそういった工夫をしても面白いかもしれませんということで。個人的には200〜300円程度の折本は、印刷所を使うにしては低コストで、且つ製本している感じがあるのでわりといい感じかなあと思っているのですが。

*1:例外的に値段を確認しないまま長い列に並んで、買おうとした時にその高額に気づくというパターンはありそうですが。