消費税軽減税率の新聞への適用は誰が得をするのかしないのか

先日のニュースで、与党が消費税再増税時の「軽減税率」のことについて協議したと触れられていました。この「軽減税率」、もうだいぶ前から言われています。まあ主にはその発信元は公明党で、町に貼ってある同党のポスターを見ると、この「軽減税率」というのがかなりでっかく載っているものが多く見られます。
しかし、この「軽減税率」という言葉を、先の増税前から非常によく見かけるのが新聞。とりわけ讀賣新聞は、これの導入を押し出すことを全く隠していないのでわりと有名です。

先日のニュースにどう反応するかと思っていたら、やっぱり社説にもってきてました(現在削除済)。文末にいきなり現われる『欧州では大半の国が、新聞や書籍に軽減税率を適用している。民主主義や活字文化を支えるため、日本でも対象とすべきだ。』を言いたかっただけちゃうんかという気もしないでもないですが。

先の報道のケースだと対象品目として例示されたものは飲食料品(酒類除く)、生鮮食品、精米ですが、ここに新聞を押し込むために今後相当の報道がなされるような気はします。

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軽減税率の問題点

さて、軽減税率は単純に税率を減らして終わりという簡単なものではなく、それに伴う問題も数多くあることが指摘されています。

主に言われているものは「対象品目の線引き」と「事業者の(労働的&金銭的)事務負担」。

 年末の総選挙で消費税の軽減税率を公約にしていた自公連立政権が勝利したこともあり、にわかに盛り上がってきたものとして消費税の軽減税率についての議論があります。 もちろん、消費税の問題点として挙げられる...
 スーパーの業界団体、日本チェーンストア協会は15日、食品など生活必需品の消費税率を低く設定する「軽減税率」の導入に反対すると改めて表明した。「対象範囲の線引きが不明確になり不公平を生む」としている。

軽減税率は何%?

ただ、一般の人が一番気になっているのは、その対象品目、そしてこの軽減税率によってどれだけの税が軽減されるのかと。

それについては「8%が一つの基準」とのこと。つまり軽減税率が適用されるものは再増税時に10%にせずに、8%据え置きという考え方がある、ということになるでしょう。

ちなみに先の財務省の試算で、軽減税率適用時の低所得世帯の負担軽減額は8470円と出ていましたので、印象ではそのあたりに沿った感じと思われます(もっとも財務省は軽減税率に否定的な感じを受けますので、低めに見積もったという可能性もなきにしもあらずですが)。

これを見て「え? これだけ?」と思った人はかなり多いのでは。月、ではなく、年でも1万円以下ですから。

軽減税率を導入しても新聞の売上は下がってゆくと思う

さて、ここで最初の新聞の話に戻ります。

讀賣新聞に限らず、新聞業界は新聞への軽減税率導入に非常に積極的です。

■参考

しかし、現在の新聞の月額は、全国紙で朝夕込みで4000円程度。前述の通り現在と同じ8%でいくとなると、たとえ対象になってもこの料金は変わりません。対象となった場合(つまり10%適用)の場合との差額は、月に100円以下となります。

となると、これだけで新聞の購買意欲が変わる人がどれだけいるでしょうか。

現在、新聞の発行部数の急激な低下はよく言われており、特に全国紙の減少は激しく、吉田調書の誤報問題があった朝日のみならず、読売まで大幅な減少となり、かつてアピールされていた1000万部という数字は遠くなっています。

新聞の発行部数が、わずか1年の間に激減していることが分かった。朝日新聞は約40万部、読売新聞は約60万部減少した。この結果が「不透明な部数の整理」か「読者離れ」なのかは分かっていない

この要因は実にいろいろあるでしょう。昨今の新聞における信用の低下、ネットなど他の情報手段の取得。ちなみに自分でも、生活形態の変化からというので以前以下のようなものを書きました。

若年層が新聞を購読しない理由は金銭以外にもある
若年層が新聞を購読しない理由として金銭的問題が多く挙げられるが、そのほかにも生活形態の変化など多数の理由があると思われる。

そして経済的問題というのが大きなポイントとしてあると思います。これは何も新聞を買う金がないという家庭だけではありません。それは「新聞は買う金はないわけじゃないけど、それより優先すべきものがある」「その金(約月4000円)を出してまではいらない」という人。これが先述の原因とも相まって、かなり多数になるのではないでしょうか。

そこで月100円以下の割引を実行したところで部数に影響があるか、というと、私は「NO」だと思います。つまるところ軽減税率を適用しようがしまいが、新聞を読み続ける意思のある人は読むだろうし、読んでいない人は読み始めることもないだろうし、読むのをやめようとする人を引き止める力はないでしょう。

とりわけ増税時は他のものに対する経済負担が大きくなるわけで、よりいっそう新聞にかける金を切り詰める対象にもってゆくという人も増加するのではないかと。まあそのへんは景気の回復具合にもよるでしょうが、それでも新聞をとる方向につながるとはとても思えないので。

何故新聞業界は軽減税率の導入に積極的なのか

では何故、新聞業界の人は軽減税率導入を推しているのか。いくつか考えつくものがあります。

「軽減税率」に夢を見すぎている(新兵器幻想)

なんというか昨今の新聞を見ていて思うのがこれ。つまり実態を考えるより先に「軽減税率が適用されれば大逆転」的な、いわゆる「新兵器幻想」があるのではないかと。なんか実際にはマカオなどと対決するわけで厳しい経営が予想されるカジノや、先頃中止になった道頓堀プール計画もそうですが、新しいものは全てよい方向に働くという幻想がはびこっているような昨今、軽減税率もまたそんな感じがしてならないのです。しかし希望が優先して、実態の分析は置き去りになっていると。

将来への布石

とりあえず今回金額や直近の効果より「適用対象物」になるのが最優先で、あとはその後のキャンペーンで完全適用除外、つまり無税を目指すという感じ。まあありえないではないと思います。かなり困難でしょうが。

あと、将来消費税がさらに増税されることを見越して、その時のために今の軽減税率で留めておきたいという考え方もあります。

購読者関係なく、自社の利益のため

軽減税率導入と同時に造成の差額分、つまり8%分の料金ではなく対象外になった時と同じ10%分の料金として、その差額をまるまる新聞社の利益にしてしまうという可能性。つまり新聞社にとっては軽減税率がある、しかし消費者にとってはないのと同じになるということです。そうすればその差額は新聞社にとっては大きな利益になりますね。ひとり頭だと月100円程度の差額でも、500万部なら月に500万×100円の増収、5億のプラスになりますし。

しかしこうなると、税の「軽減」とか全く意味を持たないことになりますが。

しっかりとした税の議論が必要

上で書いたものはあくまで仮説ですし、本心が新聞社などから表に出てくるということは今後もないでしょう。推測するしかありません。
ただ、言えるのは新聞に限らず、先述の軽減税率の消費者にとって利益にならないのに導入、適用すると、金銭、事務的な問題点などだけが残り、かえって負担となる可能性も十分あり得ると言うことです。
「軽減税率」、すなわち「税が軽くなる」というのは一見聞こえがいい言葉ですが、それがどういう形ならしっかりと機能するか考えないと、余計悪い方向に働きかねません。

消費税の議論は今後も続くと思われますが、税率、適用時期、そして使われ方の正当性などと共に、この軽減税率に関しても受け身ではなく、積極的に論議し、問題点の洗い出しが行われる必要があると考えます。消費税は、消費者なら誰もが払っているものなのですから。

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