マンガ表現規制の波に巻き込まれた『百八の恋』と『ラブリン・モンロー』

※注(2014/12/13):この文章は2007年に書いたものですが、そのあと本当に都条例問題とか児童ポルノ法もにおける表現規制にかかわる問題とかいろいろ表現規制系の動きが出て来たのでなんともな。という感じで2007年の文章をお読み頂ければと。

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1990年代の有害コミック騒動

なんか松文館裁判とかこの前の成年同人誌摘発もあり、そして前回の大波からちょうど15年が経っていることもあるので「有害コミック運動がそろそろ来るんじゃないかなあ」と思っている人も少なくないとのではないでしょうか。

わからない人のために15年前(1990年代前半)に起こった有害コミック運動の経緯をおおざっぱに説明しますと、1990年代初頭、各地の条例などで「有害図書」にコミックが指定され、それが広まったことに端を発するコミック規制運動です。これらはいわゆるエロ漫画雑誌のコミックだけではなくて、『ヤングサンデー』やはては『月刊少年マガジン』などの漫画も規制に引っかかったために、それらのコミックは発売中止になったり連載を終了したりという騒ぎになりました。ちなみに今ではおなじみの黄色い「成年コミック」マークも、この当時からつくようになりました。(ちなみに大出版社において有害コミックに指定されたものでこのマークを付けて販売を続けたのは講談社のみ、小学館、集英社は軒並み販売終了)
ちなみにこれに引っかかった作品としては『Blue』(山本直樹)、『ANGEL』(遊人)、『いけない!ルナ先生』(上村純子)、『冒険してもいい頃』(みやすのんき)等。あと『電影少女』(桂正和)なんかも引っかかり、一部修正になっています。エロ漫画をカウントすれば、膨大な数に上るでしょう。

しかしその後、石ノ森章太郎、ちばてつや等有名作家を発起人として、「コミック表現の自由を守る会」が結成。それの運動や成年マークによるゾーニングもあり、だんだん規制運動は下火になってゆきました。

1990年代のマンガに対する表現規制運動である、有害コミック運動はそれからどうなったのか。

■参考・日本でのマンガ表現規制略史 ※リンク切れ→アーカイブ:日本でのマンガ表現規制略史

当時、私は中〜高校生で漫画を読みまくっていましたが、規制の善し悪しは別として(私は原則反対ですが)、「ああ、これは規制されるだろうなあ」という予感のするものってのはなんとなくわかりました。ヤンサンやビジネスジャンプで見たことある作品が有害コミックのリストに載ったのを見て、「ああ、これもか」と思ったりしました。それでも今より相当緩いのばっかりなんですけどね。(当時のエロマンガ誌についてはさすがにわかりませんが)

しかし、「これ、エロいか?」と当時学生の私が思った作品も多数ありました。『Blue』なんかも性欲とかより、なんか心に響くものの方が強かったですし。そして「は?これが何で?」と思った作品もあります。それがモーニングで連載されていた『百八の恋』(畑中純)と、ヤンマガで連載されていた『ラブリン・モンロー』(ジョージ秋山)。

『百八の恋』(畑中純)

前者は『まんだら屋の良太』の作者のコミック。たしかに裸が出てくるのですが、これで性欲を感じるのは難しいと思った方がいいでしょう。要はつげ義春漫画での裸と同じ感じなのですから。つか、ノリは地方の農村に伝わる猥歌みたいな感じなんですけどね。

■参考:発禁本(警告・問題になった雑誌・コミック・本PAGE3)
※真ん中当たり。他にも同時期対象になったコミックがあり参考になります。

『ラブリン・モンロー』(ジョージ秋山)

そしてもうひとつは『ラブリン・モンロー』これ、主人公が娼婦になるので、セックスシーンが出てきます。ただし、全キャラ動物擬人化ですが。しかもデフォルメされてますし。さらにジョージ秋山の絵。これで性欲が湧くの?と思いました。というかこれ、戦争を舞台とした切ない話なんですけどねえ。これを規制するってのは逆にどうよって感じですが。

■参考・ヤンデレ会議と語り忘れた作品 「ラブリンモンロー」

そのほかにもいろいろな作品に影響が

個人的にあの有害コミック運動での印象は、この2つの作品が一番大きいです。つまり一度規制が始まってしまうと、どう考えても「そら違うだろ」ってものまで勢いに飲まれてしまうという怖い点を示しているようで。
それ以前も白土三平作品がやり玉に挙がった時代もありましたし、はては『あしたのジョー』まで暴力的だと非難されたりした時代もあるみたいですし、はては手塚治虫さえも非難された時代もありましたしね。

さて、もし近年このような波が襲いかかるとしたら、またこのようなことが起きるのでしょうか。そして、ネットがなかった当時と、現代では何かが変わるのでしょうか?まあ何も起きないにこしたことはないんですけどね。

ちなみに今日、こういうことを書いたのは、本棚を整理していたら『誌外戦 コミック規制をめぐるバトルロイヤル』(創出版)という本が出てきたからです。この本、全部規制問題についてですが、ちばてつや、石ノ森章太郎、山本直樹、ゴー宣初期の小林よしのりがマンガを書いていたり、かなりの有名作家、大御所が寄稿していたりとかなりのラインナップな本に仕上がっています。業界がヤバイ時期だからこそのものなのでしょうね。

余談

データはないのですが、どんな分野の作品でも有害指定されると売り上げが逆に上がるという話があります。曰く、「国(自治体)が有害と認めてくれるような作品なら、さぞかしエロいに違いない」とのこと(2chかなんかのネタだったかなあ……)。規制する側にとって見れば、本末転倒なのでしょうが。

追記

ゴルゴ31さんで『さくらの唄』の名前が挙がっていました。そういえばそれを忘れてた!
あれは性描写は多かったですけど(それでも現在のヤンマガ基準内)、実に切なくなる名作だったのですが、煽りで成年コミック指定→連載終了(ちなみにこの後に連載が始まったのが『お天気お姉さん』のはず)。

ただ、この作品に関しては復刊されているので、前の2作よりやや救いがあるかも。

4062836009
さくらの唄(上) (講談社BOX) : 安達 哲

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