このようなエントリーがありました。
■なぜユーザー参加型サイトは人気になるとつまらなくなるのか - watanabiの日記
現実のコミュニティーはそこに不必要なものに対して排他的なのに、多くのCGMサイトではインターネットのオープンな性質上それを排除するシステムが整っていないため、人が増える度にその不必要なものを抱え込んで、最初から所属していた人にとってつまらないものにしまうということですね。
■参考:Consumer Generated Media - Wikipedia
ここで言う「不必要なもの」ですが、とある個人にとってそうでも、全体にとってはそうではない場合もあります。例えばゲームのことを語るサイトで、シューティング中心だったのにそれが幅を広げてゲーム全体になってしまってシューティング性が薄くなったら、最初の人にとってはつまらなくなったと感じることがあっても、別の人は今まで参加できなかったところに参加できるため、嬉しいと思うこともあるでしょう。
ただ、そうではなくて本当に殆どの人によって不必要な「悪意」が持ち込まれてしまう場合も多々あります。具体的にはそのコミュニティにおける荒らし行為、迷惑行為など。つまり少人数で和気藹々とやっていた空間が、人数が増えたことによりそういうものが持ち込まれてしまい、結果としてそこは楽しい空間ではなくなってしまうという感じ。
この「悪意」はそこが人が集まり始め、そこに混じっている場合もあります。そして人数が増えることでそれが多くなると。つまり利用者の0.1%が悪意を持つとして、500人程度なら1人いるかいないかってところですが、10万人になると100人存在する可能性が出てくるという感じ。しかしそれは人数の上昇に比例して伸びるのではなく、それ以上に悪意が多くなる可能性は高いです。すなわちそこが人が集まる空間になったと言うことを認識して、「人が多いところでこれをやれば目立つだろう」という心理から悪意を呼び寄せてしまうという感じ
その「悪意」はそれは煽り荒らしのような屈折した顕示欲から来るものもありますが(中には自分が正しいと思って、他が悪いと思い込んでいる人もいるかもしれませんが)、個人的には一番悪質で、そのサイトの信用を低下させうるものがあると思います。それは「普通の参加者のフリをして悪意的行為を行う人」。
「普通の参加者のフリをして悪意的行為を行う人」とはどういう人か。言ってみればよく「工作員」と呼ばれる人です。つまりそのあるものの支持者、関係者などがそれを推奨、批判するために行う行為。流れとしてはこんな感じ。
・そのサイトが人が集まったため、多くの人の目に止まる「目立つ存在」となる。
↓
・その「目立つ存在」の「影響力」を利用しようとする「悪意」が現れる
↓
・普通の人を装って意図的なものが書き込まれる
↓
・そのうちそのCGMサイト全体の信用がなくなってゆく。
つまりは、それを書き込むことで自己に利益を得ようとする人ですね。この場合の利益とは自己満足から、工作まで多岐にわたります。1人であることを示しているならそれは1人の意見の範疇に入ると思われますが、このケースの場合アカウントの複数取得など、複数の人がそう言う評価をしている様に見せかけると。これにより、現実とのブレが出来ると、そのサイトの評価がその工作、そして正しいものまで含め疑われ、そのサイトの信頼性を失わせてしまうことになりかねません。
しかし、現実的には最初のリンクに書いてあった様に、インターネット自体がオープンな空間なので、それを防ぐ仕組みが難しいと。それこそメアド登録なら複数メアドを使い、実名登録なら偽名まで使う可能性があると。これがそのサイトを殺してしまう一因となっていると思われます。
さて、その工作員ですが、その書き込まれる人のファン(批判ならアンチ)ということもありますが、可能性としては、その商品が売れることによって利益を得る者全てが関わる可能性はあると言えるでしょう。つまり、その商品の関係者が宣伝目的で書き込むということも、その利益を考えれば心理的には自然と言えなくもないのです(もちろんそれが発覚したときのリスクなどはありますが)。株価操作のために書き込んだ人がインサイダー取引で逮捕されるとかいうのもたまにニュースになりますよね。
では、具体的にどのような形でその悪意は干渉してくるのか。
例えば2ちゃんねるのような大きな掲示板で、何回も評価(悪評)が書き込まれることがあります。そして掲示板は書き込まれるだけでは匿名という性質上、たとえ同一人物がひとりでやっていても、それはさも別人が語っている様に見えます。そしてそれに対しての評価が「大きな声」として残ると。
また、得点投票サイトでもそれは起こり得ます。以前、『気まぐれコンセプト』に、グルメ系CGMサイトとして有名な『ぐるなび』で、レストランのコックが調理をしていると思いきや、『ぐるなび』で自作自演をしているという4コマがありました。つまりここでは『ぐるなび』の影響力を利用して、宣伝を行っているということですね。
ゲームでもCGMサイトと呼べるものがあります。それはゲームの感想や得点を入力するサイト。ここで複数アカウントを取得して、気に入ったソフトを持ち上げて、気に入らないソフトを貶すと。
しかしこれらの困ったことは、必ずしもその悪意の書き込みをした人がわかりにくいということなのですよね。かつてとあるマンガ家の人がいわれのない誹謗中傷を受けたことがありましたが、それは際だってアレさが目立っていたから発覚しただけで、うまくやってしまうと、なんの言われもない人の評判を左右してしまうこともあり得ます。
■参考:2ちゃんねる漫画用語辞典Ver.4.0(仮 @Wiki - 【伯林裁判】(はくばやしさいばん)
しかし、その「工作員」も、そのサイトが大きくならなければそこに書き込む可能性は低かったはずです。つまりそのCGMサイトが大きくなり、多くの人に見られるようになったため影響力を持つと判断したからそういった行為を行うようになったはずです。となると、サイトが大きくなることでそれら悪意を抱え込んでしまうというジレンマを、CGMサイトは抱えているのではないかと。
たしかにネットリテラシーがそれなりにある人なら、こういったことは恥ずかしいからやらないというのは常識だとは思います。ただ、全ての人にネットリテラシーがあると考えるのは、楽観的すぎるでしょう。残念ながら中には、自己の利益(自己満足含む)のために、それを行ってしまう人がいるのです。それの一例が、先日の朝日新聞からの2ch書き込み事件だと思います。ここで発覚しているのは最低1人が書き込みを行っていたということですが、つまりこれはこのようなことをネットの住人は行わない、という性善説のようなものを砕いたと言えるでしょう。
■朝日新聞編集局員が2chで荒らし 差別表現投稿で「厳正処分」 - ITmedia News
これは見る側も同じです。ネットに詳しい人ではネットなんて全面的には信頼してはいけないなんてのはわかっていますが、素人はどうでしょうか。言ってみれば2ちゃんねるとかも大量の嘘と真実が混じり合っていると思っているのですが、初心者が見たらそれを全面的に信じてしまうということがあるかもしれないと。それが怖いのですよね。
■参考
nakamorikzs.net
これは、CGMサイトに限らず、インターネット全体の利用者が増え、その中には善意的な人もいれば、悪意を持つ人も紛れ込んでしまったがために起きているものかもしれません。
つまり「自分で真偽を判断する」というのはインターネットを利用する上での本質であり、それを常に意識しなければいけないのではないか、と思えます。そして、騙されないつもりが騙されていたということもないようにしないと、ということで。ちなみに私のこういった得点サイトの使い方で注意しているのは、「数値(点)をアテにしない」ということと、「コメントが信用できるユーザーを見つけ出す」ということ。つまり点を見ないで、あくまで評価だけ見る。そしてその評価をしている人の意見は信じられるものか、その人の他の評価を見るという感じ。ブログなどを持っていて、そこにしっかりとした意見が書いてあれば、さらに信用しますね。ま、結局は個人の判断はその人の目に任せるしかないと。
まあそんなわけで、うちのブログに書いてある文章だって自分でそれが正しいか考え、判断しなければいけないと。悪意はないつもりですが、間違いが全くないというのは人間としてほぼあり得ないのですから。