特定秘密保護法問題であまり語られないもうひとつの懸念点

「特定秘密保護法」が国会で審議入したようで、各種報道がなされています。

■(archive)秘密保護法案審議入り 野党反発、知る権利侵害の懸念も:朝日新聞デジタル

さて、これの問題点などについては各種報道で書かれていますが、同時に機密保護の観点からこれを制定しなければならない理由も政府によって説明 されています。その辺は詳しく書くと長くなるので、ここのところ連日でやっているニュースや資料を参考にしてください。

以下は一例。一番上のリンクに各党や各団体の主張リンクがあります。

秘密保護法 – 11月7日から審議入り。

特定秘密保護法について (内田樹の研究室)

日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:秘密保護法とは?

しかし、秘密保護法案について、私が法案の具体的な問題点とは別に、報道ではあまり語られない部分においてひとつ懸念があり、そして法案を支持している人に尋ねたいことがあります。それは……

「仮に政権交代で政府(与党)が変わったとしても、その法案を支持できますか?」

ということ。

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これから政権交代の可能性がないことなんてあり得ない

言うまでもなく、日本では選挙により政権与党が変わることがあるのは、この前の2009年の民主党に政権交代した例ではっきりしています。そしてもっと溯れば、1993年に日本新党などの連立政権により、自民党の55年体制が崩壊した時のものもあります。そのほかにも連立政権でその他の政党が入り込んだりしたことも多数ありまして、現在の事実上の自民、公明の与党体制となっています。

私が子供の頃、 55年体制の時代には、自民党以外が政権をとるなんて考えられないことでした(まあ自民党内派閥が事実上政党争いみたいなもんでしたけど)。しかし、そこから20年は政権与党が連立含めめまぐるしく変わっています。こんな状態ですから、数年後にどうなっているのかは予想がつきません。まあこのままということもありますが、絶対このままというのはいくらなんでも楽観が過ぎるでしょう。

となると、時流の流れで思わぬ政党が政権を担う可能性はありえてしまうわけです。

となると、特定秘密保護法、いやどんな法律においても「あなたの一番嫌いな政党が、何らかのはずみで政権をとってしまったとしても、法案をその政府が掌握、施行する」状態となる可能性があります。さすがに既存の政党でそこまでやりそうなところはない、と思っている方も、この先、それをやりそうな新しい政党が生まれ、そして一気に部分的であれど人気を掌握して、政権をとる、もしくは連立などで政権与党になる(これなら少数でもあり得るので)という可能性は、今までの歴史から決して否定できないでしょう。

戦前の悪法と言われた軍部大臣現役武官制

では、日本史で法律の施行が悪用された前例はあったのか、となりますが、有名なところでは「治安維持法」があるでしょう。これについては、その周辺のメカニズムも含めて考察した記事の引用がちょうど以下にあったので、リンクしておきます

秘密保護法のふしぎ – 誰かの妄想・はてな版

しかし治安維持法ばかりではなく、もうひとつ、最初の法律の意図からずれて、とんでもない施行のされ方をされるようになった、戦前悪法の代表的なものがあります。それは「軍部大臣現役武官制」というもの。

この軍部大臣現役武官制、日本史を学んだ方なら聞いたことはあるでしょう。簡単に説明すると、戦前内閣には陸軍大臣、海軍大臣が存在しましたが、その補任を現役の武官に限るとした制度です。

この法律、何が問題だったとかというと、新政権が内閣を組閣したとしても、その内閣に対して軍部(帝国陸軍、海軍)が軍部大臣を補任しなかった場合、その内閣が成立できなくなってしまったことです。すなわち、軍部がその内閣のメンバーを気に入らない場合、わざと補任しないことで、その内閣をつぶせてしまう状態になってしまったのです。同時にその内閣組閣後も軍部に気に入らない政策をとった場合。軍部大臣を辞任させて後任を指名しないで、内閣を成立させないようにもしてしまえるようになったわけです。ここで軍部の力は政治に対して急速に増してゆくことになります(実際に組閣断念に追い込まれたことも何度かあります)。あとは日本戦前史の通り。

■参考:軍部大臣現役武官制 – Wikipedia

軍部大臣現役武官制も最初から軍部権力を想定していたわけじゃなかった

しかしこの軍部大臣現役武官制、何もこのような事態を想定していたわけではありませんでした。もともと制定したのは明治時代、政党政治がスタートするあたり、それに対して藩閥政治の対抗手段のひとつとして、当時の軍部を掌握していた藩閥代表である山県有朋が成立させたと言われています。しかし、一度は廃止されたものの、1936年広田弘毅内閣の時に復活させられてしまったという経緯があるのです。

広田弘毅は文官であるにもかかわらず東京裁判でA級戦犯で死刑判決が出たのは、この法律の復活時の総理だったが故に責任を問われたという説もあります(ほか、ソ連が主張したとか、死刑には文民ひとりが決まっていたので自殺した近衛文麿の代わりにその対象になったとの説もありますが)。

戦後においては文民統制(シビリアンコントロール)が徹底され、日本国憲法にも第66条2項に「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」と明記されています。

これは政党の争いというよりは、政党政治と軍部の争いですが、当初制定した法律が大幅に意図から外れ、結果的に大悪法になってしまったという例としては、治安維持法同様に注目すべき存在と言えるでしょう。

特定秘密保護法案は悪用される危険はないのか

話を秘密保護法案に戻します。

さてこのように、今は大丈夫であっても、権力者が変われば法律を悪用される可能性というのはあるわけです。だって悪用したい側はその理由を見つけるために法律を探すのですから。故に「法律は、たとえどんな権力(現在も含む)がそれを握ろうと、濫用できないように枷をつけなければならない」と考えます。それはたとえば曖昧な部分を残さずに定義を明確にし、それに法律を使う側が違反したときはどうするかなども考える必要があると。口約束は全くアテになりません。だってその法律を行使する人間や組織が変わる可能性があるのですから。

しかしながら、現在の特定秘密保護法案ではそこにも穴があり、それが政府の秘密隠しや知る権利の阻害につながりかねない箇所を残していることも指摘されています。その状態のまま、危険な政党(今あなたが一番嫌いな政党が何かの間違いで政権をとって、且つそれの斜め上を行く状態くらいの可能性で考えればと)がその法案を握っても、この法律の存在に賛成できるか、その想定をしつつ、それでも法律が大丈夫なようになっているかを考えないといけないのではないかと。

児童ポルノ法改正案に含まれる類似の問題点

これまた最近よく話題になる「児童ポルノ法改正案」ですが、この法律もとりわけ単純所持処罰の部分を悪用が懸念されています。たとえば児童ポルノの定義をずらしたり、送りつけの単純所持で事実上の冤罪を仕掛け手有罪にすることもできてしまうわけで、その危険性反対理由のひとつになっています (ほかにも数多くの問題があるのですが、それはまた日を改めて)。繰り返しますが、これを仕掛けるのは今は想定し得ない悪人(普通の人が悪人に変化する場合も含む)というケースだってあるわけで。

とにかくどの法でも法律名や前書きだけでなくその中身や問題点を知ろう

法律はその内容を知らず、無知のまま決まってしまうのが一番恐ろしいと考えます。 賛成するにしても反対するにしても、その法律の中身を、上のような第三者が法律を握る可能性も踏まえて、よく考えるべきでしょう。

法律の名称や前書き、制定者の主張が、その法律の本質を全て表しているとは限らず、隠れた問題点というのは潜みやすいものなので。

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