アニメ『さくら荘のペットな彼女』の「サムゲタン」問題から見る物語におけるアイテムの重要性

今ネットで何かと話題になっているアニメでのワンシーンについて。
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この騒動について、ちょっと思ったことがありましたので書こうと思いますが、それにあたって、いくつか大前提として最初に。まず、この作品はアニメとしても完結していません。まだ放映中のものです。よって、あくまで途中を切り取っての判断となります。
そして一番肝心なのは、私が原作およびアニメに全部は目を通していない、ということです。原作の一部(一冊)およびトルネに撮り溜めしたまま放置しておいたものやニコニコには目を通しましたが、かなり飛び飛びになっている可能性があり(そもそもニコニコ現時点でまだ5話までだし)、さらにネットで話題になった知識が加わっているため、無意識にそこからのバイアスがかかっている可能性もあります。本来なら、完結したものを全部読み、見た上で判断するのが筋なのでしょうが、先が長すぎるので現時点での文章として書こうと思います。それをふまえて今回の文章をお読みいただければ幸いです。


物語におけるお約束アイテム

さて、今回の騒動ですが、概要は上記リンクのように、アニメ『さくら荘のペットな彼女』の第6話において見舞うシーンにおいて作られた料理が、ライトノベル原作では、「シンプルなおかゆ」となっていたのに、そこが「サムゲタン」になっていたことから、ステマじゃないか、韓国推しじゃないかなどという騒ぎがわき起こったというのが大筋ですちなみにサムゲタン、ですが、調べてみるとなんか韓国古代からのの料理というより、どっちかというと中国発祥最近の料理っぽい感じらしいです。詳しく調べないとわかりませんが、個人的には漢字表記が多いので、事前知識なしで知った場合は中華料理としか見えないのですが。

■参考:サムゲタン - Wikipedia

ネットでは韓国系が絡んできて騒ぎになっている面もあるようですが、実はここが韓国がらみのことが混じらずとも、騒ぎになったかはともかく違和感を覚えただろう人は数多くいると思います。というのは、ここの部分におけるサムゲタンが、というか粥じゃないことが「物語のお約束アイテム」から逸脱しているので。


さて、物語のお約束アイテムとは何か。とあるイベントにおいてはそれに強く関わるアイテムというのが決められていることがあります。たとえばクリスマスなら洋風ケーキ、お祭りではたこ焼きやイカ焼き、あんずあめ、夏の海ならかき氷やゴムみたいなやきそばとかのびたラーメンみたいな感じで。仮にクリスマスに和菓子だったり、お祭りでケーキ売ってたらどこか引っかかりを覚えますよね。ちなみに食べ物以外でもそれらは存在し、先の屋台ならヨーヨーすくいや金魚すくい、入学式なら桜、正月なら松飾りやお年玉、初詣等々。そして時期に左右されなくとも、学校なら黒板や黒板消し、理科室の骸骨や音楽室のバッハ等々。

このように、イベント、場所といったものに、密接にイメージが結びついたアイテムというのは物語において多数存在します。まあ現実ではクリスマスはケーキ以外のものになっていたり、祭りの屋台でケバブやらチヂミやら出てたりしますが、あくまで物語の文法としては昔ながらの定番というのが決まっていると思われます。何故それらが定番となっているのかというと、それは日本人の生活における習慣上、そのアイテムが場所をイメージさせる、もしくはイベントにはそのアイテムという不可欠な関係になったからではないかと思われます。さっきは祭りから金魚すくい、桜から入学式と書きましたけど、逆に金魚すくい→祭、桜→入学式(卒業式)とアイテムからイメージする人も多いでしょう。

日本の自宅お見舞いや看病におけるお約束アイテム

さて、家でお見舞いや看病にもそれが存在し、その定番となるのが「体温計」「氷まくら」「桃缶(缶切りで開けるやつ)」「(滅多に食えない)メロン」、そして「白粥」。さて、今回はこの白粥がサムゲタンに変わったことで騒動になっているわけですが、主体はここにあるように思えます。つまり、お見舞いや看病の時のお約束である白粥というアイテムを、原作から改変して入れたことで、強烈な違和感を視聴者に与えてしまった、というところじゃないかと。そしてそれの理由を探るにステマなどの騒ぎになったと思われます。

つまるところ、物語のおけるアイテムの配置を大きく間違えた、というのが私の感想です。正直韓国製じゃなく、スペインのアロス・コン・レチェだったり、イタリアのポレンタという粥だったとして「ちょっと待て」と話題になったと思います(むしろ中華粥なら日本の白粥と似ているのでスルーされていたかなと)。

仮に何らかの事情でこのサムゲタンを入れなければいけなかった場合、もし私ならそのための伏線(例えば何かの都合で鳥が手に入った、主要人物のやりとりなどで作り方を教えてもらった等々)で、それである必然性を前もって埋めていたかなと。そうすればそこに出す必然性が出てきて、違和感がこれほどまでではなかったかと。もしくは上記のような伏線を張りつつ、見舞いとは関係ない食卓で出すなど(これの該当シーンが見えないのであてはめられるかどうかは不明ですが)。

アイテムが持つ「強さ」

このように物語においてアイテムというのは、文字通りただの道具ではなく、それこそ重要なアイテムになることはしばしがあります。自分も「シナリオを書くときにはアイテムは強さを持つから注意しろ」と言われたことがあります。わかりやすい例で言うと、主人公とヒロインがいて、ヒロインが肌身離さず持っているものがあったとすると(ギャルゲーなんかだと、ペンダントとか子供の頃の写真とかね)、それは読み手に「これ、何か意味があるんじゃないか」と思わせてしまいかねないということですね。重要であるものを重要でないように見せかけて、あとで重要とネタバレしたときに読み手を驚かせれば勝ちですが、逆に重要でもないものにひっかかりを与えて気にさせてしまい、逆に何でもないと肩すかしを食らわせてしまうこともありますが(まあ書き方によっては誘導トラップにもなりますので、全部が全部そうではないですが)。

さて、サムゲタンに戻ると、二つの考え方が出来ます。ひとつはその場面における白粥というアイテムを軽視してしまい、こうなってしまったこと。そしてもうひとつは、実はこのサムゲタン、物語の今後に関わる重要またはそれに準ずる伏線で、このイベントを発端としてサムゲタンがキーとなる、そしてそれは読者も納得する重要なパーツとなり得る可能性。いずれにしても先を見ないとわかりませんので。

一部の伝聞だけではなく作品を見て語ることが重要

最後に始めにも書いたことをもう一度書いておきます。この話はあくまで全体の一部であります。放映も終えていません。よって、この料理を出したことが意味を持つ可能性も否定できません(その場合ネタバレになるので、先を言えない可能性もあると)。またもうひとつ。今回の騒動だけの話ではないのですが、このような作品に対しての話題を語る上で、作品をネットにおける伝聞での情報しか見ておらず、そこでしか判断していない場合は、その判断がミスリードになる可能性があることも念頭に置いておくべきだと思います。
今までもネットにおいてマンガのコマを部分的に貼り付けて、そこで作品の意図とは別の話題になりやすい、注目させやすい読ませ型(ひどいことを言うとアクセス数を集めやすいとかRTを集めやすい)をする例が数多くありましたのもふまえて。もちろんそれらまとめなど抽出されたものを見ることはかまわないですが(まあ画像とかの場合引用のルールに反すると著作権とかの問題はありますが)、それでもそれはあくまで作品の一部を誰かの意図で抽出したものということを踏まえて捉えず、全体を見た、読んだと勘違いすると、大きな間違いを引き起こすことになりかねないでしょう。作品はあくまでそのものを見て、読んで、「自分で」判断するものと思いますので。

あと、ステマの有無とか言われてるようですが、それはどうでもいいです。というか当事者が暴露でもないと確認しようがないし(実際今までステマ言われたものも、大半は確認出来ずになあなあになって終わってるしなあ。だからこそステルスなマーケティングなんだけど。これもこのままじゃまずいとは思いますが)。


そんなわけでこの作品においても最終的に感想を語るには、もうちょっと時間をかけて最後まで見てからの判断も必要と思われます。もちろんこの話題という作品の一部ではなく、アニメの出来全体を見て。