空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

若年層が新聞を購読しない理由は金銭以外にもある

このようなデータがありました。

japan.cnet.com

最近、新聞の販売部数が下がっているというのはよく聞くところです(参考:新聞の販売部数などをグラフ化してみる(下)……主要全国紙編とオマケ:Garbagenews.com)。
それに対して、若年層が新聞を読まなくなってきていることが、大きく影響しているのは間違いないでしょう。

では何故若年層が新聞を読まなくなってきたのかというと、上にあるように金銭的な要因が主と考えられます。つまり現代ではPCや携帯電話でネットを利用してほぼ無料でニュースが取得出来るのに、月々4000円程度かかる新聞をいちいち取る必要があるのか、ということ。年額にすると5万弱くらいの違いがあるとなると、やはり新聞を読まないほうに行ってしまうでしょう。それを証明するように、活字への感心は自体は若年層もそれより上の世代と比べて低いとは言えず、むしろ他ネットのニュースサイトから得る量はむしろ他の世代より多くなっています。まあどっかではそこのところを微妙に勘違いしていますが。

で、ここで思ったこと。あり得ないことではありますが、明日から新聞が申し込んだ人にはタダで配布するよとなった場合、若年層の人はそれを申し込むでしょうか。だけどそうなった場合、私の予想では今まで新聞を取っていた人、もしくは取っていたけど金銭的都合で止めた人は多くが申し込むと思いますが、新聞を読んでいなかった人の間では、あまり増えない、と思われるのです。それは、新聞がいらない理由が、金銭的負担以外にも数多くあると思われるので。しかしそれはネットで言われているマスゴミだの偏向だのというものではありません(だってそれならインターネットの一次ニュースサイトでも同じものを含み得るのだし)。というわけで、その要因をちょっと書いていきます。
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金銭的問題だけではない若年層の新聞購読率低下

若年層における新聞の購読率低下が金銭的なものだけではないのは、先程のページにあるデータを見ると見えてきます
「料金がかかるから」というのがトップですが、その次に「読むのに時間がかかるから」というのがあります。そして「余計な情報が多いから」というのが5番目にあります。新聞の朝刊の場合、だいたい20ページ超がありますが。これをまともに全部読むとなると、数時間はかかりそうです。

あと、めくる手間もあるでしょうね。さらに新聞の紙面は広告が多く入ります。ここで「余計な情報が多く」「読むのに時間がかかる」と思わせるのでしょう。ただ、インターネットにおいてサイトに上がっている情報を全部読むわけではないように、新聞でも情報を取捨選択する人がほとんどでしょうから、それは切り捨てればよいので大きな問題ではないと思います。むしろそれより大きいのは、下位にある「構成がわかりづらくて読みにくいから」ではないでしょうか。

新聞にも一応どこにどういうジャンルの記事が載っているかというのはだいたいのルールはありまして、政治面は2面から、社会面は後ろのほうとだいたい決まっています。長年読み慣れている人はすぐにわかるでしょう。ただ、初見の人にとっては明らかにわかりづらいと思うのです。それに上のはだいたいのお約束であり、経済面やスポーツ面は新聞社ごとによって掲載されている位置が違うことが多いです。いや、同じ新聞でも、日によって違うことがあり、見つけようとページを開くと広告でまた探さなければいけないという手間がかかることもあるでしょう。

このように新聞の構成を把握するにはにはある程度の「慣れ」あるいは「お約束の把握」が必要と思われます。確かにネットがない今まではそれでよかったかもしれませんが、最初から明確なジャンル分けがされているインターネットニュースのほうに慣れると、そちらの構成がわかりにくいと思うのは自然でしょう(まあ、ネットでも慣れは必要ですから、どっちに先に慣れるかって話でもあるかもしれませんが)。

他にも「文字のサイズ」、それにここにはありませんでしたが「検索で発見できない」というような、ネットに比べてのデメリットがあり、ネットでのニュース取得に慣れてしまった場合は紙にメリットを感じない人も多いのではないでしょうか。

ゴミになる新聞

さて、上の要因だけならまだ「タダならもらっとけ」と思われる人もいるかもしれませんが、たとえタダでも紙媒体の場合それ以上のデメリットがあります。というのは、5位にある「ゴミが増えるから」というもの。実家では一誌を購読しているのですが、それの広告含めまとめて出す一月の資源ゴミの量は、高さ50センチくらいにはなります。さて、これが一人暮らしのワンルーム住まいだった場合、かなり邪魔になる可能性は否定できません。ちなみに私の仕事場には広告やフリーペーパーがよく入ってくるのですが、かなり邪魔に感じます。新聞に価値を見いだせない場合、それと同様に思う人も多いのではと。最近は紙媒体の衰退がよく言われますが、本や雑誌はまだとっておくことに価値を見いだす可能性がありますが、新聞の場合は多くの場合完全に1日で使い捨てな分、邪魔に感じやすいのではないかと。

新聞の宅配制度が現代にそぐわない

さらに最近思ったのが、新聞の宅配制度が若年層の新聞離れを起こしているのではということ。新聞は言うまでもなく、朝と夕方(夕刊はないところやオプションの場合もあるけど)配達されてきます。しかし、仮に仕事の都合などで朝、もしくは夕方にいない場合、自宅の新聞受けにそれが入れたままになりますね。これは事実上「この家に人はいませんよ」と表示しているようなもので、セキュリティ的にあまり好ましくありません。まあ一日くらいならば昔からあったでしょうが、仮に仕事で数日家に帰れない場合、新聞が新聞受けに大量に溢れることになり、ずっと不在であるということを表示するようなものになるなどいろいろ邪魔でしょう。

思うに、新聞の配達における想定って、昭和の家庭形態のままなのではないでしょうか。つまり、働き手は朝出勤して、家には主婦が少なくとも朝にはいて、夕方にも同じようにいる。その間隔が24時間以上、つまり新聞が詰まってしまう時間家にいないのは家族旅行など例外的な時のみであるという感じ。だけど現在は深夜帯の仕事もあれば泊まりもあります。さらに一人暮らしの人も多いでしょう。そうなると先程書いたような問題が出ます。かといって、いちいち配達を止めるのは面倒ですし。

そういえばもうひとつ、玄関にオートロックがついている人は、いちいち朝マンションの入り口まで新聞をとりにいかなくてはいけないということで、高層階に住んでいる人は新聞を取らないという人もいると聞いたことがあります。そのマンションだけなのか、それともオートロックがついているところがどこもそうなのかはわかりませんけど。あ、そういえばオートロックを付けていると同時に勧誘員が来にくいので、それで新聞の契約に結びつかないって話も聞いたことがありますな。

理由の本質的な追求がされていないのではないか

このように金銭や内容だけではなく、配達形態においても現代の若年層のライフスタイルとあわなくなってきているのではないかと。もちろん需要が全くなくなったとは言いません。ネットを使いつつも新聞(紙)やチラシに需要を求める人もいるでしょうし。ただ、その場合も上のようなケースでデメリットを感じている人はいるのではないでしょうか。

前にも書きましたが「若者の○○離れ」と言われているものは、たいてい昔からの変化における今の若者の状況を考慮していないケースが多いのですよね。例えばライフスタイルとかもそうです。これもそれの一つで、最初に書いたように若者の心理という「天狗のせい」みたいにできる活字離れに要因を求めて、本質的な要因が追求されていないのではないかと思えるのです。

■参考
nakamorikzs.net


さて、今まで考えてきたことからすると、さすがに紙媒体としての新聞がまた上向きになるとは思えず、絶滅はしないまでも新聞はこれからも先細りとなってゆくと思います。ただ、新聞社でも新たな取り組みはなされています。例えば今年、日経がWeb刊を始めました。これを最初に見た時、電子版の料金が紙媒体とそんな変わりないので、現物がない分広まらないのではという話をわりと聞きましたが、こうやって「紙媒体の新聞を持たないことによるメリット」が存在するとしたら、案外こういった電子版が主流になってきてもおかしくないのかもしれません。特にiPadなどのように、何処でも読める環境が普及してくれば尚更。

このような試みが成功して、新聞は新しい道を探るのでしょうか。