空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

自サイトにて買ってきた同人誌の紹介をしづらい理由

ネットの世界に、マンガの感想を書いてあるサイトはたくさんあります。しかし、同人誌を個別に紹介しているサイト(違法アップロードサイトではなく、書評という形で)は、あるにはありますがかなり少ない感じ。それも多くはイベントで買ったものにコメントをつけるものが多く、その本だけを商業マンガのように評論しているサイトは少数のように思えます。

たしかに商業マンガのシェアに比べて同人のシェアは低いですが、それでも少ないのではないかと。でも、この「何で同人誌を紹介するサイトは、ネット上のオタク規模に対して少ないのか(マンガほど多くないのか)」って提議、昔からことあるごとに出されているのですよね。それによるといろいろなことが言われていたような記憶があります。たとえば同人誌には商業マンガのようにアフィリエイトがないからとか。でも、個人的にはそういった利益の問題ではなく、たとえ気に入った、人に知らせたい同人誌があってもいろいろ思ってなかなか出来ないのですよね。

実は自分もこのブログのカテゴリに同人が入っているものの、実際に本を紹介したものはごく少数です(まあ最近イベント全然行ってなかったってのもありますが)。さらに現在『ゲームミュージックなブログ・SIDE B』で同人音楽を紹介しようと思ってはいるのですが、どうもそこでもそのままお気に入りを紹介するにはちょっと抵抗があるのですよ。その思考から、同人誌を紹介するサイトがあまり存在しない理由をちょっと書いてゆこうと思います。

作者が紹介されたいと思っているとは限らない。

商業マンガの場合、原則売ることを目的として出されたものですし、売れれば売れるだけ作者が喜ぶというのは一般的な通念のような感じです(例外はあるでしょうが)。しかし、同人誌の場合、あくまで「趣味」で活動している人が多く、そういった人の中にはあまり広められてもなあ……と思う人もいないとは限らないのですよね。特に版権ものの成年向けなんてのは、それが広がることで版権元から何か言われたり、最悪訴えられる危険性もありますし。なので、それをふまえて紹介していいのかなあという心理が働いてしまうと。

紹介しても入手出来ない場合が多い

商業マンガはAmazonなどの売り切れなどはあれ、原則紹介されたら購入することはわりと容易なことが多いです(過去のマンガや限定ものは例外ですが)。ただ、同人誌の場合それを紹介したとしても、それを見た人が必ず購入できるとは限らないです。また売られたり、とらのあなにあったりサークルが通販をしてくれることもありますが、イベント限定だってことも多々ありますし。それだと本を紹介して読んだ人が興味を持っても、それを入手できないという状況が生まれてしまいます。そしてその場合、作者に結果として迷惑をかけてしまう場合も予想されてしまうのですよね。それは困ったことに、売り切れた本を作者に「出来るならお願いします」と言うならまだしも、半ば強要するように「再版しろ」と迫る困った人がいるみたいなのですよ。それでサークルさんの掲示板を荒らしたりとか。ちなみにあるサークルの本を買えずに、スタッフに対して「本が売り切れるのが早すぎるので即売会準備会の方から指導して欲しい」という人もいるそうで(これは最近ではなく、10年間前にも似たようなのはいました。んで「お客様化」が問題になったりと)。もちろん目立つだけで、全体のうちそこまでするのはごく少数だと思いますが、それでもそういう人を生み出す可能性を考慮してしまうのです。

■参考:何故同人誌即売会の大手サークルには行列が出来るのか、そして何故必ずしも書店卸をするわけではないのか

交流が出来てしまうと、その手の評論をしづらい

同人は狭い世界なので、ちょっと同人で活動していると、知り合いができてしまうという場合はよく存在します。故に同人評論系のサイトを書いていたら、その紹介した本の作者と知り合いになることもかなりあり得ます。そうするとなんとなく書きづらくなるのではないかと。それは厳しい批評とかではなくても、なんか当の本人が見ているのに書くのって恥ずかしい感じがするじゃないですか。

幅が広すぎ

コミケのジャンルというのは何も男性向け二次創作だけではありません。その他いろいろなものがあります。しかしこれらを全部フォローするのは不可能です。いや、男性向けの二次創作、その中の特定のジャンルだけでもかなり難しいのでは。それは商業マンガと同じように読書量や費用の問題に加え、買い集める必要性まで出てきますし。それこそ故岩田氏(イワエモン)クラスじゃないと無理かなと。

需要が商業マンガに比べてあまりない

これは最初に語った通り。いくら同人が広がりを見せていると言っても、まだまだ狭い分野です。1000部売れれば中堅〜大手って世界ですし。となると、やはりその需要も限られるわけで。

文字にするのが難しい(同人音楽の場合)

おまけとして。これは別に同人音楽に限ったことではありませんが、音楽のよさを文字で伝えるのって難しいのですよね。こと3年以上ゲームミュジックブログをしていますが、それでももどかしさを感じること、かなり考え込むことはよくあります。何か強い特徴があるもの、例えば歌詞が特徴的だったり笑えるものだったりすれば、それをピックアップして書けばいいのですが、「大きな特徴はないけどいい感じ」な音楽においては、それを文字においてどう表現してよいか非常に悩むのですよね。つまり「音」のすばらしさを「文字」で伝える難しさが、紹介を阻害しているのではないかと。


こんな感じで、どうしても買い手の方からは自分のブログなりでは採りあげづらいのですよね。ですのでせいぜい感想をその本人のサイト掲示板に書き込むとか(ああ、でもこの掲示板に書き込むってのも、売り切れた人に配慮して遠慮していたなんてことがあったなあ)メールするとか。しかしおそらく同人作家さんの中には、ブログなどで紹介してもっと自分の作品を広めて欲しいと思う人もいるのではないかと思うのですけどね。もちろんその逆も。その判断が難しいところです。


自分はとりあえず同人音楽CDとかをこれから『ゲームミュージックなブログ・SIDE B』で紹介しようかなと思うのですが、最初のうちは「オリジナルジャンル」「入手できるもの」を基準にやっていこうかなと考えてます。

ちなみにいろんなサイトさんとかに紹介してほしい人とか感想を言って欲し人は、自分からアピールしてくれるとけっこうみんな助かったりするのではと思います。

■関連:同人作家さんへ感想を送ることの可否についてちょっと考えてみた