この世にいない人の手紙に振り回される爽快感〜『アフター0 大いなる眠り子VI 別れの扉』

※本日は『アフター0』の『大いなる眠り子VI 別れの扉』のネタバレを含みます

このブログをリニューアルしてから目的の一つとしていることに、自分の読んできた中でもベスト10に入るマンガ『アフター0』を多くの人に知ってもらいたいというのがあります(タグにも昔から「岡崎二郎」ってのがあるし)。で、久しぶりにインパクトがあって気に入っている話をもってこようと思います。そのタイトルは『大いなる眠り子VI 別れの扉』(『アフター0』新装版3巻収録)。

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アフター0―著者再編集版 (3) (ビッグコミックスオーサーズ・セレクション) : 岡崎 二郎

「大いなる眠り子」シリーズは、自分の息子に転生してしまった父親が活躍する話ですが、今回はガイド役なのでこのへんははしょります。

あらすじは、とある夫婦(聡子と隆司)が結婚する際に、祖父が家を建ててくれました。そしてその家には鍵がかかっている戸棚の扉が東と西に2つありました。そして祖父はその夫婦が結婚する際に「もし君たちが別れたいとか相手のことが信頼できないと思ったら、この鍵を使って東の扉を開きなさい。君たちが一人一人別々に生きてゆくための金と助言が入っている」と言い、鍵を残しました。その時は夫婦とも「そんなものは一生使うことはない」と思ったそうです。

しかし、祖父が亡くなった後、妻の方は典型的なお爺ちゃん子のわがまま育ちだったのもあり、だんだんと夫に不満を持ってゆき、妊娠中にもかかわらず離婚を考えだします。そしてある時、鍵がなくなり、それをきっかけに今までになかった大げんかが始まります。実は別れた時のための鍵があったために、「いつでも別れられる」という精神的セーブをかけていたので、そこまでのケンカはなかったのですが(これが祖父の第一の目的)、鍵がなくなったことで鬱積が吹き出してしまったのです。

いろいろあって鍵が見つかりますが、お互いの仲は修復できません。で、離婚するということになり、鍵を開けました。そこに入っていたのは金の延べ棒と人生論的な本、そして何かが同封された手紙。

そして、その手紙を読んだ夫婦は、離婚を思いとどまって、子供が1歳になるまで離婚は保留ということになりました(そして「赤ちゃんの顔見てたら、もう別れようと思わないんじゃない?」とあきおの妻が述べています)。

さて、この手紙と一緒に何があり、何が書いてあったでしょうか。

手紙の上にあったものは、西側の扉の鍵。

手紙の表には「このカギを君たちの子供に渡してもらいたい」と書いていました。添えてあった内容は……

『隆司と聡子の子供たちへ 君たちの両親が 君たちのことを少しも考えない つまらない ばからしい どうしようもない 自分勝手な おろか者と思ったら このカギを使い 西の戸棚を開きなさい。 君たちが一人で生きていく為の 金と助言がある。』

これは本当は誰に宛てられたものかは、読む方の推測にお任せです。

このような、すでにこの世にいない人が残した手紙に生きているものが振り回されるという展開は、いろいろな作品で非常におもしろく書かれています。たとえば宮本福助さんの『この度はご愁傷様です』も、騒動の本人はすでに死んでいて、回想でしか出てこないのですが、この作品の中心人物になっていてそれが面白さを出していますね。

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この度は御愁傷様です (モーニング KC) : 宮本 福助

ちなみにこちらは、息子達の人生を楽しくさせるために振り回しています。本人たちは迷惑がっていますが、結果としては多くの面でプラスの影響を与えているところがポイント。

どっかの遺産相続サスペンスみたいにマイナス面で振りまわされたらたまったものではありませんが、こういうように楽しく振り回されると読み手としてはその元凶に好感を抱いてしまいます。つか、自分が死ぬ時も最後はハッピーエンドになるという確証があるなら、こういうことをしたいと思う気持ちはありますよね。
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アフター0 文庫版 コミック 全7巻完結セット (小学館文庫) : 岡崎 二郎

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