電子書籍普及の妨げとなり得る撤退企業の閉鎖時対応

AmazonのKindleが日本に上陸したのは2012年。当時の出版業界では「黒船襲来」と言われていました。じゃあその黒船が来る前に日本の出版業界は何をしていたのかというと何もしていなかったわけじゃなく、10年以上前から「電子書籍コンソーシアム」とか立ち上げてはいたのですけどね。まあそれがどうなったかは以前書いたので以下を。

では現在、Kindle含めて電子書籍が普及しているか、というと、実感としては「まあそれなりに普及はしているものの、思ったほどは普及していない。少なくとも昨今の出版不況を補うには全然」といったところ。データ的にも近年足踏みしているようです。

■参考:電子書籍の普及進まず 「読書は紙書籍の方が多い」が半分以上 – ライブドアニュース

■参考:電子ブック利用率は2割で頭打ち?

普及が踏みとどまっている理由は多岐に渡るでしょうが、そのうちのひとつに「配信元への信用」という問題があると思われます。

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電子書籍販売サイトの増加に伴う撤退企業の増加

現在、AmazonのKindle以外にも多数の電子書籍配信サービスが存在します。有名なところではAppleのiBooks、KADOKAWAのBOOK WARKER、楽天のKobo(厳密には海外企業が絡みますが)、ebook japan、honto、BookLive!など多数。

しかしこれだけの競争になると、やはり撤退するところも出ています。しかし、その撤退時には必ず問題となることが生じます。それは「サービス終了後、今まで購入した電子書籍はどうなるのか」という問題。

ユーザーとしては、紙媒体の書籍と同じように購入したつもりの人が大半ですので、やはりそういった本と同じように手放すまで永続的に読めるというのが理想的、というか当たり前であると思うのは自然でしょう。しかしながら、電子書籍の場合、それが不可能になることが非常に多くあり、過去にも幾つかそのあたりで騒ぎになっています。

楽天Raboo

まず、現在Koboを運営している楽天ですが、かつてRabooという電子書籍配信サービスを運営していましたが、2013年3月31日をもって終了します。しかしその際、新規ダウンロードや認証がその日をもって出来なくなること、さらに新しく運営を開始したkoboなどに引き継ぎがなかった、ユーザーの間からはそれを問題視する声が出ました。

Raboo: Rabooサービス終了のお知らせ

Raboo終了! Rabooの残した傷跡を考える [電子書籍] All About

廣済堂のBookGate

廣済堂運営の電子書籍サービス「BookGate」が8月31日で終了すると告知されたのですが、その際にも事実上引き継ぎがない状態でした。

電子書店アプリ「BookGateシリーズ」、および電子書籍アプリ、サービス終了のお知らせ

廣済堂電子書籍「BookGate」が最悪の撤退発表 | ソウルに通いながら、こう考えた。

ヤマダ電気のヤマダイーブック

ヤマダ電機のヤマダイーブックも2014年8月に終了、新サービスへの移行が告知されたのですが、その時に今までの電子書籍が読めなくなり新サービスへの移行も行わないと発表され、炎上騒ぎになります。ただこちらはその後変更されたようで、再ダウンロード可能、そしてポイントはヤマダポイントに切替えとなったようです

ヤマダイーブック「炎上」 電子書籍事業への教訓 (三淵啓自) :日本経済新聞

採算の都合か引き継がれないサイトが多い

途中終了する電子書籍サービスはこのほかにも存在しましたが、多くのケースでこのようなそれからのダウンロードや引き継ぎ先がなく、ダウンロードしたハードが壊れたり交換した場合、それ以降閲覧が不可能になります。

配信企業側にしてみれば、採算がとれなくなったので終了するわけで、それ以上コストをかけたくない、つまりそのまま早期に打ち切りたいというのが本音でしょう。しかしながら紙媒体の本と同じ感覚で購入した人にとってみれば、いきなり売り手側の都合で読めなくなるというのはたまったものではありません。それはたとえ利用者が少ないサービスだからといっても。

ユーザーに与える電子書籍の映像性に対する懸念

しかし、この引き継ぎなしの中断で影響を与えているのは、決してそのサービスのユーザーだった人だけではありません。おそらくは全ユーザー、そして電子書籍の業界に影響を与えているのではないでしょうか。

先の電子書籍サービスが閉鎖した際の記事でも触れてありますが、これによりどのサービスにおいても「もしかしたらこれも終わって読めなくなるのでは」という永続性に対する懸念が、ユーザーの間で持たれているのではないかと思うのです。そうなると当然電子書籍の購入にも慎重にならざるを得ません。

閉鎖しにくい大手が寡占化してしまう可能性

それでも大手のAmazonやAppleやGoogle、日本で言えば角川(ある方面ではDMMも)のように潰れる可能性が低い。もしくは閉鎖しても何らかの引き継ぎなどをするだけの資本的余裕があるところはそれがある程度の信用の担保となるかもしれません。しかし逆に言えばそのような担保がない中小は、その懸念でユーザーが集まらない、ユーザーが集まらないからサービスが存続できないという悪循環に陥る危険性が高くなります。それが故に大手による寡占状態となってしまう危険性があります。

寡占状態になると価格(印税率)面や表現の範囲において選択肢が狭まってしまう危険性があり良い傾向とは言えないので出来るだけ幅を持たせたいのですが、それが難しくなっているでしょう。

ただ、この懸念を一番抱えているのは、大手である楽天koboと思われます。それは先述のように一度Rabooでサービスを終了し、引き継ぎが事実上されてないから。実際購入した人でなくてもこの事実が、撤退の時のことを考えて購入を留まらせているという例はかなり多いように思われます。まあ本当にそうだったら因果応報的なものがあるのですが。

業界全体に波及する問題

こう考えると、業界である程度ルールを定めるなり協調するなどして、もし閉鎖したときもそれを引き継ぐところを全体でフォローするようにしないと、この懸念をずっと引っ張ることになるのではないでしょうか。

最初のニュースのように、もし電子書籍の勢いが止まったとなると、いよいよサービスも生き残り合戦となるでしょう。そして閉鎖するところも出てくるでしょう。しかしその時どう対応するかで電子書籍の購入が永続性の意味でも信用出来るものなのか、それとも大手寡占化に拍車をかけるか、もしくは電子書籍全体の衰退に繋がってしまうか、今後に注目する必要がありそうです。

追記

同じことはゲーム配信や音楽配信でも言えそうです。まあこっちは電子書籍に比べれば潰れることがあまりない大手が揃っているのですが(そもそもそのくらいの規模じゃないと参入が難しいし)。それでもMusic unlimitedとかサービス終了しているのとかはありますので、配信というもの全体が少なからず抱える問題でしょう。

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