日本において電子書籍はどういう形で発展してゆくか予想してみる

※この文章は2010年4月19日に書かれたものです。

Timestepsで以下のようなものを書きました。

5月には日本でiPadも発売される予定ですし、そこで今まで上のエントリーで書いたように10年間、普及しなかった電子書籍の波が一気に押し寄せてくる可能性はあります。

そこで考えたのが、このiPadなりKindleなり、もしくはその他の端末で電子書籍が普及するとしたら、いったいどのようなプロセスを踏むのか、ということ。どうも動きを見ていると、既存の出版社がすぐに参入して自社のコンテンツを出す、という可能性は限りなく低いように思えます。となれば、それ以外の手段で電子書籍は広まるのか、ということになりますが、私の予想では「(たとえ最初は既存大手が出さなくても)広まる」と考えています。どうしてそう考えたのか、というのを今日はちょっと書いてみることにします。

まず、iPadが上陸したら、まず最初にそれを最初に買うのはこのテのガジェット好きな人達でしょう。そして、その人達が触れてそのおもしろさのアピールをすることで、徐々に広まりを見せてゆくでしょう。まあもしそこで面白みがなかったとしたら、そこで終わってしまうかもしれませんが、個人的にそれはないと思います。その理由は「iPadは電子書籍リーダーのみではない」という点があるので。むしろ最初のうちは電子書籍含めて機能を楽しむだけで満足し、その次に様々なおもしろいアプリを使うという感じになるかと。故に電子書籍の購読は最初のうちは低空飛行から始まるのではないでしょうか。そもそも日本語の電子書籍の数も最初の内は少ないでしょうし当然と言えば当然ですね(普段から洋書を読むような人は別だと思うけど)。

なら、国内において電子書籍はどのようにして広まるのかというのを予測した時、先述のように既存書籍が大々的に展開されるとは思いません(もし出るとしても、とっくに旬の過ぎた本の再利用的なものかなと。しかも高値)。あと、よく作家が出版社を飛ばして個人で配信するようになると言われることがありますが、それはかなり普及してからならともかく、今出版社を通して仕事をしている人で最初のうちからそんな勝負に出る人は少数ではないかと思われます(佐藤秀峰氏あたりは何か出しそうな気がするけど)。しかし、電子書籍は徐々に刊行が増えてゆくでしょう。誰からか。それは上で書いたような「iPadを購入したガジェット好き」が多い層から。

こういったものが好きな人には、自らのブログを持って情報を発信している「ブロガー」もかなりの数いると思われます。そして、それぞれにおいて何かの知識を持っている人もいるでしょう。そういった中から個人で、もしくは電子出版サイトを通して電子書籍を出版する人が出て来るのではないか、と思われるのです。今、紙媒体で本を出すという行為はかなり敷居が高いと思われます。それはたとえネタがあっても。出版社ならそこまで名前の知られていない人が通すのには人脈を構築したり、企画書を作成したりと苦労をすることになるでしょうし、それなりに営業力が必要となるでしょう。しかし自費出版なら金がかかります。ですが、電子書籍でしたらネタがあって文章を書けば、それを配信するのにそこまで敷居は高くないでしょう。電子出版サイトを使えば、手続きもそこまで複雑にならないと思われます(このあたりの仕様がまだよくわからないので言い切れませんが)。

故に、そういった「ネタを持っているけど、今まで手段がなかったのでブログorサイトに書いていた」という人達がそのネタを書籍用にまとめたものを電子書籍として配信する、ということが早い段階から行われるのではないか、と思うのです。

もちろんもともと本をいくつも出しているような人も参入するでしょうが、それと同じくらい、出版に関して未経験な人がこうした電子書籍に手を出すのではないかと。というのは、未経験な人前述の通り紙媒体で出力する術がないので。つまり本を出すまでに行かないので、自分のサイトやブログで出力していたネタを、試しにまとめて電子書籍で出してみるという感じで。何より全く売れなくても徒労に終るだけで、金銭的損害はさほどでもないので、試しに出してみるというケースはわりとあり得るのではないでしょうか。もちろんそういった人達には紙媒体でも電子媒体でも製本や出版のノウハウを持っている人は少数でしょうが、それでもトライしてそのうちネット上でノウハウが書かれ、それが蓄積されてゆき、そのうち「じゃあ自分もネタあるし出してみようかなあ」と思う人が増えてくるのではないでしょうか。

逆に本を出すような人はもともと出力の場があるので、そこまで性急に電子書籍で書く必要はないのかもしれません(逆を言えば、本を出せない人は需要が高いとも言えますが)。さらに、出版社とのしがらみも邪魔をする可能性もあります。ただ、市場規模が拡大すればまた変わってくるでしょうが。

もちろんこういった素人出版の流れはブログやサイトを持っていない人でもよいのですが、それらを持っているほうが有利になる点はあるでしょう。というのは、電子書籍に限らずこういったダウンロードコンテンツは必要経費が低いので参入しやすいかわりに、広告に対しても金をかけられないというのがあるからです。これはゲームのダウンロードコンテンツや、音楽でも同じでしょう。さらに参入のしやすさから量は増えますので、ますますその中に埋もれることになります。そこで電子書籍をアピールするために、自分のサイトやブログでそれをアピールすることが重要となるでしょう。そしてそこで注目されれば広まりを見せることもあるでしょう。つまり電子書籍においては、そういったサイトやブログの運営が今までの紙媒体の書籍以上に必須となると思われます。

ついでに言えば、それらをアピールするのを主軸としたサイトやブログも多く出現しような気が。電子書籍専門の書評サイトが生まれたり、小飼弾氏の書評に電子書籍のほうが多くなる、なんてこともあり得るかもしれません。
そんな形で徐々に市場が広まってゆき、それがさらに人を集めて、大きな市場となるのではないでしょうか。

さて、こういった予想、実はベースがあります。まずiPhoneアプリは利用者が集まるにつれ、興味を持った人がそのアプリケーションを開発して提供してゆきました。さらに遡れば、PCの発展の歴史も同じような感じではないかと。つまり最初に与えられた「場」(OSとかインターネットとか)に対して、数々の興味を持った人が集まって、フリーソフトなりを開発していったという感じ。それと似たような流れを電子書籍も辿ってゆくのではないでしょうか。すなわちプログラム言語がリアルの文字に置き換わった感じで、「本を出版する」というよりは「自力開発したアプリを公開する」という感じのノリで電子書籍が公開されるような気がするのですよね。広く発展してきて、出版業界が本格参入せざるを得なくなるととどうなるかわかりませんが、少なくとも普及するまではそんな感じのような気がするのです。

あと、「同人」の文化もあるかも。つまり読んで興味を持った人が、それを作るのに参加するという感じ。故に同人をしている人のうち、新しいものが好きな人が参入する可能性もありますね。しかし何も同人誌をそのまま売るというわけではなく(かえってそれは性表現や著作権の都合上難しいかなと。ジャンルにもよりますが)。その電子書籍配信に最適化されたものが生まれてくるのではないでしょうか。こう考えると、PCソフト文化と同人文化ってけっこう似てるのかも(まあ同人でもソフトジャンルってあるし)。すでにコミケでも一部のブログや個人ニュースサイトの人が評論系の同人誌を出していますが、案外そういった方達が電子書籍に参入するのは早いのではないかと思います。

ちなみに、ここで電子書籍は同人を食うのか、って疑問が出て来るでしょうが、一部が重なりはすれど、それはないと思います。まあその話は機会があったら。

ただ、最初のうちはなんだこれってものや、全く別の意味でおもしろい本とかが出て来るかもしれませんが、そういったカオスな状況もまた楽しいと思います。今までも数多く生み出されてきた作品やらソフトの影には、無数の闇的なものがあったと思うので。そういったカオスな状態から新しい文化は生まれるのではないかと。えらい人にはそれがわからんのですよ。

まあざっと書いて見ましたが、これはあくまでほとんどiPodに関してのデータがなく、市場も全く出来ていない時点での予想、というか妄想です。それこそ子供の時、学習雑誌に載っていた「未来の世界」みたいなものや、ゲームの新しいハードが出るときに、ゲーム雑誌でそれの可能性が描かれていたもの(PCエンジンのコア構想イラストとか)に近いかもしれません。でも、それでいいのです。こうやって新しいものが来た時に、未来を予想するのが楽しいのですから。故に今日のエントリーは自分の満足のためです(いつもはそうじゃないのかというと、それはそれ)。

数年後に読み返して「当たってる」、もしくは、「違うよ、そんなチンケなもんじゃなかったよ」、はたまた「あのときはそう考えられていたんだ……(遠い目)」と思い返すことにします。ちなみにこういう未来予想図を適当に書いたものでも、電子書籍で配信したら数人は読んでくれるかしら。ま、それはともかくとして、電子書籍自体は自分でもいけそうだったら、作ってみるかもしれません。ノウハウはないけどネタだけはそこそこあるので。

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