空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

都知事選の「争点」とは何か

2月に都知事選を控え、連日そのことがニュースとして流れています。それで、細川氏出馬で、よくニュースなどでは「原発問題が次の都知事選の争点」と言われていたりします。

もちろん、候補者が政策として何を訴えるのも自由です。それを見て選ぶのは投票者ですから。しかしながら、この東京都知事選、本当に争点はそれなのでしょうか。そもそも「争点」とは何でしょうか。 f:id:nakakzs:20171016015335p:plain

「争点」がどういうものなのかについては最後に書くとして、少なくとも原発以外にも、東京都が抱えていて次の選挙で影響しそうな問題というのはたくさんあるという例示のために、今までの東京都知事選で各候補から出て来た公約(資料として平成24年の都知事選の時に配布された選挙公報を参考としています)や過去10年くらいの東京を見て、今度の選挙において政策課題として提示されそうな、もしくは提示する人が多そうなものをいくつか書き出してみます。

 

原発問題

細川氏が出馬理由としたことからか、メディアでも一番言われていること。しかし東京に原発はないのにそれが都知事選でどうしてメイン?という疑問もあります。とはいえ核の処分場の問題、それになりより東京電力筆頭株主としての影響力がありますので無関係とは言えないでしょうが。そのあたりは今後の公約などを見たいところです。

 

オリンピックにおける開発問題(主に臨海部)

先頃決まった2020年の東京オリンピック。これも6年先で、都知事が今当選しても2018年までの任期ですので届かないから直接アピールされても……ってのはありますが、これによる交通網整備など準備におけるインフラ整備などが主眼となってくるでしょう。

これについては葛西臨海公園のカヌー場計画における緑地破壊問題というのを気にされる方も多いかと。

キャンペーン | 25年もかけて育てた葛西臨海公園の自然を、5日間のオリンピックカヌー競技のために壊さないで! | Change.org

 

交通網整備

オリンピックとも重複しますが、ほかにも前回の選挙で猪瀬知事が押し出していた地下鉄改革、そのほか羽田空港の国際化、環状道路整備など、交通網にかかわること。同時に、それらの建設費用や、それによって生ずる雇用の問題も含め、これからの東京において考える必要がある議題でしょう。

 

徳洲会問題

猪瀬前知事が辞任したら報道は一段落ついた感じのものがありますが、根本的にこれにおける利益供与の存在や便宜が行われていたか、またそれは副都知事時代から行われていたことから、石原都知事の関与があったかなど、追求することはまだあるはずです。少なくとも、これを有耶無耶にするようであれば、問題学理返されてしまう可能性もあるので、争点として出てもおかしくないものだと思われます。

 

新銀行東京問題

前回の選挙では、反石原陣営が掲げていましたね。新銀行東京の赤字問題。都民の税金が1000億以上使われたのに、事実上の失敗状態にある責任の所在をどこに求めるか、そして今後どうするか、それも考える必要があるのではないかと。

 

TPP問題

これも国政絡みですが、原発が出るならこっちも争点として出したい人はいるかと。各地方選ではこれが争点として提示されることがありましたし、東京だってプラスにせよマイナスにせよ影響を被る産業は非常に多くありますしね。あと著作権分野の規定は、報道出版社が集まる東京では死活問題になり得る可能性もあると思うのですが。いわずもがなネットや同人も。

 

築地市場移転問題

現在豊洲への移転に向かっています。築地の老朽化で、豊洲移転が必須という意見がある一方、豊洲予定地の液状化、それに土壌汚染の問題が指摘されています。

土壌汚染の専門家が「怒って辞めていく」、東京都の築地市場移転問題の深刻さ(池上正樹) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

表現規制問題(都条例問題)&風営法(クラブ)問題

これは政治家の公約としてはあまり提示されないけど、個人的には大きな判断基準なので。

近年、表現分野においての規制耶蘇の動きが相次いでいます。東京都では数年前騒ぎになった東京都青少年育成条例(別名非実在青少年条例)問題があります。一番怖いのはこのような表現すると逮捕される危険性がある状態での自主規制ではないかと。

あと、昨今では風営法違反ということで、クラブの摘発が相次いでいますが、クラブ愛好家(当然薬物とか使用していない健全な)は、思うところがあるのではないかと。

 

尖閣諸島募金の扱い問題

尖閣諸島国有化問題の際、集められた募金14億。結局国が国有化してしまったため、それが宙に浮いたままとなっています。石原元都知事は関連施設の整備費用として国へ譲渡すると発表しましたが、今でも浮いたままの状態となっています。

14億も無視出来ない金額なので、これの使い途などについても忘れることは出来ないかと。

 

東日本大震災支援&伊豆大島土砂災害支援

3年経とうとしているのにまだ復興が為されているとは言えない点が多い被災地。ここへの支援の仕方も鍵となるのではないかと。

また、昨年伊豆大島で起きた豪雨で多数の死傷者を出した土砂災害の手当も考える必要があるかと(これは島部の人は特にそうでしょうね)。

 

お台場カジノ問題

あまり言われていませんが重要なことかと。現在、国会で外国の人を招致し、利益を得るためのカジノを設置するための法準備が行われています。そしてそれを目的に動いている娯楽企業も多いようです。

しかし、カジノ、つまりギャンブル場という性質のものを、お台場に置いて大丈夫かという議論はほとんどされていません。また、これとオリンピックが相互悪影響を及ぼしかねない危険性も含め。その点も争点となり得るかと。

 

防災体勢構築

いずれ来るかもしれない東京都直下型地震。それに対しての備えをどうかしなければいけないというのも東日本大震災の時から言われています。建築などのハード面だけではなく、何か起こったときの支援対策などシステム面など、何をするかは多岐に渡でしょう。

 

育児施設、育児環境問題

主には保育所の整備。ほか働く女性が育児もしやすい環境に出来るかどうかということやその支援など。また、妊娠や育児のブランクで会社の出世的に不利を受けないようなシステム作りも。もちろん女性に限らず男性も。

また、最近は行政が街コンなどの事業に手を出そうとしてたりと結婚率を上げたいようですが、根本的にはこういった制度や支援、後賃金問題が解決しないと意味ないので、この辺の環境整備はそういった面でも大事かと。

 

教育問題

どうすれば子どもが健やかに育つか、ということ。教育方針はもちろんですが、制度から支援などなど。

都議会と言えば少し前に七生養護学校事件の裁判なんてのがありましたし、政治が教育に与える影響は大きい分、その辺じっくり考えないといけないでしょう。

■参考:七生養護学校・性教育訴訟事件、都議らと都の敗訴確定 - NAVER まとめ

 

医療、福祉問題

介護施設問題など。どこの自治体でも選挙のたびに大きな議題となることですが、その使われ方がどうなるか。今の社会、放置すると膨れあがることは確実ですが、そこで削減することでどれだけの人にデメリットを与えるか、そんなことなどを考えて各候補の政策を見たいところです

 

特定秘密保護法

これについて発言している候補がいるので。国法だから地方からの関与は難しそうですが。あるとしたら、国政への要請とかですかね。

 

雇用、労働問題

雇用数を増やすのは当然ですが、雇用特区構想というのが最近出て来ていますが、それを都内でどのようにやるのか、そこでホワイトカラーイグゼンプションみたいなのをやるのかどうかも気になります

■参考:『ホワイトカラーエグゼンプション』はそれからどうなったのか : Timesteps

あと、労働問題はいわゆるブラック企業対策や下請けいじめといったもの。放置すると当事者の被害はもちろん、労働者全体のモチベーションにもかかわってくる重大な問題だと思います。

ほか、税制問題(地方税年々高くなって、毎年驚く)とかいくらでもありますが、とりあえずこの辺で切ります。

 

選挙の「争点」は投票者一人一人が決めるもの

さて、ここでは争点として考慮する人が多そうなものを抽出してみました。しかしこれらが全てではありません。また、ここにあるものが共通した争点でもありません。あくまで一例で、都政の課題というのは大小含めまだまだ山のようにあります。とりあえず、原発だけではない、オリンピックだけではないということの説得力を持たせるために、一部抽出しただけです。

そもそも、選挙における「争点」というものは、政治家やメディア、そしてブログを書いている私が世論全体的に決めるものではないのではと思うのです。

選挙における選挙民の投票とは、投票者が希望する政策を、どの政治家が行ってくれるかを考え、投票するものです。それを明示するためのツールとして存在するのが「公約」であると。その、政治家に行ってほしい政策というものは、人によって違います。それが複数に行き渡ったり、優先の度合いを考えれば、全く同じ人はいないのではというくらい細分化するはずです。まさに、人の数だけ争点はあると言ってもいいくらい。

故に、そういった政策の「争点」というものを、一つや二つに絞ったりすることなどというのは、そもそも出来ないのではないでしょうか。ましてや、それを政治家が決めたり、メディアがこれと決める事はぜんぜん違うはずです。それは「争点」というよりも「政策公約」(もしくはそれの抽出)のはずです。

たしかにとある一つを争点とすることで、有利になる政治家、もしくは自社の論調的に有利になるメディアは存在します。そして逆に言えば、そこから避けたい政治家やメディア、政党などその他の団体や個人などもあるでしょう。しかし、最初に語ったようにあくまで争点は投票する個人が決めることであり、世間で言われている争点が自分の争点とイコールであるとは限らないし、限る必要はない、ということは念頭に置くべきと思われます。

ちなみに新聞テレビでは流されることがなくとも、私の選挙における争点のひとつとして、「表現規制をしない」というのがあります(東京都的に言えば、以前決まった青少年育成条例における表現規制の危険性を取り払う方向の人)。その他の争点もありますが、それを加味して総合的に誰がふさわしいか投票することにしています。

他の選挙でもそうですが、投票に行く人は世間で言われているものではなくそういった「自分の争点」を認識すべきではないでしょうか。