空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

商業としてのバレンタインデーはこの3年で大きく変わるかもしれないと思った話

テレビの前を通りかかったらCMをやっていたのですが、その時に見たのが「逆チョコ」なるもの。調べてみると、これみたいですね。

森永製菓、バレンタインデーに男性から女性へ「逆チョコ」3製品 - ライフ - 日経トレンディネット
女性の9割がバレンタインの「逆チョコ」欲しい 森永製菓の調査 - ライフ - 日経トレンディネット

まあ、いろいろツッコミをいれたいところはありますが、あえて一度飲み込みます。

だけど、なんで今年からいきなりこんなものを仕掛けたのか。その理由を考えていると、森永に限らず製菓会社は今、バレンタインデーという商機を逃しつつあるから焦っているのではないかと。それは最近の景気の悪さだけではなく、もう何年も前から予見されていたことのために。それについてちょっと書いてゆきましょう。



バレンタインデーは2月14日。これはご存じですね。さらに3月14日はホワイトデーです。日本の商業的なバレンタインデーは、この2つがセットになっている面が強いです。すなわちバレンタインデーに女性からチョコを送って、男性がホワイトデーに返すと。で、本来の恋愛イベントだけではなく、そこで「義理チョコ」という要素が入り込んできたわけですが、考えてみるとこの仕組み、非常に製菓会社にとってはうまく出来ていたのですね。というのは、本来恋愛対象のみに送るチョコを、その感情がいない人も拡大させ、さらにはお返しとして売り上げ要素をさらに増やしてしまったのですから。おそらくですが、本命チョコよりもこの義理チョコのほうが、売上比率としては高かったのではないでしょうか。

おまけにこの義理チョコというもの、ある意味日本特有の行事的側面を背負ってしまい(もしくはそのように仕向けられて)、辞めるにやめられなくなった面もあると思います。つまり女性が男性にあげないと、その人を嫌っているように見えて人間関係に支障をきたすようになるので、とりあえずあげておかないといけない、みたない空気が作られてしまったという感じ。そしてホワイトデーは、もらった人にお返しをしないとまずいなあという感じ。

ただ、アンケートを見てみると、義理チョコを面倒だと思っている人はけっこういるみたいなんですよね。

■バレンタイン アンケート結果 ※リンク切れ

これの「義理チョコについて」を見ると、半分くらいが「ないほうがよい」寄りで、1/3がどうでもよく、合った方がいい人は1/4以下です。にもかかわらず続いているのは、やめられない空気が作られてしまった感じがあると。つまり女性がやめるといえばケチと思われる、男性がいらないと言えば自惚れるなと言われそうで、且つ義理でももらいたい人がいれば、顰蹙を買うことになりますしね。このように他人の目を気にする心理が働いて、たとえめんどくさいと思っても批判できず、それより買う方が楽、ということで続いてきた面があるのではないかと思うのですよね。


しかし、今年と来年、それを回避する口実が出来てしまったのです。それが今年のバレンタインとホワイトデーの日付。
・2009/2/14……土曜日
・2009/3/14……土曜日
それだけではありません。来年、2010年のこのふたつの曜日も見てみましょう。
・2010/2/14……日曜日
・2010/3/14……日曜日

はい、このように今年、来年ともバレンタインデー、ホワイトデーとも土日で、社会人や学生の人の多くは人と会わなくても済んでしますのですよね。つまり、バレンタインを回避できてしまうということ。つまり、義理チョコは雰囲気的に「なかったこと」として2年間過ごせてしまうわけですよ。ましてや今年は支出を抑えたい景気でしょうし、あげる女性、そして返す男性もチョコより他のことに回したい人もけっこういるでしょうし。それが2年続いてしまったら義理チョコがないのに慣れてしまい、2年後には世間的にバレンタインの空気が相当薄くなっているという可能性があります。ま、「女性は3倍返しを狙っているから投資のために渡してくる」なんて例もあるかもしれませんが、バブル期でもあるまいし、このご時世そんな人もそうそういないでしょう。そもそも男性が返さなければ損失ですし。

ということで、今年と来年、この義理チョコが大量になくなる可能性がある上、それから先にはバレンタインの空気自体がなくなる可能性もあると。これはバレンタインデーを一つの大きな商機としている製菓会社にとっては大きな問題です。故に今年、それに代わるものとして、且つバレンタインというイベントをここ2年間で薄れさせないためのものとして、女性が得をする「逆チョコ」を出してきた……なんてことを考えてしまいます(まあ全然関係ない可能性も高いですが)。


ちなみにこの「逆チョコ」にもリスクがあると思うのですよね。男性が2月14日にチョコ買うのは、「※ただしイケメンに限る」を除いてそれどんな罰ゲーム、となる可能性はありますし(自意識過剰といわれればそれまでですが)。万が一成功したとしても、バレンタインデーはあくまで「女性のイベント」としての盛り上がりの側面もあると思うのですよ。なんというか、学生あたりだと誰かにあげることではなく、友達と選んだりすることでの楽しさみたいなのがあったりとか、自分たちように買うとか食べるとか(マンガだったら作ることで騒いだりするけど、そんなのが実際にあるかどうかは知らん)。その「女性のイベント」というものに男性を参入させてしまうことで、逆にそのイベントの価値をなくしてしまう可能性があるのではないかと。


つか、別にクリスマスにせよバレンタインデーにせよ、本当に恋愛感情を持っている人がどうしようが別にかわまんのですよ。ただそれの余波を行事として関係ない人にまで回されるとめんどいって感じなのですよね。まあそれでもクリスマスはパーティー的な要素もあり楽しめることもありますが、バレンタインはただめんどい。つか、こういうこと言うようになったら年とったってことかなあ……

ま、そんなこんなで、今年と来年はこのイベントのありかたを見直すいい機会になるのではないでしょうか。


……で、こういうことを書くと「義理ももらえない非モテだから」と言われるんだろうなあ。まあ実際そうだからしゃあないね。そもそも会社勤めじゃなくなったここ数年もらってないけど、そのほうが楽なあたり骨の髄まで非モテ。



◆余談の追記
「逆チョコ」といって男→女を推奨するよりも、今なら女→女の「友チョコ」を推奨した方が売れると思った。内々には昔からあるものだろうし。あと男だけで食うのを万が一アッー!な雰囲気ではなく、クリスマスにチキンを食うように自然なものとして流行らせれば、新規市場を開拓すると思った。