『ケータイ小説』には別の未来があったのではないか

「ケータイ小説」と言えばどのようなものを連想されるでしょうか。おそらくここを読んでいる方のうち、近年実際に目にしていない方は『恋空』のようなもの、すなわち主に女性向けの恋愛系作品的イメージを持っている方が多いと思われます。それを書籍化した本がベストセラーになったのが、今から丁度2年前くらいですね(余談ですが、最近『恋空』のタイトルが思い浮かばないとき「えっと、あの『忍空』に名前が似てるの……ああそうそう『恋空』だ」って思い出すことが多いです)。しかし、最近では「ケータイ小説」という言葉自体出版でも、ネット上でもあまり聴かなくなりました。まあもしかしたら携帯電話のコンテンツとしては流行っているのかもしれませんが、その外にまでは波及しなくなったかなあと。

そして、このようなニュースがありました。

ケータイ小説『赤い糸』など出版のゴマブックス倒産 | ファインドスター 広告ニュース

中堅出版社、ゴマブックスが倒産したという話。前述のように、2005〜2007年あたりには『恋空』を中心としたケータイ小説にブームが巻き起こり、それらがベストセラーになりもしました。しかし出版におけるそれらのブームの終了後売り上げがたたなくなった模様。出版不況に加え、それらの返本の多さが出版社を直撃した、とも考えられるでしょう。

■参考:asahi.com(朝日新聞社):本の販売2兆円割れ 170誌休刊・書籍少ないヒット作 - 社会

しかしこの出版不況の傾向は、もう5年前くらいから言われていたことで(下手すれば2000年あたりからかも)、ケータイ小説はその出版不況下における出版界の助け船的な存在であったと思われます。しかしこれが結果として、ケータイ小説という分野に不幸をもたらしてしまったのではないか、とも思えるのです。


最初に書いたように、ケータイ小説といえば現在だいたいの人の持つイメージは「恋愛系」とか「10〜20代くらいの女性が読むもの」という感じでしょう。たしかにケータイ小説の人気が出たのはその分野からです。そしてそれに乗った本が出てブームになってからも、殆どのジャンルはここからでした(ちなみにうわさレベルの話ですが、ブームの最中には女子高生がリアルで経験したことのように書いてくれと、男性の書き手にかなりの安値で依頼があった、ということも聞いたことがあります。実際にそういうのが出たのかは不明ですが)。しかし、この時に他のジャンルもケータイ小説の一部として育てておけば、今とは違った未来があったような気もするのです。

たしかにケータイ小説は「恋愛系」とか「10〜20代くらいの女性が読むもの」からブームがわき起こった分野ですが、もっと原義通りに考えれば、携帯電話で配信される文章ならば、どのようなものでもいいはずです。つまりラノベを配信してもよかったし、ホラーだろうが純文学だろうがよかったはずです。個人的には昔あったゲームブックのようなものが携帯電話で配信するものとして向いているのではないか、とも思えたのですけどね。書籍化には向かないけど(つか、こういうアプリを音声と画像交えて作ったらおもしろそうかも、とは今思った)。しかしそれをしなかったのか、しようとして起こせなかったのか、結局はケータイ小説=女性向きの恋愛系というイメージがついてしまいました。そしてブームが収束してしまった今、そのイメージがついてしまったために、携帯電話向けの小説として他のジャンルでは出しずらくなってしまったのではないか、とも思えるのです。これはもったいないことをしたと思います。何故なら携帯電話はいまや大人なら殆どの人が持つツールであり、且つ集金手段も確立しているので、ここが新たな出版社の市場となる可能性もあったのに、と思うからです。


2000年頃から出版社はネットの登場によって出版の落ち込むが来ることは予想されていたでしょう。故に出版社が共同で書籍の電子配信は計画されていました。しかしそれは順調とは言えません。

■参考:電子書籍端末売れず──ソニーと松下が事実上撤退 - ITmedia News

つまり出版社の意図としては、ネット配信を新たな収入手段としたいことはたしかなのだと思うのですよね。しかし、いろいろな都合(主に著作権的な問題)により、仕様が面倒になったり、配信媒体が少なくなったりで踏み切れていないというところ。最近やっとその話が出てきた感じですが、これも他のWebサービスに背中を押されて、という感じかなと。

有力出版社、2011年に共同雑誌サイト開設 部数落ち込みに対応 インターネット-最新ニュース:IT-PLUS
■参考:【MIAUの眼光紙背】出版社に衝撃を与えた「コルシカ」のどこが問題だったのか
■参考:Googleブックス

しかし、端末は既に普及しきっている携帯電話をうまく使えば、それを利益に繋げることも出来たのではないか、と思うのですよね。といってもそれは現在、一度出版された過去の作品を公開するのが中心となっている携帯コミック配信のようなものではなくて、携帯電話での配信をメインとしたもの。それこそ出版社が描いていたような、プロ作家が編集者の手を通して出し、それを配信するものとか。そこには刷りすぎで返本されるリスクもないという、出版社にとってかなり条件のいいところではないかと。しかしケータイで読むイメージがついてしまった今では、それは難しくなったと思われます。でもこの時、この携帯電話で配信される目を利用して偏らないイメージや市場を作っておけば、もしかしたら今、それなりの収入手段になったのではないか、とも思ってしまうのですよね。しかし当時あの恋愛系の流れに乗ってしまったために、結果としてその可能性を狭めてしまったのではないか、とも思えるのです。

勿論ケータイ小説はどちらかというとSSとかブログに近い、参加型の意味合いが濃かったのもあり、そこで出版社がリリースしたからといってもうまくいったとは限りませんが、今とは違った可能性みたいなものはあったのではないかと思えるのです。たとえば純文学やラノベの新人の登竜門として発掘の場にするとか。しかし結果として現在は、ケータイ小説を出版社の利益とするのはよほど限られた作品以外は不可能となったように思えます。


さて、近年AmazonのKindleが話題になってきているようです。

アマゾンの電子ブックリーダーKindle、日本を含む100か国以上で購入可能に

また、iPhoneのアプリでもKindleがあるみたいですね。さらに日本の出版社も前述のように配信をまた検討しているようです。出版不況の中にある日本の出版社は、これらのネット配信をうまく活用することが出来るのでしょうか。それとも別の手段で出版不況から抜け出すことが出来るのでしょうか。それとも……。