児童ポルノ法改定案とは何か。その問題点とは何か~児童ポルノ法の基礎知識

このようなニュースが、今月上旬から出てきました。

この『児童ポルノ禁止法改定案』 、いろいろと問題のある法案として有名なのですが、実際どのくらいの人が具体的なことを知っているかというところがわかりません。故に、提出が近い今となっても「この法案は危ない」という言葉だけを連呼しても理解が広まらないと思います。ましてや、名前と概要だけからすると、児童を虐待する行為に対して厳罰化するみたいで悪い法案に見えないところがまた問題点をかき消してしまう要素となっていると思われます。が、この法律はそんな単純なものではなく、非常に複雑な問題を内包しています。

故に、今回、この問題点について、この法案やこの問題をよく知らない人にも理解が広まるように書いてみたいと思います。

スポンサーリンク

 「児童ポルノ法」とは何か

さて、この問題を語るとすると、やはりここからになりますね。

「児童ポルノ法」と呼ばれているものの正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」という長ったらしい法律名になります。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律

制定は1999年。第一条に当たる目的は以下の通り。

(目的)

第一条

この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。

つまりは、性的搾取や性的虐待から児童の心身を保護して、処置を定める為の法律であり、児童の権利を擁護するための法律であるというのが法律の目的です。

これがこの法律の大前提です。この条文、特に黒で協調したところをしっかりと覚えておいてください。今後何度も出てくると思いますので。

具体的に禁止されたのは、児童買春やその斡旋など(第四条~七条)、児童ポルノの提供、及びそれを目的とした製造や所持など(第八条)です。ニュースでもこの法律の名前を聞くときはだいたいが児童買春での逮捕、もしくは児童ポルノの販売やネット(P2P)での配布による逮捕、というものが多いでしょう。実際、多くの場合はそれら児童買春や販売、配布の規制としてこの法律が適用されてきました。

 児童ポルノ法改正案の問題点

さて、今回これに「改正案」とついていることから、この法律を改定することが提出されようとしています。ただ、この改正案というのが大きな問題を孕むということで以前から問題の声が挙がっていました。

実は詳しい改定案がまだ公表される前なのでわからず、出ている情報から推定するしかないのですが(実はこの、なかなか詳細情報が公表されないというのも、かつての東京都青少年育成条例の時と同じように不安が大きくなる要因でもあります)、山田太郎議員のエントリーによりますと、議員立法を提出する与党側から資料は渡されているようです。それによると

1 適用上の注意規定の明確化

2 児童ポルノ所持等の禁止

3 事故の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持等についての罰則の新設

4 インターネットの利用に係る事業者の努力規定の新設

5 被害児童の保護のための措置を講ずる主体及び責任の明確化

6 その他

といったところがあがっています。

注目すべきはまず3で、事故の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持、児童ポルノに係る電磁席記録を保管した者に1年以下の懲役又は100万円以下の罰金という罰則規定が設けられていることです。この単純所持にも問題が内包されているのですが、これは後述。

しかし何より注目するべきなのは、実は小さく書いてある6 その他の(2)検討規定にあります。そこに書いてあるのは以下の通り。

①児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG,疑似児童ポルノ等)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究

②インターネットによる児童ポルノに係る情報の閲覧の制限(いわゆる「ブロッキング」の措置)に関する技術の開発を促進

 →3年を目処として①、②を勘案しつつ検討、その結果に基づく必要な処置

見て分かるとおり、その他の部分で二次元に対するものと、これらを理由としてネット規制の検討を含んでいるわけです。

ここで最初の所に戻ります。第一条の目的には「これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。」とありました。にもかかわらず、この法が対象とするところではない、実在しないし、虎を屏風から出すようなことでもしなければ出てもこない二次元創作物において、同法の対象としようと検討されているわけです。

児童ポルノ法改定提出の歴史

しかし、これははじめてではなく、実はこの法案は2004年に部分修正で可決、そして2009年6月にも提出されておりましたが、政治上の諸処の事情、具体的には都議選による自民党敗北とそれから導き出された解散によって流れた経緯があります。そこでも似たようなものが検討されていましたが、そこでも、附則として同じような二次元規制に結びつく検討要綱が盛り込まれていました。

そしてもうひとつこの時に出された法案で注目すべきなのは、この時2009年6月26日に行われた児童ポルノ禁止法改正案の審議での答弁において、枝野議員がかつて宮沢りえのヌードで有名になった『サンタ・フェ』をとり、それも対象になるのかと尋ねたところ、警察庁出身の自民党葉梨議員は「児童ポルノかもわからないなというような意識のあるものについてはやはり廃棄をしていただくということが当たり前」と発言。そこまで広範なところが対象になるのかと物議を醸すことになります。

宮沢りえのヘアヌード写真集 17歳で撮影なら児童ポルノ? (1/2) : J-CASTニュース

 本日のまとめ

とりあえず長くなったので、一区切り。今日はとりあえず。

・児童ポルノ法とは(元来)どんな法律で、どんな目的のためにあるのか

・今、まさに児童ポルノ法の改正案が出されようとしている

・その改正案には二次元規制への道ををはじめとしていろいろな問題がある

というところを覚えておいてください。

とりあえず予告がてら問題点の列挙。これらについて書いてゆくと思いますが、順不同で予定は未定。

■「児童ポルノ」という定義の曖昧性

■冤罪の危険性(今話題のウイルス冤罪などと類似の例)

■恣意的運用の可能性

■二次元作品規制(萎縮効果も含めて)

■『クールジャパン』が表現規制となる可能性

■規制方面にかまけ、(法律の本質である)実在の児童保護やケアを置き去りにする可能性

■法律が逆に青少年に対する悪影響を与える可能性

■もし、危険な勢力が法を悪用したらどうなるか

児童ポルノ法以外の表現規制に関わる動き

その他表現規制で書くのを予定しているところ。

そして更に今回、主に表現規制の件から、『青少年健全育成法案』と『TPPの著作権分野』における表現規制の可能性についても書こうと思っています

TPPの著作権分野における表見規制の危険性は、マンガ家の赤松健さんなどが既に語っておられますので、先にお読み頂けると。

★ホントは怖いTPP ・・・「非・親告罪化」で日本の漫画界はどうなる? | 赤松健の連絡帳

超人気(『ラブひな』『ネギま!』)漫画家(赤松健氏)が警告「TPPはアキバ文化を滅ぼす」  | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社]

#TPP から #同人誌 を守る事の難しさ。 #二次創作 に未来はあるのか? – Togetter

青少年健全育成法案については、目立っていませんでしたが、新規提出を準備中という話も聞きます。

実は新規とはいいましても、この法律以前に似た法律案(青少年有害環境対策基本法)がもう10年も前に出てきまして、そこでも危険性が論じられたことがあります。こちらについても、そのうち書こうと思います。

■参考:青少年有害社会環境対策基本法案 – Wikipedia

■参考: 【 #表現規制 の歴史】国立メディア芸術総合センター構想頓挫と、漫画やアニメ規制法は無関係なのが事実、という話。 – Togetter

さらに、都議会議員選挙が迫っているのもありますし、かつて『東京都青少年健全育成条例』についてもあれからの動向も踏まえ触れたいなと。

1990年から数年間、有害コミック運動というものがありまして、この時にはかなりの表現の規制、及びその影響を恐れた自主規制が行われました(詳しくは以下で)。それから20数年、今年は日本のマンガのみならずアニメやゲーム、ややもすると業現物全般にとって、20年前に匹敵する、もしくはそれ以上の運命の分かれ目となるのかもしれません。

■参考

スポンサーリンク

フォローする

関連記事
お仕事依頼について About contact
お仕事依頼について About Sitemap contact