空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

日本の求人っていうのは建て前の集大成なのかもしれないと思った話

久しぶりに確たる根拠もなく思いつき書きで(いつもか)。あと、現在かなり眠い中で書いていて夜のラブレター状態になっているかもしれないので、あとで部分的に書き直すかもしれません。

こんなのがありました。

【そんなヤツ】ネタ求人?を晒すスレ【いねーよ】 働くモノニュース : 人生VIP職人ブログwww

上のものは2chソースですが、たしかに見てみるとここまでではなくても募集要項にあてはまる対象者が限りなく少ない、もしくは待遇と全然あっていない求人というのはそれなりに目にすることがあります。まあ今じゃなくてもこういうのってそれなりにあるような気がしますが(もちろん売り手市場の時は相手にされないでスルーされるわけで)。

さて、ここで思うのは、この中に明らかに誰も採用するつもりのない、いわゆる「空求人」がどのくらい含まれているか、ということ。つまりそもそも求人をするつもりがないのに求人を出さざるを得ないことになって、結果形式だけ出しているというもの。で、そういった求人における手間を省くために、もともと高めの条件を出していると。ある意味無料で募集を出せるハローワークならではのものかもしれません。

なんか最近ネットでこの手の話題となると、よく以下の文章がコピペで登場します。

空求人でした orz: 書く爆弾貯蔵庫Part2

これが真実かどうかは私がハロワに聞いたわけではないのでわかりませんが、今の状況を考えるとたしかに強要とはいかないまでも、頼まれたらマイナスの可能性を考えて、空求人を出す企業があってもおかしくはないかなと。で、上のようなことはレアケースで、ほとんどは履歴書送付の時点で雇用するつもりがない場合はお祈り連絡(不採用のメールや手紙の文面が「貴殿の今後益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます」のことから、転じて不採用通知のこと)直結となるという感じかと。つまり結果として求人側、応募側の両方が無駄な行動を起こさないといけないと。

この「空求人」、いちいち手間をかけることになる企業にとってもそうですが、応募者にとっては履歴書代、写真代、郵送代、面接の交通費、そして何より時間を浪費するという負担を迫られることになります。現在収入がある人ならともかく、就職活動中の学生、そして失職で収入手段がない人にはかなりの死活問題となります。特に時間ですね。何もしなくても毎日のコストはかかるので(しかも給与支払いは働き始めから普通は1〜2ヶ月後)。

そして、似たようなことは昔から行われていました。1985年、男女雇用機会均等法が施行されました(以後何度か改正)。これにより求人において男性のみ、女性のみといった募集が一部の例外を除いて出来なくなりました。ちなみに「看護婦」→「看護師」と言い換えられるようになったのも、この法律が影響しています。そしてこの法律が施行された結果、例外(明らかに女性のみしかできないホステスなど)を除き募集に男女別をかけられなくなったのですが、その結果求人元が男性を想定して募集をしているところに女性がいっても、逆に女性として想定しているところに男性が行っても、応募や面接の手間と費用だけかかって、結果お祈り連絡となることになります。もちろん直接的に「女性だから」「男性だから」ということは言えませんが、別の理由をつけて(条件が折り合わない、能力が不足等々)結果として断ることになると。しかしそれ以前までは募集要項に男性か、女性かを明示できたので、このようなことはなかったと。もちろん男女雇用機会均等法で女性の雇用面が救済された点もあるかもしれませんが、反面このように女性が不利益を被る面が出てきてしまったというのは皮肉なところです。

ちなみに上のようなことは求人を出すことが原則無料なハローワークで起こるとして、有料の求人ではそのようなことは起きないか、というとそうでもなく、潰れる直前までその経営危機を外部に悟られないために新卒など求人募集を出していた企業もありますしね。そいや15年くらい前には山一證券の内定取り消しが話題になりましたね。余談ですが、上のようなことをふまえてある会社で退社する時になった際、同じく辞めた上司が信用出来る方法として転職エージェントを使っていて、自分にもその方法があると言ってきましたが、いくらなんでもそれなりにいたものの雇用上はバイトとなっていた人間にそれを利用するカベは高すぎたと当時から思いました(ちなみにその方、今は社長でおられるそうで)。


このような事例を見るに、求人というものはかなり多くの部分で「建て前」で構築されているのではないか、というのを思ってしまうのです。そこには雇用の意思はなくても、文字は雇用に意欲的なように見える。そして募集要項では採用基準を満たしていても、雇用したい人の「本音」はそことは別にあるという感じに。もちろん妙な方向で本音を出し過ぎ、その応募者に対して悪印象を与えるような言動はダメでしょうが(つか、圧迫面接とか不快にさせる求人行為ってのは、「本音」とは違うよね。まあそれがその求人する側にとっての本音なら、それはそれでイヤだし)、あまりにも「建て前」がすぎて、本当のその企業が欲しい人材が見えないという感じ。

■関連:現代において圧迫面接は会社にとって非常にリスキーではないかと思う話 - 空気を読まない中杜カズサ

しかし「建て前」を構築せざるを得ない理由は、先程のような法律や他者の視線など。ただ、法律もよい方面に機能している可能性もあるので、それのせいにはできないのですが、一部では理想と現実の歪みが生じているのは確かだと思います。


しかし、「建て前」で動いているのは何も求人する側だけではありません。前にこのようなエントリーがありました。

文系が内定を取りに行く方法※ただし新卒に限る

これを今見ると、なんだか本音を隠して建て前で構築した方が受かりやすいみたいな印象を受けてなんだかなあという気分にもなりますが、実際問題自分も昔に就職活動をしていたときは似たような方法で面接とかしていたのですよね。つまり内定を勝ち取るためには本気で話し合うよりも、戦略を立てた「建て前」的なもののほうになると。極論、とてつもなく芝居の上手い人が演技で面接を通り抜けてしまえる感じ。まあ、私の場合あまり真面目に就職活動をやっていなかったので悪例のほうに入るとは思いますし、現在ではは主流も変わってきているかもしれませんが、やはりこういう「建て前」的な方法が通りやすいところというのもそれなりに生き残っているのではないかと。


となると、募集する側は法律などの都合で「建て前」に徹し、応募する側は採用されるために「建て前」に徹する。ついでに前のリンクのハロワでの話が本当に良く行われているのならば、それをとりもつ公的機関(国)もデータを悪化させないために、「建て前」を推進しているということになります。こんな「建て前」が日本の求人市場なのかなと。海外の場合、どんな求人携帯となっているのかはわかりませんが、このように建て前で動いているのか、それとも本音がぶつかり合うのか、どっちなんでしょうね(まあその国の景気などにもよるでしょうが)。

しかしこんな建て前が支配しているとなると、この求人市場に対しての正確な数値(有効求人倍率や失業率)というものはあまり意味をなさないのでは、とも思えます。そもそも雇用形態や景気、何より市場の変化で求人市場の様態が20年前とは大幅に変わっている昨今、ハローワークだけの数値というのはかなり実際とはズレが生じているように思えるのですが。


ただ、当然そんな建て前だけではやっていけません。少なくとも雇用側にとってどんな人材を採用するかなんてのは死活問題でしょうし。故に、面接というものにおいては、面接官がその「建て前」の中から「本音」を探し出すということが重要になるのかなと。でも、面接が下手な雇用者はきっとそういうところが完全に運任せになってしまい、外れを引くのかなと(ちなみに前述のリンクの方法も、個人的には「外れを引かない方法」なのかなと思ったりしました。それが正しいのかどうかはわかりませんが)。

本当は応募者も企業側の「建て前」を暴いて本音を引き出すところでしょうが、それが出来るようになるのは転職市場などでイーブンになった時で、就職やハロワでの雇用だと、どうしても建て前でのやりとりになるのかなあと思ったりします。それでも「建て前」で判断した感じが強くなる新卒が日本の求人では重要となると。まあある意味「建て前」かどうか、新卒で雇用される側にはわからないから、そうなっているのかも(最近よく使われる「社畜」化させるためとか)と邪推したりしますが。


さて、これが改まり、本音で雇用や求人を語れる日は来るでしょうか。まあそれは法律の問題がなかったとしても、雇用する側と雇われる側がイーブンにならないと、雇用される側の「建て前」という仮面はなくなることはないのかなあと(ちなみにバブルの頃は人材不足が深刻で、かなりいい加減に面接をしていても受かったなんてことも聞きますけど、本当かな)。でも、そこは仕方ないとして面接官の本音を探る腕に任せるしかないとしても、せめて最初で書いたような応募のロスはどうにかしてなくせないか、とは思ったりします。