何故人は疲れきってもブラック企業を辞めないのか

近年、「ブラック企業」についての話題が見られるようになりました。ちなみに「ブラック企業」という言葉自体は前回の就職氷河期と呼ばれる2000年前後からあり、2chの就職板か、Yahoo!掲示板の就職系ジャンルあたりで使われていたと思います。で、2chでは「ブラック企業ランキング」なる表が10年以上更新されつつ存在します。ちなみに昔は今なくなっている商工ファンドや日榮などが常に上位だったような)。

2009年度ブラック企業ランキング - 就職ランキング - Yahoo!ブログ

※2015/7/30追記:最近見つけたのだとこういうあたり。
ブラック企業(2016卒用)ランキング | 就職偏差値ランキング委員会

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『ブラック会社に勤めてたが、俺はもう限界だった』

実はその表に、私が新卒時に勤めていた会社が入っていたりも。

この表がどこまで正しいかはわかりませんが、少なくともそこは私にとっては「ブラック企業」と呼べるものでした。それは正直「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」よりもダーク方面でその時のことを書くことも出来ますが、長くなるので割愛します。

ちなみに辞めようと思った一番の要因は、激務の連続で駅のホームに行ったときに、プラットホームと普段は思考が働いて立ち入ってはいけないとインプットされている線路の境目が、目では見えているのにそれを脳では判断できなくなってはっとした時かな。まあその後いろいろな運にも恵まれやめてとてもよかったと思えるようになりましたが。

ちなみに入社当時はまだネットの黎明期で、就職について語り合える場所がほとんどなく、「ブラック企業」という言葉もありませんでした。辞めるあたりでやっとそういう情報が、ネットで出始めてきて、「ああ、あと数年早くネットが普及していれば、この会社入ってなかっただろうなあ」なんてことを思ったりしました。


映画は見ていませんがスレ書き込みのものを見た『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』のラストにはちょっと拍子抜けした感じがした記憶があります

※2015/7/30注釈
『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』は、当時出始めていた、ネットの書き込みをまとめた本になるというパターンで出てきたもの。映画化もされた。ただいまの現状から思うと、これ自体が「企画」だったのかもしれないという疑念も……。

個人的にもしこの話に創作を交えるならば、最後はブラック会社が辞めるときにも発揮してくる、ブラックっぷりを前面に押し出し、法律まで交えた退職交渉をして、最後晴れて解放された、という展開にするかなあと。

「やめたら終わり」という意識が植え付けら得る

自分はそのブラック企業には結局1年半以上いましたが、何故そこまで辞められなかったのかというのを思うと、それなりに理由があるのですね。そして今、自分の会社が「ブラック企業らしい」ということがわかったのに、それでも辞められない人の心理と私のその時の状態に似ているのではないかと思ったのです。

離職率の高い会社は引き留めに必死になるので、辞めると言った時点で退職者に脅しやら、時には暴力を交えてかけて来るようなこともあります(ちなみにそういう事態になった時は、弁護士など法に詳しい人に相談することをおすすめします)。ただ、それは法的違反になるので、それ以前、すなわち就業時に心理操作的なことをしてくることがよるあるのです。


まず、私がいたときによく言われたのは、「ここを辞めても今の景気だったら雇ってくれるところはないよ」ということ。当時は就職氷河期だったのでそれは間違っていないのですが、結果としてそれは離職させない心理にするための操作でもあったのですよね。あと、「辞めたら同業他社へは移らないのがルールだ」とか「こんな早く辞めると業界のブラックリストに載る」と言っていた上司がいましたが、そんなものの存在は今まで聞いたことがありません。さらに、「この会社は業界の中ではましだ」とか「○○に比べていい」というような、会社の褒め言葉をやけに言っていました。まあもちろんその実態は、ブラック企業ランキング入りするところだったのですが。

さて、これは今見れば「そんなのに騙されるなよ」と思われるかもしれません。しかし、その言葉を信じる、とまではいかないでも、否定する自身はなかったのです。何故ならその当時、新卒で入ったので。つまり、会社というのはそこしか知らなかったのですよね。つまり、その今でこそブラックと言える会社の状態が一般的な会社であり、どこもそうだと。つまり、「判断基準の喪失をさせられた」のです。

それ故かなり過酷でもこれが当たり前と思ってしまい、前述の景気のこととか「この会社は業界の中ではましだ」という言葉もあわさって、身体が壊れてもなかなか辞める踏ん切りがつかなかったと。しかも当時はネットもなかったので、客観的情報がほとんどない中で辞めるのは、わりと勇気がいりました。まあそれでも辞める理由となったのは、同期で辞めてゆく人が続出したことから、その会社の判断が出来たということもありますが(このようにブラック企業では離職が離職を呼ぶので、なるべく辞めさせたくないのかなと)。

一般的状況を知らない知らない人に対して行われる理不尽

こういったブラック企業に入ってしまう人は、おそらく新卒者など会社勤め未経験の人のほうが多いと思うのです。何故なら一度社会経験をした人なら、会社や社会、同じ業界ならその業界や職務内容についてもよくわかっているので、その人の中にすでにある程度の基準があり、そこの労働条件が酷いかどうかわかってしまうからです。入るより前に察してしまう人も非常に多いでしょう。しかし新卒など未経験者の場合は、その基準値がなく、前述のように「これが当たり前で、ドロップアウトすれば道はない」と思わせるのではないかと。つまり、酷い言い方をすると「何も知らない人をこき使う」という感じですね。ちなみにこの情報がない人を巻き込み、何かのリスクを負わせるというのは、悪徳商法などでも使われている方法ではないかと思われます。

※2015/7/29追記
実際、その後「ブラックバイト」なんていう言葉も出てきましたしね。つまり就労系件が全くない、無知な人をコキ使うという感じ。コキ使うだけならまだしも、代替要因の確保や損害賠償までさせようとするケースもあると。
nikkan-spa.jp

ブラックバイトとは|ブラックバイトユニオン


ただ、ブラック企業とはいかなくても、新卒が何も知らないから、その会社の戦力となるように刷り込みを行うってのは、日本では昔からあったような気がするのですよね。今でも日本は新卒偏重と言われていますが、それらは仕事を覚えさせるというもののほか、何も知らない新卒なら「そういうもの」も植え付けやすいからではないか、と思うのは考えすぎでしょうか、それとも……。

たとえ扉の向こうが今に比べて天国だとしても、その扉を開けるまでは地獄かもしれないという意識が当然残るわけで。シュレディンガーの労働条件とでも言うか。


自分を大事にせよ

ま、そういったわけで、今の就職難とかブラック企業とかを見ていると、私の当時のことを思い出すのですね。ただ、映画のように留まり続けて辛抱するだけがいいことではないと思います。私はその会社に2年弱いて辞めた後いろいろありましたが、なんとか運とか手助けしてくれる人とかの存在もあり、希望の仕事を出来ているという感じです。まあうまくいっているかどうかはわかりませんが、とりあえず生きています。そんな経験上、自分の座右の銘は『人間万事塞翁が馬』だったりします。

自分の働く会社について様々な情報を集め、その情報を自分でしっかりと考えて判断し、そして方向を決めることは悪いことではないのではないでしょうか。とりあえず人間は働くために生きているのではなく、生きるために働くのですから、働いて身体や精神を追い詰められては本末転倒だと思うので。

■関連:
nakamorikzs.net

※元エントリーは2009/12/7。2015/7/30に一部加筆修正