空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

2ちゃんねるの海外企業譲渡のメリットは何か。そして何が変わるのか

新年早々、このようなニュースが。

2ちゃんねる、“言論の自由なき日本”を見捨てた? (1/2ページ) - MSN産経ニュース
ひろゆき日記@オープンSNS。

2ちゃんねるの管理人ひろゆき氏が、海外の企業に2ちゃんねるを譲渡したというニュース。

実は「何故ひろゆき氏は2ちゃんねるを譲渡したのか」というエントリーを書こうと思ったのですが、どうやら調べたところ、ペーパーカンパニーっぽい話が。

2ちゃんねるがひろゆきから謎の会社「PACKET MONSTER INC.」に譲渡完了、その正体を探る - GIGAZINE
「2ch が海外企業に譲渡」を詳しく調べてみた。 − iemoto BLOG

これなら納得できるかなと。

ちなみにこの海外への譲渡というのは、だいぶ前からひろゆき氏の頭の中にあったような気がします。そう思った理由がこの本。

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書)
2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書)

上の本はひろゆき氏が出した本で、主には対談などをまとめた形になっていまして、小飼弾氏との対談もあります。

さて、この本の「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか」ですが、その回答はまえがきに書いてあります(Amazonのなか見!検索で見られます)。

ここでは2ちゃんねるが潰れる要素として「金銭的な問題」「社会的な問題」「法的な問題」の3つが挙げられていますが、金銭的問題は広告でまかなわれているので利用者がいる限りはクリア、社会的な問題も実はリスクにならず、2ちゃんが問題だという発言に強制力を持たなければ効果がないとされています。そして「法的な問題」においても、アメリカにサーバがあるアメリカのサービスということで日本の法律が通らなくなると書かれています。

それでも管理人であるひろゆき氏には訴訟が起こされています。それについてもいろいろ回避していたりするのですが、やはり煩わしさはあるでしょうし、完全に法的リスクをなくしているとは言えません。ある日突然、逮捕される、もしくは強制執行をされる可能性もないとは言えないでしょう。しかし、今回の件で最終責任者としての権利をその会社に譲渡してしまったことになるので、書き込みに対してひろゆき氏を訴訟の対象とすることは出来なくなります。つまり、今までのアメリカにサーバがあるアメリカのサービスであり、最終責任者はひろゆき氏というものからシンガポールにサーバがあるシンガポールのサービスであり、最終責任者はPACKET MONSTER INC.となったということではないかと。

さらに、前述の本にはこのようにも書かれています。

仮に僕が逮捕されてしまい、2ちゃんねるが閉鎖されてしまったとしましょう。しかし、2ちゃんねるのような場所の需要は必ずあるので、違う形で新たな2ちゃんねるが作られてしまいます。しかし、その形を変えた2ちゃんねるをアメリカ人が作ってしまうと、本当に日本の法律が適用できない場所になってしまう。つまりは、日本人にとって犯罪予告し放題の掲示板の完成です。
アメリカ人が2ちゃんねるの管理をしているのであれば、まだなんとなかなるかもしれないですが、台湾や北朝鮮で2ちゃんねるのサーバをコントロールされてしまったら、どうしようもない状態が起こるのです。
日本で違法とされていることが、何でも出来る掲示板ができる。そういった場所が作られるのを許すか、協力しろと言われればする現状を取るか。どちらが、より良い選択なのかは、頭のいい人であれば、わかることでしょう。

この本が出版されたのが2007年の中頃ですから、当時から動いていたという可能性はありますよね。

以上のことをふまえると、私の勝手な推測になりますが、今回の譲渡によるひろゆき氏のメリットは前述の責任回避が主要因であると同時に、その統制がきかなくなる一歩目を作ったのではないかと。前者が目的だったとして、後者は意図せずついてきてしまったのか、それとも威嚇効果として狙っていたのかはわかりませんが。

上のはあくまで推測です。このようなことは全くなく、実はひろゆき氏の税金対策だったとか、海外移住計画の一歩目という可能性もあるので念のため書いておきます。


では、これから2ちゃんねるはどう変わるのか。普通に利用するにあたって今までと大きく変わるかというと、そんなたいした変化はないような気がします。まだ詳細の発表がないとわかりませんが、削除手続きも変わりなく行われるような気がしますし。上のをそのまま考えるとそれこそ統制が効かなくなる掲示板が生まれそうにも思えますが、そんな荒れ放題になった掲示板が、今までと同じだけの人が利用するかというと、また別問題でしょうしね。


しかし今日の文章を書いていて、8年前くらいなら「2ちゃんねる研究」さんとか「The Battle Watcher ANNEX」さんなどがすぐに書いてくれただろうに、そういう2ちゃんねる分析サイトってなくなったなあと思ったりしました。

あと、最初にこのニュースを聞いた時に、ひろゆき氏が2ちゃんねるから完全に引くと言われても、納得する理由はあったのですよね。それは2ちゃんねるというよりスレッドフロー型の掲示板という形式が、急激な衰退はないにしても、2000年あたりのような急激な発展の可能性もすでにないのではと思ったため。言い換えればそれは「安定」なのですが、ひろゆき氏がそれをどう思ったか次第で譲渡して別のところで活動する可能性もあったかなあと思ったので。まあそれについてはまとめ直して、また別の機会に書きます。