空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

実は「注目の転売品」なんてものは存在しないんじゃないかという話

なんかオークションで「Wii Fit」が余りまくっているようです。ただし、オークションにいる「転売者」を嫌っている人は多いので、同情はないようですが。

ヤフオク転売厨「WiiFit」が全然売れなくて涙目(情報元:DONTACTさん)

これに限らず、注目の商品が発売される時には、ヤフオクでこのような転売が行われますよね。たしかに高値で売れるものもあります。しかしそれはだいたい時間が経つと転売の量に対して落札者が減り、かなり笑いの種になることがあります。近年だと、「PS3」、「Wii」、「PSP」、「ときメモ3限定版」などゲーム系が多いですね。

さて、人気のあるが故に注目が集まったものなのに、何故このようなオークションでの落札無し、そして相場崩れ状態になるのでしょうか。

市場の大原則は需要と供給です。そして、需要が増大すればものが売れ、価格は高くなってゆきますが、供給が増大すると品物が余って必然的に価格は下がってきます。そしてヤフオクにもこれと同じことが言えるのではないでしょうか。簡単に数値化してみると、「欲しいと思っている人(需要)の数÷売っている(供給)数」で出た数値が高いほど、需要が高くなるので高値で売れることになります。経済学で専門の用語があるかどうかはわかりませんが、ここでは仮にオークション需要数値とでもしておきますか。例えば欲しい人が10人いた場合に対し、出品が1つだった場合は、数値は10ですのでイコール競争率となり、価格は高騰します。しかしこれが需要が10いても出品が50だった場合、数値は0.2となります。この状況は、出品者の中でも安い方10人のみ最低価格で落札となり、残りの40人は売れないという状況ですね。

さて、よく言う「注目の商品」というのは、要はそれが欲しいと望む人が多いもの、つまりは需要が高そうなものですよね。しかしそれは需要が高い分、転売しようとする人、つまり供給者も増えていると予測できます。となると、たとえ需要数が100だとしても、供給者がひとり増えるにつれ、割り算的にどんどん数値が低くなります。
ちなみに単純計算だと、需要100に対して供給50でも数値は2で、ひとつの出品者の品物に対して入札が2人しかいないことになります。33まで減っても3人。実際は安くした人に偏るので、たとえ数値2でも売れない人が多く出ることでしょう。

以上のことをふまえて、「注目」されている商品というのが多くの落札(供給)予定者と同時に転売(需要)者にも注目されているとしたら、それが大きくなるにつれて数値はどんどん低くなってゆくのではないでしょうか。そうなった時、「注目」が転売者にとって「利益の出る」って意味で使われていて、「転売品」というのもが転売によって儲けを期待するものと定義した場合、「注目」の品物はもはや「転売品」ではなくなるのではないでしょうか。つまり「注目の転売品」というのは、矛盾なのではないかと。まあ、ウォッチする人にとっては、別の意味で「注目の転売品」になるでしょうが。

しかも、転売者の相手は当然他の転売者だけではありません。例えばゲームハードの場合、店では売り切れが多くても販売はしているのでそこから手に入れたという人も多いのですから。そして時間が経てばもちろん供給は多くなってゆきます。しかも、同じ価格ならオークションで買うより信頼度の関係で店で買うのを望む人も多そうですし。
さらに、転売されて高値になってもいいことがない発売元も学習しますから、それの出荷量を十分考えますし。
これは完全限定版でも同じで、オークションの性質上、中古で手放すって人もいるので。ちなみにチケットはタイムリミットがあるのは言うまでもなく。さらにたまに「限定なのに再生産」とかいう日本語おかしくない? でもまあいいやってことも起きますし。

じゃあ何で、一時的にでも高い値段が付くのかというと、それは「その品物に対するオークションが始まったばかりで相場が定まっていない」というものがひとつ。そして一番強力なのは「もしかしたら今後なくなるかも」という観念にとらわれることですね。まあそのへんは出品数をじっくり見て検討するのがいいかと。あと特殊な例として「金に糸目をつけない人がいる」といったところもありますね。色紙に50万ついたり。

逆に言えば、限定品をオークションで買おうとしている人は、それが数個単位でこれを逃したらもう出てこないというものでない場合(その見極めもやや難しいですし、万が一のなくなった時のリスクも考えてしまうのでしょうが)、一呼吸置くことをおすすめします。するとあら不思議、ってくらいに値段が下がりますので。

本当に高値安定しているものもありますけど、中古のプレミア品ならまだしも、新品でそんなに入手困難なものはそんなにないと思います。よく言われるチケットでさえ、一定期間内に売らないと紙くずというリスクはあるので。あと、オークション出品者がチケットの大量取得で迷惑防止条例によって逮捕された事例もあります(たしかジブリ美術館の整理券)。


そんなわけで「需要が多いもの」が一番の利益となるはずですが、前述のようにそんなものはすぐ注目を浴びて、転売者、つまり「供給」まで増大してしまいます。ならば「需要がそれなりでも供給も少ないもの」、つまり競争相手の少ないものを扱えばいいのですが、そこに参入した途端、そのジャンルはただでさえ少ない需要が増え、価格破壊が起こるような気がします。あと専門の知識がないとババをつかまされるような。

そもそも転売している人は、今までの利益を一度見直してみると、そのかけた時間、仕入れ値と売値の差額に愕然とする人もいると思います。オークションでもギャンブルと同じで、お金が入るとそれまでの労力や元手といった差し引きで考えずに、「儲けた」と感じてしまう現象に陥りがちではないかと。ましてや、たまに需要がそこそこなのに供給数が低いものに当たって、高値で売れてしまうこともあるので尚更(ちなみに1度売れたらほとんど充当が無くなるようなところ)。
そして、尚も需要数(オークションで出品しようとする側)は増えてゆくのです。

あと、購入者だけじゃなくて転売する人も「限定」という言葉に騙されがちなのではないかと一度思い直してみるのもいいかと。


まあヤフオクそのものも、5〜6年前ならともかく、今では儲かる場所ではなくなってきているのではないでしょうか。個人的にはそっちのほうがいいのですけどね。買うのはほとんど中古の発掘品だし、出すのも余ったパソコンパーツとかだし。


■参考
テンバイヤーがもてあます元本割れ不良債権の傾向を読む(情報元:DONTACTさん)


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■追記
ゲーム機で数少ない例外は去年のDS Liteですかね。あれほどまで引っ張るとは思わなかった(それでも普通のが2万を超えることはほぼなかったようなので、手間を考えるとあんまりいいものじゃない気が)

そういえば一時期「せどり」って言葉があったけど、あれも需要数(競争相手)が増えると成り立たなくなるものだと思うのだけど、今どうなんだろ?


■さらに追記
ソース元が見つかったので、一番最初にリンク追加。
ちょっと思ったこと。一番上のリンク先みたいに、転売品を自分で複数出品するというのは、落札される率を自分で下げていると言えなくもない気がする。