人手不足でも、いやだから労働力が集まらない根本的な理由

最近ニュースで毎日のように流れてくる「○○の業界が人手不足」というニュース。主には外食、運送業界、IT業界などから聞こえて来ます。外食店舗の前を通りかかると、高確率でやけに元気そうな若者が120%の笑顔でやりがいをアピールする求人ポスターが貼ってありますね。

さて、このあたりの失業率ですが、地道に改善はしています。(有効求人倍率については、採るつもりのないカラ求人が含まれる可能性などがあり、本当に労働者の実情をしめてしているのか疑問があるのですが、これはまた別の機会に)

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ただ、業種により偏りがかなり存在し、人を集められる業種、そして前述のような集められない業種に偏っている感じが見受けられます。

単純に考えると、「人手が足りないのに集まらないのはおかしいじゃないか」となりますが、これ、よくよく考えてみると当然なのですね。今日はそれについてよく言われていること、あまり言われていないことを両方含めて書こうと思います。

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売り手市場への変化により、労働条件の悪いところが避けられる

まずはよく言われる方から。人手が集まらないと言われる業界は、よく労働環境の厳しさが言われるところです。外食産業では「ブラック企業」が代名詞となっているところが多かったりしますし、運送業界でもその厳しさがよく語られることがあります。となると、求人が多いならそういう所を避けて他に行くよなということですね。

■参考:「ブラック企業」が嫌われている? 好景気でも「人手不足倒産」の怪 | 企業インサイダー | キャリコネ

 

ちなみにもうひとつ、人材不足の深刻な介護業界ですが、これは労働の大変さ、それに見合わない賃金体系のほかに心理的、しかもそれは介護者に対して親身な人ほど勤まらないというジレンマ(ある意味医者や看護師と同じもの)があるような気がするのですが、まとまったら書きます。

 

売り手市場が故に働けない理由

そしてもうひとつ、実はこちらのほうがブラック業界、ブラック企業に限らず深刻ではないかというもの。

現在最初に書いたように、人手不足で募集が増え、売り手市場になっています。このような情況で今まで失業していたり、非正規雇用の人が職を求める場合、はたして非正規雇用を魅力と感じるか、というところです

もちろん、非正規雇用の立場に甘んじて、その間に正規雇用を探すという手段もあるでしょう。しかし、今の日本の労働市場では、その「非正規→正規雇用」の信用が、過去の例からかなり崩れていると思われます。つまりは「非正規社員の固定化」。

 

これは不景気の時代によく言われたものですが、はたして求人倍率が回復してきてからこの状況、すなわち非正規社員になっても、そのうち正社員になれるのが難しいと言われるが変わってゆくのか、いや、やはり今の傾向では無理かもしれない。そしてせっかく求人倍率が上がってきた今なら、非正規で固定化してしまうくらならそこで費やす時間を正社員の応募に費やすという心理が働く人が多くても不思議ではないでしょう。だって、非正規で働いている間にも時間は刻々と過ぎ、人は年齢を重ね、場合によってはまた世の中が変わって雇用情勢が悪くなるのかもしれないのですから。

もし、非正規雇用でも正規雇用より待遇がよく、しかも退職後もスキルさえあれば次を探すのにさほど苦労しないという労働環境であればまた違ったと思いますが、現在のところ、日本の労働市場はその信用があまりないというところでしょう。ある意味、不景気な時期の雇い止め、契約停止などが心理的なツケとして回ってきているのかもしれません。

■参考:「正社員登用アリ」の求人広告に騙されるな!契約・派遣社員の人に知ってほしい採用の裏側|就活生のための最新業界・企業研究2015-2016|ダイヤモンド・オンライン

 

若手不足の超深刻化

さて、具体的にどのあたりがこういう労働を躊躇する層になっているかというと、やはり労働市場において求職が多い、というか、逆に言うとそれを過ぎると職の範囲が限定されてきてしまう若年層(20代~30代)が多いのではないでしょうか。もしくは出産、育児で退社したあと、再就職を目指す母親層なども。つまるところやはり非正規雇用で固定化(時間拘束)されてしまうとその後が不安だ、という人が、正社員を目指すために職を探す失業状態やフリーター状態となると。そうだとすると、各業界、とりわけ非正規雇用が支える業界は、若者の不足が更に深刻化してくる可能性は非常に高いでしょう。

でも、最初に語ったような労働環境が厳しい企業だと、正社員にしても自分の方からやめていってしまうというジレンマが。まあもちろん人を増やして賃 金面以外でも待遇をよくするということをやってこなかったツケであるのかもしれませんが(そしてもう遅いのかもしれないのですけど)。

 

余談ですが、女性の再就職の場合、育児(託児所など)も含めて非常に困難ということも聞かれます。よく政治では「女性の積極活用」とか言われていますが、本当に活用したいのなら、無理な立場の引き上げじゃなくて、まずはこういった育児、健康など環境周りの整備で、それで実力が発揮出来れば無理に立場を引き上げずとも自動的に評価されると思うのですが如何。

 

企業側の「リストラのトラウマ」

じゃあ何故企業は正規社員を雇わないかというと、おそらくこれから経済が完全安泰だと信じていないような気がするのですね。つまりいつ、また失われた10年のように不景気になるかわからないし、そうじゃなくても業績が悪化する可能性があると。

そして、正社員化に踏み切れないのは、過去苦労して行った人員整理、すなわちリストラの苦労(別に心理的なものだけではなく)が身に染みている可能性もあります。故に経団連などがクビを切りやすくする法制に変えるように主張していたりするのでしょう。

 

賃金のみならず「将来の担保が」ないと人が集まらない時代

つまるところ、その時の賃金のみならず、将来への担保がないと職に就けないという人が多いのが現状ではないかと思うのです。それは今の求人倍率が上がっているチャンスなら、「一時」を無駄にしても。

まあブラック企業が潰れる分には因果応報となりますが、それが別段(経営者の意志的な意味で)ブラックではないけど、構造的に人が集めにくい企業まで大きく影響してくるのはありえる話でしょう。

 

日本の労働市場はどう変化するのか

ここ20年、終身雇用が当たり前だった時代が、バブル崩壊と失われた10年を経て劇的に変化しました。そして労働市場も大幅に変化し、雇用者、被雇用者共にその影響を大きく受けていると思われます。そしてそれにより歪みも大きく出ているのが現状ではないかと思うのです。ただ、もう終身雇用に戻るなんていうのは事実上経済的に不可能なわけで、そうではなくても労働者がどう保護されるか、そして人材がうまく回るか、そういう法制の構築が政治にも求められているのかもしれません。